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『彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象はこちら!

『彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール』
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 かの超超超超超名作『虚構英雄ジンガイア』を生み出した同人ブランド『ばかすか』が送る、新作短編フリーゲーム!!
 私、本作が発表されるさらに前段階────ライターのまきな氏がチラっとTwitterのフリート機能で『短編フリゲ出します』と告知した日から、プレイ出来ることをずっと心待ちにしておりました。
 というのも、上述した『虚構英雄ジンガイア』があまりにも私に刺さる作品であり、批評空間では100点を付けたほどに感銘を受けたからです。

 現在制作中である『滅亡するクロックパルス』の方も楽しみではありますが、一先ずは本作をやっていきましょう!!

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 < ヒロインに、ありがとう――― >

 主人公は幼馴染・後輩・先輩と日常を過ごしていた。

 いつもと変わらない日常。
 ……本当に?

 現実のあなたは本当に立派な主人公なの?
 引用元

所感


 最高でした……! 面白かったです!!
 シナリオは当然のことながら、演出も相まって、始終目を離せない作品となっておりました。
 個人的には、『甘えむっ』に並んで、ある程度の数をこなしたエロゲーマー・ノベルゲーマーにプレイして欲しい作品です。
 人によっては私以上に刺さる内容でしょうし、そうでない人でも1エロゲーマー・ノベルゲーマーとして、『自覚』を促される良い機会たりえると思います。
 フリーゲームで短編ですので、未プレイの方はぜひお手に取ってみてください。以下リンク先からDL可能です。
 sowchild.booth.pm

~以下ネタバレ有~











総評


●シナリオについて
 めちゃくちゃ面白かったです!!
 終盤手前までは大分ホラーチックで、何回も驚かされました……。夜にやらなくて良かった……。
 しかし終盤は違う意味で鳥肌の連続でした。『自覚を促す物語』だったというかなんというか……。私は引きこもりでもなければ、対人関係が上手くいかなくて悩んでいるワケでも、ノベルゲームを現実からの逃げ場(或いは代用)にしているワケでもありませんでしたが、ヒロイン(というよりも作品まるごと)への感謝の気持ちは強いです。そういうモノを、今一度思い起こさせてくれる作品だったのではないかと考えております。
 "引きこもり"・"対人関係で苦悩"・"ノベルゲが現実からの逃げ場(或いは代用)"の中で一つでも当てはまるプレイヤーには、尚の事刺さる作品なのではないか、と。

 さて、より詳細なお話。
 1周目から主人公のいた世界がゲームの世界(或いは仮想世界)であることには察しがついたため、「フリーゲームのテンプレート(何の特徴も無い状態)的な物語なのか?」とか「少年A(分かる人にだけ伝われ)のいた世界よろしく、人の集合的無意識ならぬ『フリーゲーム集合的無意識』みたいな世界で、フリーゲーム作品全体を取り巻く物語になるのか?」とか考察しておりました。
 しかし、1周目が終わってタイトルに戻った途端に、その全てが吹き飛びました。"これはそういう物語ではない"と、察知しました。
 てか『つづきから』押したらノイズと共にヒロインがセーブデータ消しに来る演出、アレ卑怯では?? 最初だけセーブ出来るようにしてあるの絶対に確信犯的トラップですよね?? 最高です。

 とまぁそんな感じで、周回するごとに分岐が進み、『具体化』が進むのを感じられたワケですが……。
 真相は、まさに『具体化』による『要素の取捨選択』と『最適化』。あの世界こそが、"確実に幸福な未来へ至るための母体(ヒロイン)"を生み出すためのプログラム。まんまと私たちプレイヤーは、"意図的"に計画の片棒を担がされていたワケです。メタ表現として、ついに私たちプレイヤーが"姿かたちを有して"物語中に登場するなどとは想像もしておりませんでした。

 そして物語の最後では、主人公と少女はハッピーエンドを迎えるワケですが……。一方で、観測者(=私たちプレイヤー)もまた、『自身がヒロインを救っていたのではなく、自身がヒロインたちに救われていたこと』を"自覚"し、本作の少年と少女を見届けることで、自身もまた現実で頑張ろうと前に進みます。"そういう描写がされるんです"。
 いやホントまさか、観測者(=私たちプレイヤー)までもが救われる様子を描写する形でハッピーエンドを迎えるなんて、思いもしないじゃないですか。おそらくは泣きゲーの部類ではない本作ですが、私は泣きました。無意識に涙が溢れました。

 しかしそれで終わりではありませんでした。終いにはジンガイア同様に、エンディングのスタッフロール内でキャラクターのその後が記載され、そしてエンディング後にはタイトル画面が"ゲームを終了することしかできない仕様"に。ここまで忠実にメタを貫くのかと。ただでさえ畳みかけるようだったのに、"ゲームを終了するまで"最高とか……。

 短編のハズなのに、まるで長編名作を終えた後かのような余韻に包まれました。
 まきなさん、このような作品を生み出していただき、本当にありがとうございました。

 ……ちなみにこれって、なんとなくジンガイアで最川省吾がプレイしていたアシュリー製のゲームに繋がるような気がするんですけど、気のせいですかね……?

●キャラクターについて
 『少年』について。確実に幸福な未来へ至るために作られた主人公であり、『決まりきった幸福』を受け入れなかった存在。『世界階層』こそ異なるものの、観測者とは同じ立場なんですよね。彼の言動こそが、観測者(=プレイヤー)にとってはキーでした。彼は「"ヒロイン"に教えられたし救われた」的なことを言っていましたが、本作では観測者はあなたにも救われたんですよ。

 『少女』について。確実に幸福な未来へ至るために作られたヒロインであり、ヒロインにはなれなかった存在。彼女がヒロインとなるのはきっとここからなんですよね。その少年となら、きっと大丈夫です。まぁ、スタッフロール見た感じでは一年目で早速一回破局してて笑いましたけど。

 『観測者(=プレイヤー)』について。私たちプレイヤー(の代表者)。私はあまり共通点がありませんでしたが、ノベルゲーマーやエロゲーマーの友人の話を聞いている限りではこういうタイプの『観測者』は多いのだろうなと。そういう方々にこそ、本作を手に取って欲しいですね。

●テーマ・メッセージについて
 ■「不確定な未来に向かって、"足掻く"ことにこそ意味がある」
  幸福か不幸かもわからない未来に向かって"足掻く"からこそ、「人生はこんなにも苦しいのに、懸命に生きてみたいと思える」とは少年談。それをヒロインから学んだのだと。だからこそ、確定した幸福を受け入れなかったんですよね。ニュアンスは異なるのでしょうが、ジンガイアでも込められていたメッセージに通じる部分があると考えております。

 ■「プレイヤーこそが、物語────ヒロインに救われていた」
  ヒロインを救っていたのは、主人公であってプレイヤーではない。ヒロインに好意を寄せられていたのは、主人公であってプレイヤーではない。まずはそこから"自覚"し、それでもノベルゲームをプレイし続ける理由を突き詰めた先にあるのが、この答えなのでしょう。
  どんな形であれ私たちプレイヤーは、作品に、物語に、ヒロインに、救われていたんです。それを"自覚"し、作品に、物語に、ヒロインに、感謝しなければならない。そして、苦しい現実に向かって、前に進まなければならないんです。足掻きましょう。

 ■「もしも奇跡があるのなら。それは懸命に奇跡を追いかけた者の前に現れる」
  宇宙船墜落時の少年の発言。本作では副次的なメッセージなのかもしれませんが、わかりやすくて心に響きました。

ここ好きポイント


●撮影は出来ませんでしたが、少年と少女を見届けて、観測者が笑みを浮かべ、部屋の外に向かうシーンがとても好きです。

●エンディング後のタイトル画面。仕様・デザイン共に完璧かと。明日からまた、現実と向き合って頑張ります。
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おわりに


 『彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール』感想、いかかだったでしょうか。

 期待以上のクオリティで、私は大変満足出来ました。まぁ、短編ながらも考えることが盛り沢山で、正直本ブログでも全ての書きたいことを書けたワケではありませんが……。
 一先ずは、本作をゴールデンウィーク最終日にプレイ出来て良かった……。また明日からも、頑張ります。

 次にプレイする作品は、『魔女魔少魔法魔』を予定しております。

 それでは✋