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『Sessions!! ―――――真実嫌いの探偵は、』感想

目次

はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象はこちら!

『Sessions!! ―――――真実嫌いの探偵は、』
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 以前ブログにも感想を記した『強盗、娼婦のヒモになる↑↓』という作品。こちらを制作した同人サークル『Loser/s』さんの実質二作目ですね。
 世界観も『強盗、娼婦のヒモになる』と繋がっているようで、『強盗、娼婦のヒモになる』キャラも出てくるとかなんとか。
 前作キャラが絡んでくる展開は好きなので、楽しみですね。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 探偵さんが小娘共といちゃついたりするお話。

 引用元

所感


 面白かったです。
 一貫して『主人公の物語』としての体裁を感じました。こういう作品好きですね。
 登場するキャラたちも魅力的でした。また世界観が同じであることから、前作の『強盗、娼婦のヒモになる』をプレイしているとテンションが上がるようなキャラの登場まであったので、その点でも上手くキャラを活かしていて良かったなと思います。

 前作の『強盗、娼婦のヒモになる』からさらに拡がった設定からしても、昔週刊少年ジャンプで連載されていた『めだかボックス』が好きだった人ならハマれる作品なのかなとか思ったりしています。

 しかしまぁ、言ってしまえば未完作品なんですよねこれ……。
 オススメこそしますが、やはり興味を惹くタイミングで終わってしまうので、今後プレイされる方はその点にお気を付けください。

~以下ネタバレ有~
~若干『強盗、娼婦のヒモになる』のネタバレも含みます~











総評


●シナリオについて
 中途半端な立ち位置で悩み続け、苦しみ続ける主人公の物語。ということで、<所感>でも述べましたが、一貫して『主人公の物語』と言える作品だったかと。
 展開的にも、主人公の過去話や主人公の本質を表現するためのパートなど、主人公を掘り下げるためのイベントが多く、そのためどちらかと言えば展開よりもキャラの方を掘り下げることになる作品だなぁ~とか思いながらプレイしておりました。
 ただかといって、"物語として興味深かった"だけで"展開的につまらなかった"かと問われればそうではなく。キャラ間で交わされる会話劇はとてもコミカルで面白かったですし、シリアスな会話シーンもその雰囲気がしっかりとこちらにも伝わってくる程に上手く描写されていました。
 また、終盤の展開は怒涛で、鳥肌モノでしたね。予想だにしていなかった事態と懸念していた事態が同時に発生するラストシーン。中途半端な立ち位置からどちらへ行くのか決断を迫られていた主人公が、ついぞ追いつめられて発狂する場面。近年見た中では最高クラスの『引き』だと思います。ワクワクが止まりませんでした。……まぁ、「ここからどうなるんだ!?」とウキウキしながら続編を調べたら、本作が未完作品であること、つまり続編が未だに世に出ていない事実を知ることになり、愕然としたワケなのですが……(そもそも本作だけでは完結しないことすら初知りだった)。なお、本作は共通パートで、あと3つルートが出るとかなんとか。早く読みたい……。
 続編、大変お待ちしております。クラウドファンディングには出資しますので。

 さて、少しばかり設定や特定の登場キャラについても言及しましょうかね。
 本作をプレイしてまず私が「おっ!」と反応したのは、『強盗、娼婦のヒモになる』から『異常者』という設定が引き継がれていた点ですね。まぁ、世界観が同じなので当然と言えば当然なのですが。ただ、本作ではその『異常者』設定が若干ファンタジーの領域にまで進化していて、驚きました。あ、そういう?的なね。もちろん残念とかではなく、むしろ好きってニュアンスですよ。これ、『めだかボックス』とか好きだった人は好きなんじゃないですかね? ちなみに私も『めだかボックス』は好きでした。
 続いて特定の登場キャラについて。というのも、こちらもやはり世界観が一緒ということもあり、『強盗、娼婦のヒモになる』の主要キャラが数人登場したのがとても嬉しかったという話です。しかも、前作主人公の椎名宗吾と前作ヒロインのトラ子こと佐藤八千代なワケですが、この二人がめちゃくちゃ強キャラとして出てくるんですよね。こういうの、シェアード・ワールド作品群が好きな人間としてはたまらんのですよ。続編の予告もよくよく見てみれば『咲耶』の名前があったりと、続編ではさらに見覚えのあるメンツが登場しそうな予感がしていますので、その点でも続編が楽しみですね。いやぁ、こういうのが好きだからこそ、シェアード・ワールド作品群にハマりやすいんですよねぇ私。

●キャラクターについて
 『養老枯草』について。主人公。元天才学生探偵。死の吉兆。『梟』。元『探偵』の異常者。異常ランク:D(元B+)。
 中途半端な立ち位置で迷い続ける主人公です。基本的にウジウジしている主人公は嫌いなのですが、枯草は例外ですね。抱えているものが大きすぎるし、選択肢も悩むに値するモノです。というか、この選択肢で迷うからこその『養老枯草』というキャラクターとも言えるでしょう。
 『探偵』という異常な概念が宿っていたからこそ、自身の周囲で事件が尽きないという一種の奇跡。コ〇ンや金〇一少年の界隈で度々話題に挙がる理論を設定として可視化したのが本作と言えるでしょう。そしてその異常を有していたのが主人公であり、主人公は自らのせいで人が死んでいくことに耐えられなくなった。加えて、とある事件をきっかけに『真実を暴くことが正義』という探偵としての信念すら打ち砕かれるワケですから、その後主人公に残ったのは『自身のせいで死んでいく周囲の人々への罪悪感』と『自身が真相を暴くことで何も悪くないのに苦しむ人々への罪悪感』だけだったワケです。だからこそ彼は、名声を得られる奇跡だった『探偵』を、捨てられる機会に出会って捨てましたし、真実を暴くことを良しとしなくなった。しかし、幼い頃から探偵だった彼は、探偵としての生き方しか知らない。だからこそ停滞して、探偵業としても中途半端なことをしている、と……。
 掘り下げてみれば掘り下げてみるほどに、ウジウジしているのが仕方がないと思える背景ではあるワケです。ただ逆に、故にこそ彼が"決断する"という展開は非常に盛り上がるモノとも思っています。早く続編で彼の進む道を拝みたいですね。

 『篝火祈』について。枯草の幼馴染であり元助手。
 恐らくはトップクラスに枯草を気にかけている存在です。時々爆発してしまいますが、基本的には枯草が決断するのを見守ってくれている。ヒロイン力が高いです。というかそもそも、『探偵』を有し、周囲に死を撒き散らす存在だった枯草とその時代をずっと共に過ごしたという事実からして、覚悟の度合いが段違いです。彼女がどうして枯草の傍にい続けたのか、どうして助手になろうと思ったのか、そのあたりの掘り下げももう少し欲しいところですね。
 こんな良いヒロインなのに枯草が手を出せないのは、彼女が最も近しい存在であるが故なのかもしれませんね。

 『』について。枯草の愛人。枯草が『探偵』だった頃に解決した事件の"被害者"。
 枯草の罪悪感を人質に、自身を抱かせるヒロイン。それは当初こそ彼女の心の負担(何もかもしれもらっているのに自分は何も出来ない)を和らげるための方法だったのでしょうが、やがては自身を愛して欲しいという欲求を実現するための手法へ……って感じでしょうか。こういう、どこか壁のある身体だけの関係ってのは好きですね。
 ラストシーンで弟諸共行方を晦ました彼女ですが、彼女との関係に対して「本気」と即答出来なかった枯草は彼女を取り戻すことが出来るのか。

 『中原踊』について。女子校生。枯草が拾った助手。若干アホの娘。
 ひたすらに可愛いです。父性本能湧いちゃう。というか枯草には湧いてるし。とまぁ、そんなこんなで枯草との会話劇から本作のコミカル的要素を担ってくれたMVPでもあるワケですが、彼女の問題って何一つ解決していないんですよね。なぜ家出したのか、なぜ家族は家出した彼女を放置したままなのか。続編にて明かされるのを待っています。

 『鷹木奏』について。枯草のお隣さん。枯草を憎む者。
 ヒロインの一人。あまり掘り下げられることはありませんでしたが、おそらく正体は枯草が真実嫌いになるきっかけとなった事件で独り遺された娘なのだろうな、と考察しております。そして、枯草と彼女は互いにそれを把握している……。今後二人の関係性がどうなっていくのかは注目したい展開の一つですね。

 『養老朝顔』について。枯草の弟。ベガスで拾われた養子。『笛吹』の異常者。異常ランク:B。
 飄々としているが、それは自身の本心を隠したいからというキャラ造形が好きです。兄想いの弟ですし、その点も好きですね。今後も登場してくれることを望みますが、なんか次回予告で「なぜ養老朝顔は自ら命を絶ったのか」という不穏な文面が見えたんですよねぇ……。軽くショックを受けています。

 『獅童宗谷』について。別れさせ屋。「面白き世を面白く」もモットーに生きる者。
 前作にも登場したキャラですが、あくまでも脇役でしたね。見せ場もありませんでした。続編ではガッツリ絡んできてくれることを祈ります。それぐらいのポテンシャルはあると睨んでいますので。

 『ちんどん屋』について。レストラン「便り無し」の経営者。異常の専門家。枯草曰く、人ではない存在。異常ランク:ランク外。
 謎多きキャラです。一目見て好きになりましたね。エンディング後のシーン的にストーリーテラーの役割も担っていると考えられますが。人ではない存在・異常の専門家・神が死ぬのを見た……。はたして彼の正体はなんなのでしょう……。……続編で明かされるんでしょうかね……?

 『椎名宗吾』について。前作主人公。佐藤八千代の秘書。嘘を見抜く者。枯草曰く、異常ランクは高そう。
 登場した際には大興奮しましたね。しかも強キャラとして描かれていてとても嬉しかったです。『強盗、娼婦のヒモになる』の時期よりもさらに磨かれたのであろう心理学スキル。続編でも頼りになる重要キャラという立ち位置で登場してくれることを期待しています。
 ……そういえば、椎名宗吾って本作主人公の養老枯草とは腹違いの兄弟ってことになるんですよね。枯草の椎名宗吾に対する嫌悪感の正体は、そこにもあるのかもしれません(無意識に感じ取っているとか)。なお、椎名宗吾は枯草に拘るあたり、その事実を知っているのでしょうね。

 『佐藤八千代』について。前作ヒロイン。弁護士。通称トラ子。
 相変わらずのイチャつき具合。しかしそれだけではなく、椎名宗吾との息もぴったりで、椎名宗吾のワンマンというよりは、"二人で"一つの脅威と化しているような印象を受けました。何気ない『どうでもいいやり取り』の効果がめちゃくちゃ絶大なんですよね。アレ、頭の良いキャラ相手であればあるほどに効果を発揮する手法だと思います。

 『須藤』について。結婚詐欺師。
 背景的には同情したくなりますね。ここでそれでも眼を瞑って須藤を捕らえるのが常人で、それが出来ないのが養老枯草なのだなぁ、と。

 『アナスタシア』について。須藤の義理の娘。
 須藤が捕まる際にはいなくなっていたとのことですが、どこに行ったのでしょう。間違いなく続編では絡んでくると思いますが。結婚詐欺被害者の5人が亡くなった件と関わっていそうですよねぇ。『探偵』の効果に見せかけた、アナスタシアの後天的異常による事件とかだったらまた面白いなとか思っています。

●テーマ・メッセージについて
真実は必ずしも正義ではない
 『探偵』だった主人公がぶち当たった壁です。作中の事件である、『娘に暴力を振るうDV父を、母と息子が結託して殺した事件』を例として挙げるのが最も分かりやすいでしょう。悪だったのは、間違いなく父親です。殺人もたしかに悪性行為ではありますが、彼らにはその方法しか状況を打開する策が無かった。警察も自殺の線で事を進めていたあたり、主人公が真実を暴かなければ、"何事もなく"父親以外の家族の未来は明るく開けたハズだったワケです。つまり、この事件において、真実を暴くことで幸せになる人間は誰もおらず、真実を隠蔽することで幸せになる人間だらけだったということです。不幸を撒き散らす行為が、はたして正義なのだろうかと。……何とも難しいテーマだと思います。
 少し話はズレますが、作中で祈は、「悪いだけの奴なんかそうはいない」と言っています。何らかの理由があって、弱い人間が罪を犯すのだと。
 社会を安全に運営するためには、個よりも集団に重きを置く必要があるでしょうから、そのような犯罪者一人一人の背景まで考慮して『善』だの『悪』だのを語ることはおそらくナンセンスでしょう。しかし、私たちはどこか、『行為』と『罪状』にのみ目を向けて、彼らが断罪されることこそが必ずしも『当然の正義』であると思ってしまっている節はないでしょうか?
 犯罪者の『行為』と『罪状』を『悪』と考えることは間違ってはいないでしょう。それが"正常"です。その点では、考え方を変えるべきとも思いません。しかし、視野は広げた方が良いのでしょうね。犯罪者の背景にまで思考を巡らせる。その上で、断罪する。まぁもちろん、そこで同情から犯罪者を救おうとしてしまうのは、まさしく"異常"なのでしょうが。

ここ好きポイント


●踊ちゃんがとてもかわいかったですね。
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ちんどん屋の最後のセリフ。かっこよく〆ましたね。このキャラは存在自体が好きです。
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おわりに


 『Sessions!! ―――――真実嫌いの探偵は、』感想、いかかだったでしょうか。

 続編をひたすらに待ち続けたいと思います……!!

 次にプレイする作品は、『かけぬけ★青春スパーキング!』を予定しております。

 それでは✋