目次
はじめに
ちゃすちゃす✋
どーも、永澄拓夢です。
てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!
『アインシュタインより愛を込めて APOLLOCRISIS』
『はつゆきさくら』や『ナツユメナギサ』で知られるシナリオライター『新島夕』先生。本作は、そんな新島夕先生が2020年に世に送り出した『アインシュタインより愛を込めて』という作品の続編となっております。
『アインシュタインより愛を込めて』と言えば、発売当初に賛否両論を生み出した作品としてご存じの方も多いのではないでしょうか? さすがに同先生作品である『恋×シンアイ彼女』レベルの賛否両論ではありませんでしたが、『アインシュタインより愛を込めて』という作品はまさしく賛否両論になるのも頷ける作品でした。ちなみに私は『賛』側です。
さて、そんな作品の続編である本作。公式サイトには「やり残しがないように全部詰め込んでおります」との言葉が記載されておりますが、果たしてどのような内容に仕上がっているのでしょうか。
というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!
※本作は『アインシュタインより愛を込めて』という作品の続編です。その関係上、当然ながら『アインシュタインより愛を込めて』のネタバレを含みます。『アインシュタインより愛を込めて』を未プレイの方はお気を付けください。
あらすじ
小笠原から帰還して1年近くがたった。
夏のはじまり。
学園3年生になった 愛内周太は、まんぜんと季節の移り変わりを眺めていた。
のんきなクラスメート達。平和な毎日。
帰らない恋人、 「有村ロミ」。
すべてを、ただぼんやりと眺め、待ち続けていた。
そんな彼のもとに、彗星機構のリーダーである「ミコ」からの手紙が届く。
再び彼とその仲間達は、世界は、彗星にまつわる野望の中に取り込まれていく。
最後の夏が始まろうとしていた。
引用元
所感
補完的役割の作品としては、”普通に”良作であったと思います。無印程では無いにしろ、それなりに面白かったです。
ただ、個人的な満足度の話をすると、少なくとも『アインシュタインより愛を込めて』という作品の続編としては、可もなく不可もなくといった評価に落ち着きます。この辺はおそらく、他作品以上にユーザー毎で分かれる結論でしょうね。
本作を評価する方が存在するのも納得出来るクオリティではあります。どの点を評価しているのかもある程度は理解出来ます。ただ、あくまでも私個人としては、「求めていたのはそこでは無かった」ということで。
とは言え、『アインシュタインより愛を込めて』を完走したユーザーであればプレイすべき内容であるのは確かなので、該当する方はぜひプレイしてみてください。
自身の目で、見定めましょう。
~以下ネタバレ有~
総評
●シナリオについて
それなりには面白かったです。
<所感>欄にも記述しましたが、補完的役割を持つ作品としては普通に良作だったと感じています。公式サイトで「やり残しがないように全部詰め込んでおります。」と記載していただけはありますね。
ただ、『アインシュタインより愛を込めて』という作品に対する私の評価ポイントとは若干乖離する方向性の続編であったため、個人的な満足度はあまり高くないという感じです。
それでは、具体的に語っていきましょうか。
まず、本作の良点であり主目的でもあった『補完』に関して。
本作は、設定的な補完はもちろんのこと、特定キャラクターの背景に至るまでをも補完する内容となっていました。特定キャラクターとは、主に『有村ロミ』、『ミコ』、『郷田慎二』、『野上』の4名です。
特に、本作と地続きである無印グランド√のヒロインでもあった有村ロミと、無印における実質的な黒幕であった郷田慎二に関する掘り下げは非常に濃厚で、その末に明かされた事実にも素直に驚かされました。いやホント、さすがにロミがミコ同様にモーメントだとか、郷田博士が比村茜(ロミのオリジナル的存在)の父親だとか、無印の時点では想像だにしていなかった事実のオンパレードでしたからね。逆によくこれらの事実を無印で語らない選択が出来たものだと感心します。野上の掘り下げも良かったですね。実は、野上の背景にこそ一番感情を揺さぶられたまであります。野上の抱えているモノが他キャラクターに比べて最も共感しやすかったからでしょうね。
設定的な補完に関しても、本作の肝であった『魂』という概念の設定をより強固にするような物語構成となっていて、その点でも設定資料大好き人間の私としては嬉しかったですね。
さて。
ではここからは、上述程に良点をつらつらと記述出来るにも関わらず、私が本作に対して難色を示した理由について語ります。
まず前提として、この件に関する私の考え方を理解するには、私が『アインシュタインより愛を込めて』についてどの点を評価していたのかということを知る必要があります。というワケで、私がTwitterに投稿した『アインシュタインより愛を込めて』に関する感想の一部を以下に添付します。
(感想はスレッドで連ねてあるので、感想全体に興味のある方は以下のツイートよりスレッドを辿っていただければと思います)
本作の良かった点は一貫して『主人公が自分と向き合い自分らしさを見つけ出す』といういわば『主人公の物語』だった点だろう
— 永澄拓夢 (@kingtakumu530) 2020年11月20日
序盤はあまりにも捻くれていてとっつきづらい主人公だったこともあり、まさかそんな主人公に感情移入し涙を流す日が来るなど想像もしていなかった
要は、私が『アインシュタインより愛を込めて』で最も評価した点は、『一貫して主人公の物語であった点』ということです。どれだけ個別ルートが蔑ろにされる様子を見せられようとも私が無印を評価した理由は、偏にここにあります。むしろ、『主人公の物語』としての純度を高めるためにこそ、個別ルートを(恋愛劇としては)あのような体たらくにしたのだろうとまで考えております。
ではこれを踏まえて、もう一度上述した良点を読んでみてください。
本作は果たして、どのような方向性の物語だったのでしょうか? 間違いなく『一貫した主人公の物語』でなくなっていたのは確かです。そして、どちらかと言えば、主人公以外のキャラクターに焦点を当てるという方針の基描かれている物語であるとも解釈出来ます。
要は本作、『続編』という位置付けでありながら、作品としての方向性が若干変わってしまっているんですね。そして本作でやっていることは、あろうことか『無印でバッサリと切り捨てたモノの回収』なんですよ。”『主人公の物語』として切り捨てたモノを拾い集めている”んですよ。
この『ブレ』に違和感を覚えたからこそ、私は本作に対して難色を示したワケですね。「え、結局そこいら大事にするの?」と。「続編でも『主人公の物語』を貫いてくれるんじゃないのか?」と。「無印で貫いたモノを続編という形で制作サイド自体が否定するのか?」と。
もちろん、本作における『補完』自体を悪いと言っているワケではありません。『他のあらゆる要素を切り捨てて主人公の物語を貫き通した作品』の続編の主目的が、『主人公以外の要素の補完』になってしまっている点に対して、「それでいいのか?」と言っているのです。その点は勘違いしないで欲しい。
とは言え、続編である本作を読んだからこそ改めて感じたことですが、『主人公の物語』としての『アインシュタインより愛を込めて』は無印で完成されているとも言えるんですよね。だからこそ続編では『主人公の物語』感を発揮出来なかったという可能性も大いにあるな、と。そうであればまぁ、仕方がない。
ただだからと言って、(言い方は悪いですけど)”今さら”切り捨てたモノを回収してメインにしてしまうのはなぁ……。潔さが薄れるし、何より「本作で明かされた事実が物語中で明かされなかったことに対して、続編を出してでも補完しろと不満を顕わにするようであれば、そもそも無印の時点から好評なんてしていない」というのが本心です。
クドくて申し訳ありませんが、むしろそういう点をバッサリと切り捨てて『主人公の物語』として先鋭化させた作品だったからこそ『アインシュタインより愛を込めて』という作品を評価した身としては、続編である本作の在り方(方向性)に対し、イマイチ納得出来なかったという次第でした。
(文章めちゃくちゃになってそうで申し訳ないです。気が向いたら修正します)
追記 : もしも無印が『主人公の物語』として以外の要素をも切り捨てることなく仕上がっていたら、或いはここまで『ブレ』を感じることも無かったかもしれませんね。たらればなので分からないですけど。
●キャラクターについて
『愛内 周太』について。主人公。元鯨の鍵保持者。
主観者でこそありましたが、無印ほどにはメインとして描写されていませんでした。最後こそ活躍したものの、本当にそこだけでしたしね。やはり彼をメインとした『主人公の物語』は、無印で完成してしまっていたのでしょう。
ただまぁ、ラストシーンでは労いの言葉をかけたくなります。ヒロインのために未知の領域にまで進出する主人公。良いですね。『愛』ですよ『愛』。
『有村 ロミ』について。メインヒロイン。比村茜の魂から生まれたモーメント。アポロクライシスのボス。
正体については想像だにしていなかったため驚きました。一貫して主人公のために行動していたあたりはやはり好感ですね。
幸せになって欲しい……。
『郷田 慎二』について。主人公の叔父。黒幕。
壮大な夢を思い描き、大局に手を伸ばして、やがては総てを取り零した哀れな存在です。
彼の選択は、掘り下げれば掘り下げる程に主人公とは真逆。故に、主人公との対比として考えるのもまた、本作における楽しみ方ではありました。
彼のこれまでの行いは簡単に許されるものではありません。しかしそれでも動機は『悪』ではなかったのだから、報われては欲しいですよね。
『ミコ』について。彗星機構のボス。比村茜の魂から生まれたモーメント。
全知全能という役割を演じ続けることが使命付けられた存在。作中でもトップクラスの苦労人でしょう。
本作では、無印で明かされることのなかったその本性がついに明かされました。『世界を救う』という目的が常に行動の芯として存在しているため、分かりやすくも魅力的なキャラクターでしたね。
最後は彼女も、役割から解放されたカタチで復活することが出来ていて良かったです。
『野上』について。彗星機構の幹部。
無印でもたしかチラっと登場していたハズですが、まさかメインキャラクターとして昇格してくるとは思ってもみませんでした。それも、相当に魅力的なキャラクターとして昇華されていてとても良い。
重い過去を背負い、静かに狂っている存在ではあります。ただ、だからこそ強力な『自我』を持っているとのことで、終盤ではΩに対抗することが可能な程でした。
物語中で彼は主に、主人公に様々なレクチャーを行ったり、葛藤中の主人公に自身の話をしたりしていたワケなのですが。このような物語構成からして、個人的に彼は『主人公を導く先人』的な役割でもあったのではないかなーと解釈しています。主人公とは真逆の存在として対比された郷田博士とはまた異なる対比ですね。
●テーマ・メッセージについて
■「不条理な人生の中で、自我を以て答えを見つけ出す」
本作におけるメインキャラクターは、ほぼ全員不条理な人生を送っていました。そしてその人生の中で皆、何かしらの『問題』を抱え、答えを探して彷徨っていました。
そんな彼らに対し、外野は一種の『答え』を持ち掛けます。きっとその『答え』で問題自体は解決するのでしょう。
受け入れた者もいれば、跳ね除けた者もいます。
結果的に、外野からの『答え』を受け入れてしまった者は後悔の念に苛まれていました。逆に、外野からの『答え』を跳ね除けた者は、そのまま自らの力で突き進み、やがては自分なりの『答え』を見つけ出しました。
だからといって、一概に自分の意見で意固地になれという話にはなりません。ただ、例えどのような難題を抱えていようとも、『自我を以て決断を下すという意識を持つこと』は大切ということですね。
おわりに
『アインシュタインより愛を込めて APOLLOCRISIS』感想、いかかだったでしょうか。
そういえば、津熊静とかいうモブって結局なんだったんでしょうね。立ち絵まであったのだから何かしらの役割を持っていそうなものでしたけど……。読み方的に、Σの変装体かとも思ったのですが、それも違いそうですよね。なんか分かる方教えてください。
次にプレイする作品は、『Monkeys!i』を予定しております。
それでは✋