目次
はじめに
ちゃすちゃす✋
どーも、永澄拓夢です。
てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!
『Sessions!! ~少女を監禁する事情~』
同人サークル『Loser/s』さんから2014年にリリースされたフリーゲームです。『Loser/s』さんと言えば、もはや私のブログでもお馴染みですよね。
タイトルからも分かる通り、本作は『Sessions!! ────真実嫌いの探偵は、』の関連作です。結局探偵の続編は2013年から世に出ないままですが……。続編ではないという本作ははたしてどのような内容となっているのでしょうか。
というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!
あらすじ
――――――あなたは、愛を踏みにじることが出来ますか?
これは、あなたにそれを尋ねる物語。
引用元
所感
面白かったです。
相変わらずLoser/s作品は読んでいて楽しいなぁ。
キャラクターによるセリフのやり取りもクセがあるし、物語自体も考えさせられるものがあるしで、とても良い作品です。
本作は、本編というよりはスピンオフ集という感じでした。個人的には嬉しい掘り下げもあり、よりLoser/s作品の世界観や設定に対する理解が深まったので満足です。
ただその特性上、過去作をプレイ済みでないとイマイチ理解出来ない部分も多いかと思います。そのため、興味のある方は『強盗、娼婦のヒモになる↑↓』や『Sessions!! ────真実嫌いの探偵は、』からプレイしてみてくださいね。
~以下ネタバレ有(シリーズ過去作ネタ含む)~
各エピソード感想
全ての幸せな恋愛に贈る別れさせ屋のアイロニー
●シナリオについて
面白かったです。
『強盗、娼婦のヒモになる↑↓』や『Sessions!! ────真実嫌いの探偵は、』にも登場した別れさせ屋────獅童宗谷。本エピソードでは、サブキャラでありながら過去作でもその存在感をありありと発揮し続けていた彼が、ついに主人公を務めました。
本エピソードでは実際に別れさせ屋の仕事でカップルを別れさせるまでの過程が描写されるワケですが、それがまた鮮やか。恋愛理論を駆使して相手を惚れさせていくのが見所でしたね。
別れさせ屋としての同業者であるひばりも良いキャラをしていました。クズとしての立ち居振る舞いはもちろんのこと、終盤のタコ殴りシーンは印象的です。そして何より、彼女の『恋』という概念に対する独白。これこそが本エピソードの肝であったと考えても良いでしょう。『溶けることの無い氷細工の薔薇』。そんなメルヘンチックな『恋』。祈の話から引用するなら、『生きていれば必ず生じる”摩擦”にも負けない恋』。それを追い求めたのがひばりであり、それを体現しているのが獅童宗谷と宇佐美兎子だったという話ですね。
個人的には、Loser/s作品の主要キャラカップルってどれも結びつきが強いように感じています。「このキャラにはこのキャラでなければならない」的な。そういう関係性、ホント好き。
また、本エピソードは『Sessions!! ────真実嫌いの探偵は、』から1年後が舞台になっているとのことで、過去作キャラが続々登場します。Loser/sキャラクターが大好きな身としては大興奮でしたね。「強盗娼婦コンビィィィィィィ!!」とか、「枯草の名前が青葉になってるううううううううう!!」とか、「朝顔お前生きとるんかいいいいいい!!」とか、「散琉が大学生っぽくなってるうううう!!」とか、「ちんどん屋ああああああああああああ!!」とか、「踊ちゃんは相変わらずアホで可愛いなぁ!!」とか、とにかく叫びながらプレイしていました。大マジです。
んで、上述した通り本エピソード、『真実嫌いの探偵』から1年後のお話なんですよね。つまり、未公開の『真実嫌いの探偵』続編のアフターなワケですよ。だからこそ、それなりに『真実嫌いの探偵』続編が想像出来る情報もチラホラ登場しましてね……。ホント生殺しですよ……。俺はいつまでも『真実嫌いの探偵』続編を待ち続けるぞ……。
HAPPYEND STORY
●シナリオについて
面白かったです。
まさしく、『HAPPYEND STORY』でした。『HAPPY』の部分が少し特殊なだけで、ね。
これまでの作品やエピソードとはガラリと変わり、舞台はアメリカのボストン。
母親から受け継いだ『在り方』という呪いに縛られた男────ジンと、対象者を幸せにする天使の物語。
展開的には突出して語ることもありません。ただただ客観的には悲しくも、”ジン本人”にとっては幸せな、そんな歪な物語でした。
とりあえず獅童はマジでどこにでも出てくるな??? いや嬉しいけれど。
そういえば獅童、このタイミングで天使から預言的に養老枯草のことを聞いていたんですね。
少女を監禁する事情
●シナリオについて
面白かったです。
他のLoser/s作品からすると、前日譚的な立ち位置でしょうね。そして同時に、Loser/s世界観の頂点の一端を見せつけるエピソードでもあります。
ワケあって少女を監禁することになった小説家────桐原龍平を一応の主人公とした群像劇なワケですが……。
過去作から一気に世界観が変わったような印象を受けました。なんたっていきなり『能力』という概念や『巡査官』という超人たちがゾロゾロと登場した上に、鎖国だとか文明開火(他国での虐殺)だとか、Loser/s世界観における新情報が津波のように押し寄せて来ましたからね。本エピソード中ずっとドンパチしてるし。ひたすらに驚きましたよ。そんな世界観でも獅童が普通に登場してくるあたり尚更です。
ただ、それと同時に心は踊りましたね。明言こそされてはいませんが、おそらく『巡査官』レベルの『異常者』こそが、異常ランクA以上なのだろうと解釈しましたので。そりゃ椎名空風や養老枯草レベルが異常ランクBに収まっているワケですよ。
本エピソードは大分中途半端に終わったので、結局よく分からなかった部分も多いです。噂によれば小説の『シリアルキラーは振り向かない』が事実上の後日譚になっているとのことなので、そちらも購入せねば。
元強盗、探偵の助手をする
●シナリオについて
久々に『強盗、娼婦のヒモになる』主人公────椎名宗吾の活躍を見ることが出来て嬉しかったです。『Sessions!! ────真実嫌いの探偵は、』主人公────養老枯草とタッグを組んで事件を解決する話だったので尚更。
オマケシナリオではありましたが、何気にこれも『真実嫌いの探偵』続編の踊√アフターなんですよね……。生殺しだぁ……。
そういえば、本エピソード終盤で事件解決後さっさと逃げ出したあたり、踊√での枯草は結局自身の在り方に向き合えなかったんですかね。
もえる御伽草子・壱
●シナリオについて
Loser/s版桃太郎。尻上がりに面白くなりました。
本エピソード、一見お遊びシナリオにも見えるんですが、見方によれば極端なりに最も分かりやすくLoser/s作品における『異常者』という設定を体現していると感じました。
桃太郎の能力はまごうことなき『異常』ですし、桃太郎の在り方や運命は『異常者』のソレです。Loser/s作品を追う上ではけっこう大事なエピソードだと考えられます。
羊子ちゃんといちゃいちゃするだけの話
●シナリオについて
桐原龍平と民樹羊子がひたすらにいちゃいちゃする『少女を監禁する事情』アフター。
こんな幸せの数年後には、何かしらの理由で桐原龍平が亡くなるんですよね……。たしか『別れさせ屋のアイロニー』で獅童が言っていました。そう考えると、なんだかやり切れない気持ちになりますね。
なぜなにいもうとズ
●シナリオについて
椎名散琉と椎名咲耶によるお便り回答コーナー。
本エピソード中では『真実嫌いの探偵』続編やいもうとズ√は制作予定と述べられていましたが、本作から8年経過しているあたり期待は薄いですね。おぉん……。
総評
●シナリオについて
どのエピソードも面白かったです。やはりLoser/s作品は安定して面白い……。
キャラクターや世界観が良いからこそ、そんなキャラクターたちが巻き起こす展開ややり取りを楽しんで読めるワケですよね。というか、あれだけたくさんいる主要キャラクターのほぼ全員から主人公を務められるポテンシャルを感じるというのも凄い。キャラクターが溢れんばかりに魅力的である証拠です。
本作はどちらかと言えば、サブキャラクターの掘り下げやLoser/s世界の設定お披露目といった印象を強く受ける作品でした。そのため、展開的に語ることがあまり無いんですよね……。
しかしその中でも『別れさせ屋のアイロニー』や『HAPPYEND STORY』では伝えたいことがそれなりにハッキリとしていたようにも思います。その点は短編スピンオフといえども妥協が無くて素晴らしいですね。
とりあえず、これだけ設定お披露目をしたのだから、これからもSessionsシリーズを制作し続けて欲しいですね。元々そういう想いはありましたが、本作をプレイすることで尚更その想いは強まりました。
一先ずは『真実嫌いの探偵』続編を……何卒……何卒ぉぉぉ……。
●キャラクターについて
■『獅童 宗谷』について。『狂客』の異常者。別れさせ屋。自分が楽しむことを常に優先して生きるクズ。
ついに主人公となった皆勤賞キャラクター。何気に、彼の背景が詳細に語られることって初めてですからね。蓋を開けてみれば、今までなぜサブキャラに収まっていたのか分からない程に濃密なキャラクターで驚きました。
彼の『ルール(生き方)』のルーツには思うものがありましたね。たしかに先天的な『狂客』の影響もあるのでしょうが、彼が常に危険に身をさらしながら世を楽しむ理由は「あの世に行った際に先だった友人にたくさん話してやるため」とハッキリしています。Loser/s作品の異常者の中でも、ルールのルーツがハッキリしているタイプは珍しいのではないでしょうか。
たしかに客観的に見れば自分のために他者を食い物とすることを躊躇しないクズキャラではあります。しかし、彼はそれを自覚しつつもルールを貫いている。そういうところに惹かれます。
■『宇佐美 兎子』について。獅童宗谷の妻。
作中では臆病な性格と言われていますが、獅童のためとあらばその限りではありません。
明言こそされていませんが、彼女の異常ランクも相当に高いものと感じました。妊娠中の身でありながらチンピラ10人を殲滅したり、自棄になった獅童のテロを何事も無かったかのように食い止めたり、獅童を倒した熊を撃退したりと、これまでの行いが常人のソレではありません。身体能力も然りです。
彼女のルールは『獅童宗谷のために尽くす』という感じなのでしょうが、ルールや身体能力、そして名前に動物名が入っているところから鑑みるに、彼女も『巡査官』絡みなのではないかとか思ってみたり。
■『立木ひばり』について。本名:木立すずめ。別れさせ屋。
新キャラだったこともあり、最初こそ「クズを貫いていて清々しい」くらいにしか思っていなかったのですが、『別れさせ屋のアイロニー』終盤ではとても深いキャラクターであったと感じられる程になっていました。
別れさせ屋をする目的が「絶対に砕けない『恋』を探すため」とか、乙女すぎてホント好きです。
エンディングの一つにあった『もしも獅童が出会ったのが兎子ではなくひばりだったら』のIFエピソードはぜひ続きを見てみたいですね。
■『正義 葵』について。旧名:正義 揚羽(?)。何でも屋。
おそらく『少女を監禁する事情』では蝸牛朝日の相棒を務めていた揚羽ですよね……?
となると、彼女が探している行方不明者というのは蝸牛朝日ということになりますが……。『少女を監禁する事情』の後に何があったのでしょう。気になります。
それはそうと、彼女の戦闘スタイル大好きです。数々のゴツい武装をとっかえひっかえ使いこなす系の女性キャラって本当にカッコいいですよね。ってか、こんなのと椎名空風は戦ったことがあるって……。椎名空風どんだけ強いんだ……。
■『ジン』について。ロス市警。
母親から引き継いだ『ルール』という呪いに縛られた哀しき男。
「多くの命を奪ったなら、その分自身も愛するものを失わねばならない」なんて、彼の境遇からすればあまりにも残酷なルールです。天使は彼のルール完遂と死の両立を図ることで彼を『幸福』にいざないましたが、やはり客観的に見ればただただ哀しいです。桃太郎ほどではないにしろ、雁字搦めの難儀なルールです。
■『天使』について。皆を幸福にするため突如現れる天使。
人間の領域を超えた頂上存在でありながら、彼女もまた独自のルールに基づいて生きる『異常者』なのでしょう。
彼女の旅はおそらく永遠に続きます。寿命は無いようですから尚更です。彼女の『運命』は、どのような終焉を迎えるのでしょうか。彼女についての続編も欲しいですね。
■『桐原龍平』について。小説家。監禁者。
正直、これまでに主人公を務めてきたキャラクターの中では最も薄味です。属性的にはどこまでも中立を貫けるという点が魅力なのでしょうが、実際のところどうして志賀や白狼が一目置いていたのかは読み取れませんでした。
彼に関する掘り下げももっと欲しいですね。獅童曰く、彼はどこかのタイミングで亡くなるとのことですので、そのことに関しても知りたいです。
■『民樹 羊子』について。半サイボーグ。両親による人体実験被験者。被監禁者。
かなり悲惨な過去を歩んできています。龍平のような存在に会えたことは幸福だったのでしょう。
志賀とそれなりに戦えていたあたり、並の巡査官レベルの強さは有しているのでしょうね。
志賀が龍平に託すことで匿い、白狼は彼女を被験者とすることで夢の足掛かりにしようとした。思えば、色んなキャラクターの思惑の中心にいたキャラクターですよね。
さて。龍平が亡くなる際に、彼女はいったい何をしていて、どのような反応を示したのでしょうね。
■『小崎 白狼』について。巡査官。
異常者らしさが際立っています。『誰も苦しまない世界を作る』という信念の元、それを叶える道を探すためにあらゆる人間を苦しめる。圧倒的な矛盾を孕み、それを自覚しつつも、止まることは出来ない。
彼女は志賀との戦いの後、どうなったのでしょうね。
■『志賀』について。巡査官。
結局、あまり彼の目的が分かりませんでした。
カリスマ性に秀でており、悪意の強いキャラクターでもないのでしょうが、だからこそなぜあのような行動をしていたのかが読み取れませんでしたね。
彼についてももう少し掘り下げが欲しいです。
■『蝸牛 朝日』について。志賀のオリジナル。長期幸福を感じられない存在。
長期幸福を感じられないって相当難儀ですよね。だからこそ常に短期幸福を積み重ねなければならない。
結局彼は、正義揚羽の元を離れてどこへ行ってしまったのでしょうか。再び志賀との決着を付けに行ったんですかね。
■『養老 青葉』について。旧名:養老 枯草。『Sessions!! ────真実嫌いの探偵は、』主人公。『探偵』の異常者。
踊√アフターであるオマケシナリオの方では『養老 枯草』のままでしたが、祈√アフターである『別れさせ屋のアイロニー』の方では『養老 青葉』に改名していましたね。『別れさせ屋のアイロニー』の方では憑き物が落ちたように見えたことや、積極的に探偵業に勤しんでいる様子も踏まえて鑑みると、祈√では自身の『探偵』という異常に向き合い、受け入れる決意を固めることが出来たのでしょうね。
■『椎名 宗吾』について。『強盗、娼婦のヒモになる』主人公。元カルト教団の次期教祖。現弁護士(トラ子)の補佐。
相変わらず心理学を用いた攻めが強い。
本作ではやたらと枯草に兄貴面していて笑いました。
■『桃太郎』について。桃から生まれた存在。絶対鬼殲滅するマン。
『鬼を殺すこと』をルールとし、ひたすらに『運命』まで走り抜けた『異常者』。
極端な例だからこそ、彼からLoser/s作品における『異常者』というものがどのようなものかを読み取ることが出来ました。
彼のように、本編中のキャラクターたちも『運命』に至って死んでいくのでしょうか……。
考察
●本作における『異常者』について
社会一般から外れた倫理。強烈な自我と信念。固有のルール(生き方)。
上記3点を有する人間を、Loser/s作品世界では『異常者』と定義しているのでしょう。
あとはその異常性(或いは超常性)によりランク分けしているって感じですかね。
おわりに
『Sessions!! ~少女を監禁する事情~』感想、いかかだったでしょうか。
ホント、Loser/sさんは早く探偵続編やいもうとズ√をください……。
次にプレイする作品は、『うさみみボウケンタン』を予定しております。
それでは✋