目次
はじめに
ちゃすちゃす✋
どーも、永澄拓夢です。
てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!
『PARQUET』
かの有名エロゲブランド『ゆずソフト』さんが、『ゆずソフトSOUR』というブランド名で2021年に世に送り出した全年齢作品です。
本作発表当時には界隈がざわついたことを覚えております。なにせ天下のイチャラブエロゲブランドゆずソフトさんが全年齢作品を制作するワケですからね。仕舞いには「ゆずソフトまでエロゲ界隈を捨てるのか!?」的な疑惑まで口にする杞憂民まで発生する始末でした。
そんな騒ぎの中で世に送り出された本作、実はあまり良い噂を聞きません。……まぁ、低評価の中にはほぼ恨み節のような理不尽評価も紛れていますが……。そんなこんなで二の足を踏んでいたのですが、発売開始から半年経ってやっとこさプレイしようと思い立ったので、この際ついに購入した次第でした。
ゆずソフトさんの完全全年齢作品。はたしてどのような内容となっているのでしょうか。
というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!
あらすじ
Brain-machine Interface とは、脳と機械を繋ぐ技術である。
BMIによって、人の記憶はデータ化が可能となり、世界に発展をもたらした。
そして、彼は造り出された。
複数の人間の記憶を混ぜ合わせ、新たな人間を造る非合法な実験によって。
他人の記憶しか持たない彼は“自分”に興味を抱き、“自分”を探して街に出る。
そうして訪れた街で出会った2人。
猫を思わせる涼やかな『茨木リノ』
犬を思わせる朗らかな『城門ツバサ』
彼女たちもまた、BMIの非合法な実験によって生まれた存在だった。
秘密を抱えた3人、“彼”と“彼女たち”の同居生活が、大きな変化をもたらしていく——
引用元
所感
決して悪くはありませんでしたが、良くもない作品でした。基本的にはいつものゆずソフト作品よろしく平坦であっさりしたシナリオです。
綺麗に纏まった作品ではありますが、盛り上がりに欠けますね。Chapter5に入ってから少し面白くなってはくれましたが。
設定やテーマからはポテンシャルを感じられるんですがね……。ライターさんはもっと素直にエロゲの柵を跳ね除けてええんやで……?と思ってしまいました。
~以下ネタバレ有~
総評
●シナリオについて
終わってみればそう悪い作品でも無かったような気がします。ただ、それはそれとして良い作品だったかと問われれば返答に困るという感じです。
シナリオの纏まり具合に関しては申し分ありません。綺麗なシナリオ構成だったと思います。ただ、シナリオを短い中で上手くまとめるためなのか、或いはライターさんがそういうタイプの作品しか書けないのか、非常に平坦であっさりとしたシナリオとなっておりました。本作の設定やテーマなら、もっと大きなスケールで物語を書けたと思うんですがね……。
せっかく全年齢作品として世に送り出す(=エロゲの呪いや柵からは解放される)のだから、むしろそちらに振り切って欲しかったというのが率直な私の気持ちです。ただまぁ、本編後のアフターストーリーで滅茶苦茶中途半端に恋愛要素を挟んできたあたり、ライターさん自身がそういったエロゲの呪いや柵から逃れることが出来ないんだなと感じたので、仕方がないんですかね。いやホント、本編中で恋愛要素を排除していたから良かったまであるのに、アフターストーリーであんな中途半端な蛇足を描くくらいなら最初から素直にエロゲで作れば良かったのに……と思ってしまいます。
綺麗なシナリオ構成だったと上述しましたが、そこに関しては純粋に良点です。『人間とは何なのか。自分とは何なのか』を知るために外に出た主人公が、ヒロインズと出会って複数種類の『人間の弱さ』と『弱さの先にもある幸福』を知り、最終的に自分が人間としてどのように生きればいいのかを結論付ける。そのようなテーマ的帰結も達成しつつ、展開的にもヒロインズの出自や打開策、黒幕が主人公自身の出自に繋がっていて、上手い構成だとは感じました。
ただ、スケールを小さく描いたからこそ纏められた感も否めませんでした。終盤の解決パートは本来最も苦労するパートであるハズなのに都合良く淡々と事が進みましたし、そもそも『人間を知る』という目的があるなら今回の主人公が見た世界はあまりにも狭すぎる。事件自体も設定や世界観を考慮するとそう大きく複雑なモノではありませんでしたしね。そこいらがもう少し大きなスケールの話にして欲しかった点です。
とりあえず、全年齢ノベルゲームなのだから、他の全年齢商業ノベルゲームや同人ノベルゲームを見習ってイチャラブ恋愛路線から吹っ切れた作品を作ってしまっても良かったと思います。どうせゆずソフト作品のコアファンはエロ有りイチャラブを好む傾向にあるのですから、本作のような作品を今後も出す以上どうしても彼らの需要とはズレが生じます。それならいっそのこと、別ベクトルのファン獲得に走るのもアリでしょう。
……まぁ、たかだか一介のユーザーがこうやってマーケティング手法に口出しするのは良くないのでしょうが……。
●キャラクターについて
■『伊吹 カナト』について。主人公。天才を創り出す計画の成果人物。何人もの人格の集合体。
設定や背景は実に主人公らしいというか、濃かったんですがね。欲を言えば、シナリオ上でももう少しその特別性を発揮して欲しかったなと。
あと、彼がリノやツバサとは出会わない世界線とか見てみたいです。世界を旅して欲しいタイプ。
■『城門 ツバサ』について。ヒロイン。既に死んでいる研究者の人格。
本作の最も中心にいたと言っても過言では無さそうなキャラクターですね。彼女の『弱さ』があったからこそ、本作の物語は在ったのでしょう。
■『茨木 リノ』について。ヒロイン。ツバサの人格の器となった少女。
可愛かったです。エビフライねこ!
ツバサの『弱さ』があったからこそ本作は在ったと上述しましたが、彼女の『弱さ』も本作の物語には必要なモノでした。本作が『”人間の弱さ”の先に成立する物語』であることがよく伝わりますね。
■『橋姫』について。黒幕。
背景に同情こそしますが、黒幕としての在り方が小物。あまり好きなタイプの黒幕ではありません。タガの外れ方が中途半端。
ただまぁ、彼女の『弱さ』があったからこそ救われた人間もいたんでしょうね。
おわりに
『PARQUET』感想、いかかだったでしょうか。
最近はノベルゲームだけでなくアニメも含めて自分に刺さる作品ばかり触っていたので、相対的に本作を見る目が厳しくなってしまった点は否めません。そういうの良くないんですけどね……。
次にプレイする作品は、『非実在系彼女の終活』を予定しております。
それでは✋