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ノベルゲーム感想と思考出力

『のーぶる☆わーくす』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『のーぶる☆わーくす』


 エロゲーマーなら誰しもが知っているであろう天下の商業ブランド『ゆずソフト』さん。本作は、そんなゆずソフトさんが2010年に世に送り出した作品となっております。
 巷では本作こそがゆずソフト作品の最高傑作であるとかなんとか……そのような噂を聞き及んでおりますので、プレイするのが楽しみです。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 本作の主人公・藤島 匠はある日、大富豪の息子であり自分と瓜二つの外見をした兼元 朱里と偶然に出会う。後に朱里の姉である兼元 灯里とも匠は対面し、暴漢に狙われている朱里の影武者をして欲しいと灯里から頼まれる。金銭的事情から匠は影武者の仕事を引き受ける。匠は兼元家の屋敷で使用人として働きながら、朱里に扮して大富豪の子女が学ぶ六麓学院に通うという生活を始める。影武者としての生活を通じて、匠は6人の女性達——匠が扮する朱里の姉・兼元 灯里、兼元家の使用人・月山 瀬奈、六麓学院理事長の孫娘・正宗 静流、元庶民で匠の知り合い・国広 ひなた、実家が暴力団である同級生・長光 麻夜、六麓学院の教師であり匠の担任・安綱 蛍——と交流を始める。匠はやがて一人の女性と親密な仲になっていく。

 引用元

 ※ 現在ゆずソフトさんの公式サイトが新作発表前で見られない状態だったので、Wikipediaにあったあらすじでお茶を濁します。公式サイトを見られるようになり次第、正式なあらすじに書き換えます。

所感




~以下ネタバレ有~











各ルート感想


 攻略順は以下の通り。
 麻夜√⇒蛍√⇒静流√⇒瀬奈√⇒ひなた√⇒灯里√

長光 麻夜√

●シナリオについて
 終盤は面白かったです。主人公が覚悟をキメて強大な相手に立ち向かう展開は、非常に私好みでした。
 イチャイチャパートの中弛みは玉に瑕ですが、まぁゆずソフト作品にとっては毎度のことなので仕方無いですかね……。

 本ルートは、一貫して『人付き合いにおいては”その人そのもの”を見ることが重要』というテーマを完遂したシナリオであったと解釈しております。任侠の家系に生まれた麻夜が周囲に受け入れられる展開からはもちろんのこと、逆に麻夜が朱里の身代わりだった匠を受け入れるという展開からも、上述のようなニュアンスのテーマを読み取ることが出来ます。終盤に至っては、匠を認めた麻夜父が「どこの誰かということは重要やない。どういう人間かが重要」というセリフを残してもいますしね。他にもいくつか根拠はありますが、まぁ上述テーマで間違いないでしょう。
 んで、上述テーマ、かなり本作主人公である藤島匠の境遇と親和性の高いテーマなんですよね。なにせ匠の物語中における境遇は『兼元朱里の影武者』なワケですから。恋愛一つとっても、まずは兼元朱里ではなく藤島匠という人間として見てもらわなければ始まりません。そのような観点からすると、やはり本ルートにおいて軸とされたテーマは、主人公の境遇と非常に親和性が高かったと言えるのではないでしょうか? ライターさんが狙って書いたのだとすれば、その構成力をぜひとも評価したいですね。

 終盤展開に関しては、よくある展開で真新しさは感じなかったものの、個人的にはかなり満足です。上述した通り、私好みの展開でした。これでこそ『主人公』という役割を持つキャラクターという感じですね。自らの『意志』で行動し、時には『覚悟』を示す。良い主人公による、良い展開であったと思いました。

安綱 蛍√

●シナリオについて
 個別ルートというよりは、ちょっとしたファンサービスシナリオという体裁。恋愛感情を持つ/持たれる上で”最低限”必要なイベントと行為シーンを取って付けただけの内容でした。その関係上、そもそも面白さを測ることが出来ませんし、語れる内容も特にありません。

 蛍先生の境遇が主人公である匠と近しかったので、普通にメインヒロインとして個別ルートを用意すれば良いシナリオが生まれた気がするんですがね……。なんだか勿体ないなぁ……。それに加えて、実は蛍先生って匠視点からすると作中で唯一年上の攻略ヒロインでもあるんですよね。作中において貴重な年上ヒロインを有って無いようなシナリオで消化してしまうのも、かなり勿体ないと感じました。総じて、何もかもが惜しいルートですね。

 それはそうと、やはり教師ヒロインとの行為シーンでは夜の保健授業みたいな展開が定番なんでしょうかね?

正宗 静流√

●シナリオについて
 面白かったです。特に物語構成が秀逸であり、期待以上のクオリティに仕上がっていました。展開に関しても、コミカルなパートとシリアスなパートが良い塩梅で組まれており、ゆずソフト作品としては珍しく中弛みの無いシナリオでしたね。その点でも評価したいルートです。

 本ルートは、ヒロインである静流が、主人公である匠との交流を深めることで『正宗家の娘』としては体験出来ないことを体験して世界を広げ、ゆくゆくは『正宗家の娘』という鳥籠から羽ばたく物語でした。また、それと同時に本ルートは、匠がどんな状況に陥っても尚、愛した女性(静流)の幸福を第一に考えて尽力するという物語でもありました。時にすれ違い、時に想い合い、やがて立ち塞がる障害を二人の決意と行動によってクリアしていくシナリオには、プレイヤーである私も納得の一言。特に本ルートのシナリオは良く練られており、細かい部分における妥協を許していないという印象を受けました。より噛み砕いて言うと、「所謂”ご都合展開”と解釈されてしまうような要素が少ない」ということですね(無いワケではないのでこの表現ですが)。朱里の復帰が決まってからの匠による影響や立場を考慮した『身を引く決意』は目を見張るものがありますし、そこから静流の元を離れないよう選択させる根拠付けも秀逸でした。匠の『身を引く決意』は、『正宗の娘としての静流』の将来を案じたモノであったが故に、本来は至極真っ当な決意であり選択なんですよね。しかしこと本ルートでは、その選択は間違いになるんです。なぜなら、匠は静流から「『正宗の娘』という立場から逃げ出したい」という本心を以前に聞いていたワケですから。その選択は、静流を『正宗の娘』という鳥籠に閉じ込めたままにするということになるワケです。それに気付かされたからこそ、匠は『身を引く決意』を棄却して静流に寄り添った。この辺が、特に物語構成として上手いと感じた部分になります。粗いシナリオだと、ここで周囲への影響やヒロインの立場なんざ考えることなくヒロインに寄り添ったり、最悪ヒロインを連れ出して駆け落ち同然なことをしようとしてみたりするものですがね。たとえ結果が似たモノだろうと、そこに至るまでの過程や根拠は非常に大切なのだと再認識させてくれるシナリオでした。そういう意味だと、最終決戦の決着の付け方も良かったですね。正々堂々を重んじ、”敵”を軽率に『悪役』として突っぱねることをせず、努力によって敵をも納得させるという言わば”静流らしさ”溢れる展開を魅せてくれましたから。少々オチは拍子抜けではありましたが、匠や静流の行動がその決着を呼び寄せたことに変わりはありませんし、何より正宗静流√としては納得せざるを得ない決着の付け方だったと言えるので、個人的にはかなり満足しています。

 より詳しい展開について。
 ルート序盤こそ様々な初体験に目を輝かせる静流の可愛さに一喜一憂するだけのシナリオだったのですが、朱里の復帰が間近に迫って匠が身を引く決意を固めたあたりから一気に”物語”として面白くなりました。もちろん最終的には匠が静流と結ばれる結末へと至ることは分かりきっていましたが、少なくとも終盤にさしかかるまではどのようにしてそこまで話を持っていくのかが読めませんでしたからね。先にプレイしていた麻夜√では、特に家同士での大きな繋がりがあったワケでもありませんし、そもそも周囲には関係性を秘密にしていましたから、麻夜と朱里ではなく麻夜と匠が関係を結ぶことにそう大きな立場的障害は絡んできませんでした。しかし、それに対して本ルートでは、そもそも兼元家と正宗家の間に業務提携の話がありましたし、朱里と静流との許嫁の話も浮上してきました。さらに極めつけは、朱里と静流の関係性が周知されてしまっているということ。要は、朱里と静流が関係を結ぶことは良くとも、匠と静流が関係を結ぶことは大問題へと発展する状況だったワケです。そんなん、先が読めるワケが無いじゃないですか。先の読めない展開でワクワクさせてくれたという点もまた、本ルートの面白さに一役買っているのでしょう。また、終盤展開は『仲間みんなで協力して何かを成し遂げる』という王道展開となっていたため、その点でもかなり好みでした。

 本ルート、一見わかりにくいですが、敷かれているテーマはやはり麻夜√で敷かれていたモノに近しいという印象を受けました。強いて言えば、麻夜√における『人付き合いにおいては”その人そのもの”を見ることが重要』からさらにもう一段階先に進んで、『人それぞれの本質』そのものがテーマなのでは無いかと解釈しております。麻夜√における麻夜同様に静流は朱里というガワではなく匠という中身に拘りましたし、『正宗の娘』としての立場を嫌がる静流と『正宗の娘』らしくないことに目を輝かせる静流という対比構造からも『静流の本質の所在』が仄めかされています。
 ……というか、この流れだと本作そのもののテーマが『人それぞれの本質』である可能性も否めませんね。

月山 瀬奈√

●シナリオについて
 面白さ的には麻夜√や静流√に劣りますが、良い話ではあったと思います。
 個人的には瀬奈が結構刺さるヒロインだったので、少々長いようにも感じたイチャラブシーンも苦ではありませんでした。

 本ルートは、暗い過去を持つヒロインが自分自身と向き合い過去を乗り越えるという内容でした。面白さ的には可もなく不可もなくですが、決して悪いシナリオではなく、シリアスも良い塩梅でちょうど良いシナリオには仕上がっていたと思います。とはいえ、麻夜√や静流√で仄めかされた『人それぞれの本質』というテーマ性は本ルートからはあまり感じられませんでした。……まぁ、強いて言えば『今まで目を背けていた自身の本心と向き合う』という意味合いで『人それぞれの本質』に結びつけられるとも言えますが……。まぁ兎にも角にも、麻夜√や静流√で仄めかされたテーマが本ルートではあまり強調されていなかったという点では、本ルートは他の個別ルートと若干気色が異なるという印象を受けましたね。

 本ルートにおける最も好みの場面は、匠と瀬奈が各々自身の恋心を自覚しつつも互いを想いやるが故に告白することが出来ないというパートですね。瀬奈は、自身の気持ちを父親のような匠の温もりを求めるが故に誤魔化した偽りの恋心であると考え、もしもそうだった場合に匠に申し訳ないと考える。匠は、瀬奈の性格や瀬奈が父親のような温もりを求めている事実を知っているからこそ、もしも告白してフられた場合に瀬奈の頼り先が無くなることを危惧する。俯瞰者視点からすると「両想いなんだからいけるぞ!」と思えることでも、やはりキャラクターたちは片方の視点しか持ち合わせていないワケで……だからこそ生じてしまうこのような膠着状態はけっこう好きだったりします(まぁ限度はありますが……)。

国広 ひなた√

●シナリオについて
 面白かったです。
 関係性の変化に伴う互いの『意識』の変化。失いかけて気付く互いの存在の重要性。友人から恋仲へと互いに惹かれていく過程。そういったものが楽しめるシナリオであったと考えています。

 本ルートは、展開・テーマ性共に良質であったという印象です。
 展開に関しては、元々互いに男女としての意識が皆無だった匠とひなたの関係が、様々なイベントを介して互いを意識するようになることで段々と『男女』の関係へと変化していく様が非常に感慨深かったですし、終盤の主人公の『覚悟』を伴う展開も読んでいてとてもアツかったです。……まぁ、結局その『覚悟』は独り相撲オチ(ひなたの祖父が匠を試しただけ)だったので、その点は若干拍子抜けで残念でしたが、ゆずソフト作品に過酷な展開は求められていないのでしょうし、そういう系統の不満は「自分がメインターゲットじゃなかった」として飲み込むしかないのだろうなということで一応自身の気持ちに決着をつけています。
 上記で語った展開のうち前者に関しては、ヒロインである国広ひなたの『隠し事の出来ない素直な性格』と親和性の高い展開でもあったのだろうなとか思ったりしています。ポーカーフェイスが上手いヒロインではこう上手い展開運びにはならなかったのではないでしょうか? 互いの意識の変化を表現する上では、やはりある程度の『素直さ』というものは必要なのだろうなぁと思いました。

 テーマに関しては、本ルートでも『人付き合いにおいては”その人そのもの”を見ることが重要』というものが色濃く描かれていたと感じました。その点では、麻夜√に近しかったのかなという印象ですね。匠の正体がバレることによる友人関係の一時的な破局展開において、友人全員の怒っていたポイントが『素性を偽っていた点』ではなく『自分たち友人に真実を話してくれなかった点』でしたし、匠の登校最終日における各々の別れの言葉も『兼元朱里の影武者』という役割のさらに奥にある『藤島匠そのもの』を見据えた発言ばかりでしたからね。

 ちなみに、本ルートが一番お気に入りのルートかもしれないです。アフターで結婚式のエピソードを読ませてくれ……。

兼元 灯里√

●シナリオについて
 面白かったです!
 センターヒロインのルートだけあって、シナリオにも力が入っていたように感じられました。また、テーマも色濃く昇華されていたような印象を受けました。

 本ルートは、兼元家のために尽くさなければならないというある種の強迫観念のようなものを抱いたヒロイン────灯里が、本心から進みたいと思える幸福への道を見つけ出す物語でした。概要からも読み取れる通り、やはり本ルートでもテーマとして敷かれていたのは『人それぞれの本質』であったのでしょう。素の自分と本心をひた隠し、『兼元家の娘らしい自分』という皮を被りながら過ごしてきたルートヒロインの灯里。そんな灯里が、兼元家の礎の一つとなることよりも自らの恋路を選択するというシナリオは、まさしく上述したテーマの体現であったと言えます。
 また、本ルートには他にも、『弟である朱里には何も思わないのに弟と同じ顔の匠にはドキドキするという灯里の恋心』や『寄り添っているようで互いに本心を打ち明けるのを恐れていた父親(伊角)と娘(灯里)の関係性』、『素の灯里をこそ愛しているのだと言わしめる匠の気持ち』など、とにかく『相手の本質を見る』或いは『自分の本質を曝け出す』といった要素がふんだんに散りばめられているんですよね。本作におけるテーマ────『人それぞれの本質』が最も色濃く昇華されたルートだったと上述した理由はここに起因します。センターヒロインのルートとして素晴らしい出来でした。

 展開について。
 終盤局面はかなり面白かったですね。やはり仲間と協力しての総力戦はアツい。1人1人が自らの持ち味を活かして敵を打倒する展開には、私も思わず手に汗握りました。敵がコテコテの悪役という感じでチープなのは否めないため好き嫌いは分かれるでしょうが、私はこういう展開も大好きです。

 ただ本ルート、若干静流√とネタが被ってしまっていた感は否めません。というかまぁ、そもそも灯里のキャラクター性自体が実はけっこう静流と被っていたりするので、それも仕方がないことなのかもしれませんが……。私は両シナリオ共に面白かったから気にはしていないのですが、気になる方は気になるかもしれませんね。

総評


●シナリオについて
 全体的に程よく引き締まった良質なイチャラブゲーであったという印象です。
 今までプレイしてきたゆずソフト作品(ぶるくす~リドジョ)の中では頭一つ抜けて面白かった作品でした。

 まず何よりも評価したい点が、全ヒロインに高水準な魅力を感じられた点です。ゆずソフトさんは基本的にヒロインの魅力を活かすのが巧みなブランドですが、本作ではその長所が特によく活かされていたような気がします。個別ルートに入ったからといってルートヒロイン以外のキャラクターが全く出てこなくなるワケではないという点も素晴らしいですね。
 また、イチャラブゲーでありがちな『クドいイチャラブ』という欠点が本作では極力抑えられていた点もまた個人的には評価点です。イチャラブしている場面って、言ってしまえば物語の停滞に近しいことが多いんですよね。たしかにある程度ヒロインとのイチャラブシーンは見たいものの、見せられすぎるのも胸焼けを起こしてしまいます。その点、本作ではヒロインとのイチャラブをしっかり描きつつも、読んでいるのが苦痛になる前の絶妙なタイミングで本筋へと物語の舵を切ることが多かった。まぁ、正直本作以降のゆずソフト作品でも冗長なイチャラブシーンはあるので、本作がたまたま上手い塩梅の物語構成になっただけという説は否めませんが、少なくとも本作が程よいバランスでシナリオを組み上げられていたことに変わりはありませんので、私は評価するのです。

 展開に関しても、全体的にコミカルとシリアスのバランスが良かったですね。また、キャラクター間のやり取りもクスっと笑えるものが多かったですし、シリアスパートもキツすぎず茶番すぎずというラインが守られていたので、コミカルとシリアスの両方ともが程よいクオリティで成立していたのかなと思います。
 加えて、本作は(ほぼ)全てのルートにおいて一本のテーマが一貫して敷かれていました。ゆずソフト作品のようにグランド√もなく個別ルートそれぞれで物語が完結する形式だと、各々のルートでテーマがバラける印象がありますが、本作では作品としてのテーマがブレなかった点が凄いなと感じました。本作における最も大きな評価点はこれかもしれません。

●キャラクターについて
■『藤島 匠』:主人公。バイト戦士。兼元朱里の影武者。
 器用なバイト戦士。週刊少年ジャンプで連載されていた某お色気温泉漫画宜しくバイト戦士最強論を体現するキャラクターですね。個性もあるし、自身の意志を以て能動的に展開を動かすし、筋は通す気質だしでほぼ文句の付けようがない主人公でした。やはり主人公はこうでなくては!
 ただまぁ、時折軽率な行動が目立ったり、極端に察しの悪い場面があったりする点は少々マイナスな印象を受けましたね。麻夜家のゴロツキを見ておきながら麻夜の家が『任侠』であるという可能性にすら辿り着けなかったり、瀬奈が叔母と出逢って明らかに動揺しているのを目の前で見ていたのに瀬奈の体調不良の原因に思い至らなかったりっていうのはマジでさすがに察しが悪すぎるよ……。

■『兼元 灯里』:兼元朱里の姉。
 理不尽感の無い正統派ツンデレ。ツンとデレのバランスが良く、時折見せる子供っぽさも姉属性とのギャップで好印象です。その上、物事の判断が理知的であり、その点でも好感が持てました。
 主に出自的な面でけっこう重めの過去を持っていましたね。異母姉弟……。母子家庭で、母親の死後兼元家に入り、その後は兼元家に貢献するためひたすらに自身を殺してきた……。瀬奈も家族を失って孤独の身で兼元家に引き取られましたが、きっと灯里があれほどまでに瀬奈のことを気にかけていたのは、自身と重なる部分があったからなのかもしれませんね。

■『月山 瀬奈』:兼元家に仕えるメイド。灯里の従者。六麓学院侍従科所属。
 爆乳ながらも私に『好みのヒロイン』と言わしめた程のヒロイン。胸以外が好みなんじゃ……。
 礼儀正しく明るく優しく清楚。されど時折脳内ピンク色。それでいて実は暗い過去を持つ。そんなメイドさん、良くないですか?
 とはいえ、若干都合の良いヒロイン感が否めなかったのは若干残念かもしれないですね。恋心の発端が『寂しさを埋める温もり』だっただけに、依存性の高い恋愛感情になってしまったワケですから、仕方がないと言えば仕方が無いのですが……。仮に匠が浮気しても、抱きしめて愛を囁けば許してしまいそうな点が心配です。……いや、逆にヤンデレ気質になる素質もいちおう垣間見えたか……?

■『正宗 静流』:灯里のクラスメイト。六麓学院理事長の孫。
 暴力ヒロインではない正統派ツンデレ。一挙手一投足および多彩な口元の変化が非常に可愛らしいヒロインですが、そことは別に努力家なところや真っ直ぐなところが好印象なヒロインでもあります。
 ビジュアルの好みもさることながら第一印象ではかなり個人的本作上位ヒロインに君臨していた彼女ですが、内面も非常に私好みだったので、相当にぶっ刺さってしまいました。……本物の貧乳とはこういう胸のことを言うんやぞ……!
 そういえば、静流が本物の朱里を匠ではないと見抜けた根拠ってなんだったんでしょうね。握手しようとした時に気付いていましたけど……。手の豆とか……?

■『国広 ひなた』:匠の前の学園での後輩。六麓学院におけるクラスメイト。元重グループトップの孫娘。
 子供っぽい性格で純粋に良い子なひなたちゃんが好きです。それでいてけっこう気配りが出来るから尚良し。
 すぐに感情が顔に出てしまうのも好きですね。隠し事が出来ないというのは、一周回って外面が純粋に内面を表しているということでもありますから。多分現実における自分は女性から胸の内で大分蔑まれていると確信して生きているので、こういうヒロインに安心感を覚えるという節があるのかもしれません。
 エピローグで母親になっているのに相変わらずな体型だったのは個人的に嬉しいポイントでした。貧乳は一生貧乳でいてくれ……。

■『長光 麻夜』:朱里のクラスメイト。任侠家系の一人娘。
 外面は凛としつつも、本性は乙女なヒロイン。そのギャップによって、彼女の可愛らしさがよく引き立てられていたように感じました。
 彼女の抱いていた悩みは本作コンセプト(主人公が他人に成り代わる)とも紐付く内容であったため、そのような意味でも本作にとってかけがえのないキャラクターだったのではないかと考えております。
 一つ残念だったのは、彼女の持つ『理想(或いは”正義”)』のきっかけや経緯について作中で語られなかったことですかね(一応言葉の端々から考察することは可能ですが)。大義と呼べる理想を持つ分に越したことはないのですが、源流の所在まで明らかにしないことにはなかなか感情移入することも難しくなりますからね……。理想の源流についてまでシナリオ上で言及されていれば、さらに魅力的なヒロインになっていたのではないでしょうか。

■『三条 真琴』:朱里のクラスメイトであり旧知の中。デザイナーの卵。
 下ネタもいける系女子。友達にいたら楽しいタイプ。
 ゆずソフトさん、なぜ彼女のルートが存在しないのでしょうか? 致命的なバグだと思います。

■『長曾祢 虎鉄』:朱里のクラスメイト。麻夜の舎弟。
 麻夜のために行動するという行動指針が一貫していたので良いキャラクターだと思いました。
 それはそれとして、麻夜への気持ちの部分がルートによってブレていたので、その点は少し残念でしたね。ひなた√では真面目な場面で「麻夜への気持ちは恋心ではなく尊敬に近いから付き合いたいとは思わない」と言っておきながら、他のルートでは麻夜に対して自身に脈が無いことに意気消沈していたりします。
 『かけぬけ☆青春スパーキング!』の感想でも書いた気がしますが、複数ライターの場合、ライターさんはもう少し友人枠のキャラクター性にも気を配ってあげてくれ……。

■『源 茅明』:超一流メイド。
 クールで万能なメイド兼社長秘書。マジでシナリオ上でもハイスペックでしたね……。おそらく軍人上がりですし、圧倒的強キャラ……。やはりメイドはこうでなくては。
 それはそれとして、自身の趣味がバレそうになる場面などで柄にもなく動揺するギャップはグッときましたね。

■『兼元 朱里』:兼元家長男。兼元灯里の弟。匠と瓜二つの外見の持ち主。
 心が広くて純粋に良いキャラです。いくつかのルートでは匠の相棒と言っても良さげな仲にまで進展していますし、もっと匠との絡みが見たかったなという感想。静流√で匠をコピーするパートが特に好きです。

■『安綱 蛍』:朱里のクラスの担任教師。
 万年金欠で学生時代は数々のアルバイトを熟していたという点が匠と共通しています。加えて、作中で唯一年上の攻略ヒロインでもあります。これらにより、本作における攻略ヒロインとしてのポテンシャルの高さは窺えるのですが、その扱いの実態は個別ルートと称することすら烏滸がましい程取って付けた感満載のボリュームしかないルートシナリオ……。非常に不憫で勿体ないヒロインとなってしまいました……。
 個人的には年上よりも年下の方が好きなので、その観点からするとあまりダメージを受けてはいないのですが、本作をプレイした年上好きの方々はいったいこの惨状にどのような感情を抱いたのかお訊きしてみたいですね。

●テーマ・メッセージについて
人それぞれの本質
 個別ルート感想の方でけっこう語った気がするので、ここでは特に掘り下げる必要は無いですかね。
 要は、表面的なレッテルや建前にばかり気を取られるのではなく、相手の本質を見て自身の本質を表現することが大切ということを本作は伝えたかったのではないかと私は解釈しています。

おわりに


 『のーぶる☆わーくす』感想、いかかだったでしょうか。

 ゆずソフト最高傑作という噂に違わぬ良作で満足です。

 次にプレイする作品は────さて、何をしよう……。『SWAN SONG』か、或いは『サメと生きる七日間』か、はたまた『同人ing』か、それとも別作品か……。

 それでは✋