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ノベルゲーム感想と思考出力

『永遠に美しき冬よりも - It will be covered with the white.』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『永遠に美しき冬よりも - It will be covered with the white.』


 本作は、同人サークル『3on10』さんから2012年に発売された同人ノベルゲームになります。
 感想記事にこそしておりませんが、実はここ1~2週間は3on10作品をプレイしているんですよね。もしかしたら今後もいくつか3on10作品の感想記事を公開するやもしれません。
 さてさて、3on10作品と言えばコミカルなノリが楽しい作風ですが、はたして本作はどのように仕上がっているのでしょうか?

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 「——おめでとうございます、アナタは神様を掘り当てました!」

 都会と田舎、その中間に位置する、とある町。

 ユキオはその町に住む男子学生。
 大学受験まで、あとわずか。

 ユキオは幼馴染の千春と一緒に暮らしながら
 毎日、早朝の日課である雪掘りにいそしんでいた。
 そうして、ユキオは、雪の中から掘り当てた。

 「——おめでとうございます、アナタは神様を掘り当てました!」

 雪の中に埋まっていたソレは
 自らのことを『神様』だと……そう、言った。

 引用元

所感




~以下ネタバレ有~











総評


●シナリオについて
 所感にも書きましたが、良い話だったと思います。
 コミカルながらも感動させる部分は感動させる、言わばメリハリのしっかりとした作品でしたね。

 本作は、大切な人の死によって過去に囚われてしまった少年────ユキオと、そんな少年に想いを寄せる少女────千春の物語でした。それを踏まえると、本作で最も評価出来るのは『停滞した雰囲気』の描写であると考えられます。本作は、徹頭徹尾ほとんどが『停滞』した雰囲気に包まれていました。情報があまり開示されていない段階から、何とはなしにユキオたちの生活からえも言われぬ『停滞感』を感じられたんですよね。最初こそその停滞感は不快だったのですが、蓋を開けてみれば印象は逆転。ユキオの心は過去に喪った女性────美冬に縛り付けられたままですし、千春はそんなユキオを想い続けているワケですから、むしろ本作から漂う『停滞感』には納得の一言でした。素晴らしい。
 上記だけを聞くと、本作は非常に暗い作品であるかのように感じられるのですが、そこはさすがの3on10さんですね。上手い具合にコミカルを混ぜています。というのも、上述した通り停滞した少年少女の物語である本作には、その状況を打開するために神様が介入してきます。この神様がね、もーーー驚くほどにコミカル星人なんですよね。口を開けばオタク顔負けのマシンガントークを披露してくれる神様の存在は、少年少女の停滞を打開する役割として以外に、シリアスとコミカルのバランサーとしても役立ってくれていたように思いました。

 さて、本作には大きく分けて3つのエンディングが存在します。便宜上、それぞれをハッピーエンド/ビターエンド/バッドエンドとでも称しましょうか。
 ハッピーエンドは、亡くなったユキオの幼馴染兼千春の姉である美冬が神様の身体を借りて2人に寄り添うルートです。実質的なTrue√でもありました。こちらのルートでは停滞も打開されますし、そもそも停滞の種だった人物が期間限定とはいえ2人の元に戻ってくるワケですから、何もかもが幸せな終わり方でした。千春の想いも遂げられますからね。過去の冬の鎖を断ち切ったユキオがやっとこさ千春にも想いを向けるという構成からすると、本ルートは「美しき過去の冬よりもより美しき未来の春へと至る物語」であり、まさしく本作タイトルである『永遠に美しき冬よりも』を体現しているルートであったと言えるでしょう。
 ビターエンドは、美冬こそ帰ってきませんが、神様がユキオに本当の願いを自覚させ、停滞を打開するルートになります。「願いを叶える」という文言とは裏腹に都合の良い奇跡など無いままに、ただユキオの後悔に一区切りがつき、ユキオが再び前を向いて歩き出すという終わり方です。選択肢が封じられているので、1周目は強制的にこちらのルートに入る仕様になっていますね。最も神様のマシンガントークを聴けるルートでもあったでしょう。個人的には、大量の精液に塗れた神様を『雪に埋もれた死体』と称したライターさんのセンスに脱帽しました。神様の容姿が亡くなった美冬と重なる点からしてもドンピシャの表現だったと思います。
 バッドエンドは、停滞を打開できないルートですね。千春の想いを受け入れることはなく、美冬を救えなかった後悔を振り切ることも出来ず、エンディング後も『停滞感』を醸し出し続けていくことを感じさせる終わり方です。本ルートでもいちおう停滞を打開するチャンスはあったのですが、ユキオの心の持ちようによってはこういう救いの無い終わり方もあるのだという光景をまざまざと見せつけられましたね。
 3つのエンディングはそれぞれ三者三葉ながらも芯はブレていなくてどれも良かったのですが、個人的にはやはりビターエンドが好みでした。一抹の『救われなさ』を抱えたままに、それでも前へと進もうとする展開が好きなんですよね。何もかもが上手くいくよりは、一部上手くいかないながらもそれを抱えて前に進む的な。ちょっと苦みのある終わり方、良いと思います。
 そういえば、3on10のライターさんは『ツルゲーネフによろしく』あたりのあとがきで「マルチエンディングの作品を作りたい」みたいなことをおっしゃっていましたが、本作でめでたくそれが叶った形になるんですかね? ともあれ本作、それぞれのエンディングにそれぞれの良さがある『マルチエンディングのメリット』をよく活かした構成にはなっていたと思うので、そういう点でも良作であったと評価します。

おわりに


 『永遠に美しき冬よりも - It will be covered with the white.』感想、いかかだったでしょうか。

 他の完走済み3on10作品の感想も記事にしようかなぁ……。

 次にプレイする作品は、『マフラーな彼女』を予定しております。感想を記事にするか否かは分かりません。

 それでは✋