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ノベルゲーム感想と思考出力

『ラビっとはーと!』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『ラビっとはーと!』


 同人サークル『→Quantize_』さんから2017年に世に送り出されたフリーノベルゲームです。
 私も最近本作品の存在を識ったばかりなのであまり前情報は無いのですが、公式ページの様相や可愛らしいキャラクターデザインからはほのぼのとした雰囲気を感じられますね。ここ数週間のお仕事ですっかり疲れ気味な私の癒しとなってくれることを期待しております。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

 ちなみに、興味のある方は以下からDL出来ますのでぜひ!

www.freem.ne.jp

あらすじ


 気がつくとウサギのぬいぐるみに生まれ変わっていた主人公ラビ。
 おもちゃ屋で売られていた彼を、ある日6歳の女の子『成瀬陽葵』が買ってくれた。
 その日から、心を持ったぬいぐるみラビと元気いっぱいの幼稚園児陽葵の楽しい日常が始まった!

 引用元

所感




~以下ネタバレ有~











総評


●シナリオについて
 良作であったと評価出来ます。
 シナリオボリュームこそ小さいものの、本作には人を感動させるパワーがありました。特に何か泣かせる要素があったようにも思わないのですが、本作の内容は自然と心に染み入ってきて、そっと私の心をほぐし、いつの間にか涙腺を緩和させていたのです。その影響から、読後にはワケも分からず涙を流す始末。これまでの人生において、”泣きの理由が理解できるタイプ”の感動展開に涙腺ダムが決壊したり、凄まじい映像美やアツい展開の負荷で涙腺ダムが崩壊したりすることは多々ありましたが、今回のようにワケも分からないまま涙を流すという経験は非常に稀だったため、我が事ながら自分の身に起きた現象に戸惑いを隠せませんでした。

 本作の内容は、ぬいぐるみに転生した主人公が、何か出来るワケでもなくただただ少女の人生を見守り続けるというもの。それだけでも非常にユニークな作風で面白味があるのですが、本作はただただ物珍しい作風というだけでは終わらず、しっかりとその設定を駆使した物語として作り上げられていました。というのも、ぬいぐるみ視点で少女の人生をダイジェストに描写していく本作では、少女の成長に従って段々とぬいぐるみが少女にとっての『遊び相手』から『置物』に変化していく過程がありありと描写されていたんです。もしかしたら、これが誰か人間の視点であったならどうということも無かったのかもしれません。でもこれ、ぬいぐるみ視点なんですよ。めちゃくちゃ心が締め付けられるんです。自我を持つぬいぐるみとしての『寂しさ』と、少女の成長に対する『喜び』で板挟みになって、本当に心が苦しかった。ぬいぐるみである主人公の心情が描写されていたことも相まっているのでしょうが、本作は没入すれば没入するほどに共感して心が苦しくなる作品だったと言えるのかもしれません。そしてその極めつけが、少女が中学2年生になった終盤の出来事。少女が家に連れてきたボーイフレンドの心無い言葉によって、少女が「このぬいぐるみは捨てようと思っていた」と口走ってしまった場面。ぬいぐるみである主人公にどうしようもなく共感してしまっていた私は、主人公と共に心が引き裂かれるような錯覚を起こしてしまいました。しかしそれと同時に、仕方のないことなのかもしれないとも思いました。なぜなら、中学2年生ともなれば思春期の難しい年頃。いくら性格の良い少女と言えども、好きな男子の前では世間体を気にしてしまいます。結局少女はぬいぐるみを捨てず、むしろ自身の口走ってしまったセリフをひどく後悔している様子で、「あぁ本当に良い娘なのだな」と思いましたが、それはそれとして『どれだけ性格が良くても、一時的とはいえ”世間体”の前では大切なものをも捨ててしまえる人間性』というリアルをありありと描いていたのは心に響きました。
 では、はたして本作において何がそこまで私の心に染み入ったのか? 自分自身の胸の内を考察したところ、1つのポイントが浮かび上がりました。それは、『主人公の献身』です。本作において主人公は、たとえ少女に想いが通じなかろうが、思ってもいないことを人間側にでっち上げられようが、構ってもらえなくなろうが、捨てられる一歩手前にまで至ろうが、決して少女に対して文句を言うことはありませんでした。常に少女の笑顔を望み、少女の成長を喜び、少女の行く末を案じていました。その健気さに、私の心は打たれたのだと思います。しかし、ただ献身度合が高いだけで感動するほど私も安くはありません。本来の私であれば、主人公のこのような行為はむしろ『相手にとって都合が良いだけの自己犠牲』として吐き捨てることの方が多いと自己分析しています。では、なぜ本作において私が今回のような『自己犠牲』を受け入れることが出来たのか? それはきっと、主人公の『生前に対する心残り』が、ぬいぐるみになった後の『献身性』に紐づいているからです。ほんの少ししか語られませんでしたが、主人公の前世の最期は自殺で締めくくられたとのことでした。主人公の胸中で発されたいくつかのセリフも加味すると、これはつまり、辛いことがあっても誰にも相談できなかった、或いは相談をまともに聞いてくれる存在がいなかったことを意味しています。打って変わって、ぬいぐるみとして生まれ変わった主人公は、少女のことを見守り続けました。楽しそうに遊ぶ少女も、祖母が亡くなって泣いている少女も見守ったのです。そして、最終盤のちょっとした奇跡によって主人公と少女の意志疎通が叶った際、主人公は「これから先も辛いときは話を聞くから話しかけて」と少女を元気づけました。少女をこれからも見守り続けると誓ったのです。もうお分かりですね? そう、本作における主人公の献身性とはとどのつまり、主人公が生前にしてもらえなかったことを他者にはしてあげようという試みなのです。この『自己犠牲』は、ただただ相手にとって都合が良いだけの八方美人なモノでは決してなく、主人公の『エゴイズム』が意志に顕れたが故のものだったのです。つまるところ本作は、少女の成長をぬいぐるみ視点で描く物語であったのと同時に、ぬいぐるみとなった主人公がその献身性を以て自身の生前の心残りを清算する物語であったとも考えられるワケですね。このような自己犠牲であれば私も許せるというか、逆に胸を打つ要素になりえるのだろうなと。そのように自己解釈しました。

おわりに


 『ラビっとはーと!』感想、いかかだったでしょうか。

 近々、本サークルの他の作品もプレイしてみようと思います。

 次にプレイする作品は、おそらく『1人殺すのも2人殺すのも同じことだと思うから』になるかと思います。

 それでは✋