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『ヘンタイ・プリズン』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『ヘンタイ・プリズン』
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 かの名作『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?』を生み出したブランド『Qruppo』さんによる完全新作です。
 制作が匂わせられていた時期からずっと発売を楽しみにしておりました!! 『ぬきたし(=抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?)』が個人的には非常に刺さる内容だったので、本作にも非常に期待しております。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 ────”チューリップ・プリズン”。
 ここは、全国で「更生不能」と判断された性犯罪者のみが収監される監獄。
 幻の9つ目の矯正管区は、絶海の孤島に造られた脱獄不能の牢獄だった。

 東京に住む少年、湊柊一郎。
 警察につけられた二つ名は、「全裸マン」。
 彼は服という存在が許せず、全裸にならずにはいられない性質を持っていた。

 衝動的に、幾度となく命がけで露出を繰り返す日々。
 やがてイルミネーションの美しい日に、公然わいせつと公務執行妨害で逮捕された。

 法廷で自己弁護を行い、自らの露出は芸術であったと述べるが、決して理解されることはなく。
 警察への暴行と度重なる露出行為によって、判決は下った。
 言い渡された懲役は、10年。

 そして「更生不能」と判断され、チューリップ・プリズンへと投獄されたのだった。

 魑魅魍魎跋扈する牢獄で、露出狂は生き残ることができるのか?
 ”HENTAI”と呼ばれる性犯罪者たちの監獄は、決して楽園ではない────

 引用元

所感


 素晴らしい作品でした。
 面白さは言わずもがな、テーマとしても筋が通っていて読み応えがありましたね。没入出来るパートも非常に多いです。
 ここまでボリューム満点でありながら密度も高い作品は稀でしょう。それほどまでに高水準な作品だったと断言せずにはいられません。
 よくもまぁ、前作で凄まじいほどに上がったハードルを乗り越えてくれたものです。

~以下ネタバレ有~











各ルート感想


 攻略順は以下の通り。
 ノア√➡妙花√➡千咲都√➡グランド√
 

共通パート

●シナリオについて
 めっっっっちゃくちゃ面白いです。加えて、とにかく読んでいて楽しくもあります。
 共通パートだけで山がいくつも存在しているような感じ。その中で主人公も成長しますし、エロゲとしてヒロインとの仲を深める過程も蔑ろにしない。濃厚でありボリュームもある。その上、展開的なメリハリもしっかりしており、飽きないから没入度も高い。本当に導入としてよく出来た共通パートだったと思っています。

 展開に関しては、確かに上述した通りエロゲとしてヒロインズとの関係を深める側面もありましたが、どちらかと言えば『少年漫画的・特撮的展開』の方が近いのかなと感じました。具体的に言うと、悪役が出て来て、その悪役に主人公側が追いつめられ、結果として逆境から主人公が悪役を討ち倒すという流れですね。前作『ぬきたし』も展開的にはその気がありましたが、『ぬきたし』における敵は”悪役”というよりは”敵役”という表現が正しかったような気がします。敵側にも普遍的悪とは言い切れない信念がありましたからね。対して本作の共通パートでは、敵が分かりやすい”悪役”でした。そんな悪役を最終的に主人公が討ち倒すことでスカッとするみたいな展開です。だからこそ『特撮的』という要素も併せて上述したワケですね。この点、チープな”悪役”が嫌いという方からはあまり好まれない展開だったのかなとも思います。まぁ私はこういう展開も大好きなので満足なんですけどね。
 本作共通パートの盛り上がりポイントは、何と言っても各ブロックの終盤です。本作主人公は毎度ギリギリのところで勝利するんですよ。だからこそ肌がひりつくというか、逆境を跳ね返した時の興奮が大きいというか。共通パートの終わり方を見るに、まだまだ闘いは続くと思いますので、各個別ルートも楽しみです。

 「物故ろしてやるぜ、ベイビー」

紅林 ノア√

●シナリオについて
 面白かったです。ただ、共通パートと比較すると若干見劣りしますね。少なくとも、共通パートプレイ中に感じていた「中断したくない。やめられない止まらない」という気持ちは湧きませんでした。
 とはいえ、共通パート同様に盛り上がる『山』がいくつも用意されていたのは事実。ボリュームも満点で、普通のエロゲでは〆に入りそうな展開が新展開の幕開け的役割を果たしていた点には驚かされました。

 個人的に一番嬉しかったのは、本ルートが個別ルートだからといってヒロイン一辺倒になりすぎない内容となっていたことです。確かに本ルートの主軸にはルートヒロインである紅林ノアがいて、基本的には彼女との恋愛や彼女の抱える問題の解決が描かれます(というか、そうでなければ”個別ルート”とは呼べないでしょう)。しかしだからと言って、彼女ばかりに焦点が当たるワケではない。あくまでも中心にいるのは主人公とノアですが、サブキャラも惜しみなく活躍する。要は、個別ルートとしての必須要素をこなしつつ、ヘンプリという作品としても手を抜いていないと言いますか……。『個別ルートに入ると他のヒロインやキャラが全く登場しなくなる』というエロゲあるあるに抗ってくれていると言いますか……。まぁとにかく、私は個別ルートだからと言って他キャラクターを無視しないシナリオを評価しているということです。

 展開的に最も面白いと感じたのは、『脱獄準備パート』でしょうね。数々の制限の中で策を巡らせ準備を整えていく過程に、思わず胸が躍りました。
 逆に、終盤のアヘガオコンビ戦はあんまり……って感じでしたね。看守長クラスが相手にしては、あっさり上手く行き過ぎたようにも思えました。もう少し歯応えが欲しかったかな……と。今までどんでん返しが多かったので、尚更そういう展開を欲してしまいました。

 本ルートで最も印象に残ったのはやはり、ノアとソフりんの関係修復に関する展開ですね。あのどうしようもなく歪み隔たれた姉妹関係を、よくもまぁ修復させられたものです。要は、『互いに向き合う姿勢』が必要だったってことなんですよね。ノアは空想の中で思い描いた姉(ソフりん)しか見ていなかったし、ソフりんはそんな妹(ノア)に恨みを重ねこそすれ直接的に向き合うことは無く逃げてばかりだった。互いに今まで向き合うことをしなかったからこそ生まれた隔たりだったのでしょう。そしてそのことを互いに自覚し、向き合うことが出来たからこそ、関係性が修復できたと。この際、両名どちらもが成長しているのもまた良いんですよね。最終場面のソフりんからの手紙には感動しました。アレこそ、『歪み隔たれた似た者姉妹の物語』における集大成なワケですからね。
 ただこれ、他ルートでは解決しない問題なのかと思うと、若干気が滅入りますね……。これもエロゲあるあるか……?

 最後に、本ルートラストシーンから引用を1つ。

足並み揃えて歩くことができないから、オレとノアは塀の中で出会った。
その歩調がぴったりと合ったから、オレとノアは今ここにいる。

 この独白、めちゃくちゃ好きです。『主人公』と『ヒロイン』の関係性をよく言い表しているというか。柊一郎とノアに限らず、全ての恋愛物語における主人公とヒロインに通じるというか。
 ”こう在るべき”って感じですよね。”互いにこの相手でなければダメ”的な。

波多江 妙花√

●シナリオについて
 めちゃくちゃ面白かったです……!
 常に逆境の中での反撃という展開だった点が、中だるみすることも無く常時面白かった所以でしょうね。まさにこんなシナリオを読みたかったんだよ!!

 最も笑えたのはやはり『前★戯★王』パートでしょうか。ネタが分かれば分かるほどに笑えました。パロディの質が非常に高い点は、ぬきたしの頃からさすがですね。
 しかしこのパート、ただのパロディで終わるワケではなく、しっかりとシナリオに紐付いているんですよ。前戯王自体がその後の展開のための金策手法や交渉材料になっていますし、なんならアフターでは囚人たちのいざこざを解決する手法としてもプリズンで公認されていますし。パロディ元が好きな人々からすると、こうやってパロディ自体をシナリオにおける大切なピースとして扱われるというのは嬉しいでしょうね。

 終盤展開は非常に熱かったです。数多の読み合いの応酬から始まり、総力戦へと突入する最終決戦。知恵比べは互角で状況は振り出し。戦闘が始まれば、敵だった囚人と看守が背中合わせになる場面やそれまで動きを封じられていた味方が舞い戻ってくる場面と、少年漫画的に熱い要素が目白押しでした。個人的には勝利の決め手の一躍に小沢が貢献したというのが嬉しかったです。『波多江の"強肩"』という二つ名を見事に体現しましたね。

千咲都√

●シナリオについて
 とても面白かったです。
 ノア√・組長√・千咲都√の3つの中では、最も主人公の頭脳が光ったルートだったと言っても過言ではないでしょう。いえ、ハゲという意味では無く……。
 また、本ルートのメインエネミーだった夕顔に関しては、組長√で同情こそすれ基本的な言動を許すことが出来ない存在でもあったため、そういう意味でも本ルートではスッキリ出来ましたね。ノア√でもいちおう夕顔を失墜させていますが、アレはあまりにもあっけなかったので……。

 本ルートは、他のルートよりもボリュームが少なかった分、面白さを維持したまま駆け抜けるような展開になってくれていて、個人的には非常に嬉しかったです。特に、夕顔に原稿を人質に取られてからの展開は目覚ましく、よく出来た頭脳戦とまではいかないものの、数多の『駆け引き』に痺れるような内容となっていました。この点、本ルートにおける夕顔との闘いそのものが、文字通り主人公が『命』を賭けたギャンブルとなっていた点も面白い構成だと感じましたね。一つ一つのシーンに肌がヒリつきました。
 もちろん、さらに細かい展開────例えば賭場の運営の仕方なんかも読んでいて面白かったです。特に、金を儲ける上での理屈を明確にしてくれたのは大きいですね。この理屈を知っているか知らないかで、没入度は大きく異なったと思います。また、賭場に関する情勢の動きやそれへの対処方法もよく考えられていて、本当に隙の無いシナリオだなぁと感心しました。
 夕顔とのブラックジャックは盛り上がりましたね。勝負という観点からももちろん面白いと思えましたが、無意識のうちに夕顔の思考がギャンブルに飲まれていく過程も面白かったです。
 改めて考えると、あそこらの展開のほとんどが主人公の掌の上なんですよね……。凄いな主人公……。

 アフターではめちゃくちゃ笑いました。姉に小作り許可証を貰うためにお披露目セッ○スを行うとか、相変わらずぶっ飛んでいます。しかしこのように、エロシーンで笑えるというのも本作の魅力の一つなんですよね。私は基本的にエロシーンを退屈に感じる部類の人間なので、エロシーンも面白いというのは非常に嬉しいです。
 それはそれとして、主人公は最終的に頭脳で自由を手にした『ミスターアンチェイン』みたいになっていましたね。ビッグになったなぁ……。

グランド√

●シナリオについて
 非常に面白かったです。
 グランド√として相応しい集大成でした。

 グランド√が個別√における全ての問題を解決しつつその先へと至るという構成になっているのは、前作の『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?』と同様でしたが、本作ではかなり個別ルートとは異なる展開で問題を解決していく運びになっていたので、より新鮮な感覚で読み進めることが出来ましたね。
 中でも我妻樹里亜戦は、妙花√でのソレよりもいっそうヒリつく内容となっておりました。ソフりんを正気に戻すための野球大会も、他のルートには無い展開で面白かったですね。

 終盤展開はとにかく目が離せませんでした。
 やはりグランド√ということもあって、終盤は最も主人公の価値観や感情が揺さぶられるパートであったと言っても過言ではないでしょう。本ルートでは特に主人公の狂人性が際立っていましたが、それをしっかりとテーマにも紐付けた上で、『ヘンタイ・プリズン』という作品としても主人公の物語としてもしっかりと納得のいく形で解決にまで導いたライターさんの手腕には脱帽せざるを得ません。
 最終決戦でこれまでの主人公の行いが実を結び、囚人も看守も揃って主人公を救おうとする展開はとてもアツくて良かったですね。最終決戦が総力戦になる展開、大好きです。共通パートからずっとそうでしたが、本作の主人公は非常に我が強く、あらゆる未来を自身の力で切り開いてきました。ここまで高い『主人公性』を示す主人公も、エロゲの中では珍しいでしょう。そんな主人公だったからこそ、最後の最後で周囲のみんなから救われるという展開には納得出来るんですよね。たとえ最後は主人公自身の手でどうにもならなくても、自身が救われる展開を手繰り寄せたのは他ならぬ主人公であって、そこに文句のつけようなど無いのですから。
 個人的には、19班のヒロインズ三人があえてプリズンに助けに訪れないというのは非常に粋で良いなと感じました。主人公の脱走成功を信じて、ゴールである青藍島で主人公を待ち続ける……。ゲーム制作を再開する準備を整えて……。本当に最高の仲間ですよ……!
 ちなみにNLNS登場シーンでは声にならない歓声を上げました。前作キャラが助けに来る展開、あまりにも好きすぎる……。

 エピローグに関しては、ボロボロと涙が溢れました。やはりこういう話には弱いです。
 釘谷さんが救われて、本当に良かった……!

総評


●シナリオについて
 非常に素晴らしい作品でした。
 ボリューミーでありながらも退屈なパートが非常に少ないという密度ぎっしりなシナリオ展開。上げるところと下げるところのメリハリがしっかりと付いており、数多の『山(盛り上がりポイント)』を築き上げられた物語構成。独白中に裏でボイスを流したり上手く間を使ったりと、システムをも緻密に用いることで生み出された軽快なテンポ。深みを感じられるキャラクター達。巧みに織り込まれた、身近で考えさせられるテーマ。ふんだんに盛り込まれたパロディの数々。泣きポイント。何を取っても高水準であると断言出来ます。

 全体的に、物語の中心で最も躍動する存在が必ず主人公であった点も、非常に良かった点ですね。主人公が薄味になってしまいがちなエロゲという作品媒体において、これほどまでに『主人公性』を内包した主人公は貴重ですから。主人公は作品内で最も際立ってナンボでしょう。

 また、個人的には、キャラクター間において『価値観のぶつけ合い』こそあれど、他キャラクターによる『価値観の捻じ曲げ』は起こらなかったという点も評価したいポイントですね。もちろん『成長』による価値観の変異はありましたが、他者から価値観を押し付けられた結果、改心的な感じで自身がそれまでに貫いてきた価値観を捻じ曲げるという展開はありませんでした。夕顔や我妻が良い例ですね。彼女たちは主人公に敗れた後も自身を曲げませんでしたから。きっと、水城所長もその点は同様でしょう。思うところはあれど、きっと自身の信念は曲げていません。
 物語中でキャラクターに別の価値観や信念をぶつけ、元々の価値観や信念を曲げさせるという行為は、覆しようのない最大の『否定』ですからね。『成長』という要因以外でそのような展開があるのは好ましくありません。だからこそ、それをしなかった本作を私は評価します。

 あぁ、それと……。本作、エロシーンが読んでいて面白かったんですよね。エロシーンも楽しく読ませようというライターさんの意気込みを感じました。これ、個人的には非常に大きな評価ポイントです。
 エロゲのエロシーンって、わりかしアンアン喘いでばかりで退屈なことが多いですからね。もっとちゃんとエロシーンまで”読ませよう”としてくれる作品が増えてくれると良いのですが……。物語的にエロシーンが必要だと言い張るのなら尚更です。

●キャラクターについて
■『湊 柊一郎』について。主人公。通称:全裸マン。わいせつ房所属。
 非常に素晴らしい主人公です。個性があり、行動力があり、葛藤があり、抱えている闇がある。物語中ではほぼ常に事の渦中に身を置き、自らの意志と力で物語を動かしていく。必要な努力も惜しまない。並大抵の『主人公性』ではありません。『主人公性』の度合で言えば、『Fate/stay night』の衛宮士郎にも匹敵するでしょう。
 自己で完結し閉じた価値観と徹底した合理主義により、特にグランド√ではそのサイコパス性が際立っていました。蓋を開けてみればそれは『狂気』というより『幼さ』が原因だったワケですが……。彼の『成長』はとても見応えがありましたね。
 最終的に彼と関わった主要メンツはみんな彼によって救われているという構図、とても好き……。

■『紅林 ノア』について。ヒロイン。通称:ドローンガール。ソフりんの妹。わいせつ房所属。
 良い意味で飾らずさっぱりしたヒロインです。個人的には、きゃぴきゃぴ萌え萌えとしたヒロインよりは、こちらのタイプの方が断然好きだったりします。いや、萌えヒロインも好きですけどね。
 共通パートと個別ルート(ノア√)でのギャップには驚かされました。姉(ソフりん)のこととなると狂人度が突き抜けていたあたり、個別ルート序盤はわりかしドン引きしていましたね……。しかしだからこそ、姉と向き合い、己の罪を自覚してからの彼女は魅力的でした。
 陰毛 is good.

■『波多江 妙花』について。ヒロイン。通称:組長。波多江組組長。重大犯罪房所属。プリズンにおける囚人の顔役。
 ひたすらにカッコいいヒロインです。確固たる芯と人情があり、「この人についていきたい」と慕われるのも納得な魅力を感じました。
 しかしだからこそ、終盤における柊一郎の前での飾らない態度は良いギャップでしたね。ラストシーンのイベントCGは美しすぎた……。
 グランド√エピローグでは素の彼女も度々見られ、魅力発揮の一助となっていました。

■『千咲都』について。本名:黒鐘伊栖未。ヒロイン。通称:爆弾魔。更生不能房所属。
 ヒロインズの中では最も重い過去を背負っています。存在しているだけで虐げられる体質というのは、あまりにも残酷です。だからこそ、仲間との関わり合いの中でどんどんと明るくなっていく彼女には癒されました。今後の幸せを願いたいです。
 とりあえず笑い方がへたっぴで可愛い。

■『ソフィーヤ・シコレンコ』について。通称:ソフりん。ノアの姉。わいせつ房看守長。
 これほどまでに好感度がどん底からうなぎ登りだったキャラクターは久々です。ちなみに共通パートではこんなツイートをするレベルで彼女のことを許せませんでした。


 彼女は共通パートで、主人公の大切にしていた姉の写真を破り捨てたほか、熱でフラフラの主人公をそれでも尚危険な炭鉱で働かせようとしました。いくら囚人の躾という免罪符があるからとはいえさすがにやりすぎですし、後者にいたっては明確な殺人未遂です。だからこそ私はこんなツイートをするまでに至ったワケですね。なぜ彼女がここまで暴走したのかはノア√で判明しましたし、理由に納得もしましたが、その反面「そんな貴女だからこそ尚更やってはいけないことだったのではないか?」という考えも拭えず、依然として上記二点は許せないままです。
 しかしそれはそれとして、彼女の抱える悩み・劣等感や、不安定な精神が起因して暴走してしまう点から、私は本作中最も彼女に『人間臭さ』を感じました。そして、私は人間臭いキャラクターが好きです。そして、そんな人間臭いキャラクターが成長する物語はもっと好きです。ノア√の中で、彼女の成長はヒロインに引けを取らない程に魅力的に映りました。だからこそ、最終的には好きになれたワケですね。
 ノア√終盤でプリズンを訪れた元囚人が立派に更生している姿を目の当たりにして涙するシーンでは思わず涙ぐみました。
 ……思い返せば、なんだかんだ全てのルートにおいて味方に落ち着いてくれた存在でもあるんですよね……。完走した現在は、トップクラスに好きなキャラクターにまで上り詰めました。

■『我妻 樹里亜』について。通称:シスタージュリア、イカれたシスター。性犯罪房看守長。
 サイコパスを最後まで貫き通したキャラクターです。経歴は到底許されるものではありませんが、彼女はおそらく心の底から笑顔が『幸福』へと繋がると信じ続けたのでしょうね。なまじ悪気が無いから憎み切れないキャラクターでした。
 閉じた価値観と我を通すためなら手段を択ばないその性格から、物語中でも主人公と似ていることが示唆されていました。エピローグにおける彼女のセリフからしても、彼女は『プリズンでの出会いを経験できなかった湊柊一郎』だったのだろうなと思わずにはいられません。
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■『夕顔 葉月』について。通称:女王蜂、かんぴょう女。重大犯罪房看守長。
 本作キャラで唯一好きになりきれなかったキャラクターです。過去や境遇には同情せざるを得ませんが、やはり恐怖を感じるからと言って伊栖未を必要以上に虐げ続けたことだけは許せません。
 ただまぁ、悪いところも含めて芯のあるキャラクターなので、その点では好感が持てますね。
 とりあえず、親知らずのパートといいエピローグといい、ネタキャラとしては面白いのでFDが発売されるようならそこいらの要素強めで見たいですね。

■『小沢 翔也』について。親友枠。通称:波多江の狂犬(強肩)。性犯罪房所属。
 物語を進めれば進めるほどに株が上がる男。本作の中でもトップクラスに好きなキャラクターです。
 面倒見が良く情にも厚くて、とても良い兄貴分だと感じました。
 ホント、なんで序盤はあんな小物を務めていたんでしょうね……。まぁ、アレもまたプリズンで生きる術だったのかもしれませんが……。

■『水城所長』について。チューリップ・プリズン所長。
 ラスボスです。復讐心で視野の狭まった典型的な価値観の持ち主ですね。きっとモデルはTwitterに蔓延っているようなフェ〇ニストなのでしょう。
 娘さんのことは同情しますが、彼女の意見には同調出来ません。解決しなければならない”事”の原因は見誤らないようにしなければならないと改めて思いました。
 閉じた価値観を持ち、我を通すためなら手段を択ばないその姿勢は、さながら主人公や樹里亜のようだとも感じましたね。

■『樋口 絵理子』について。プリズンのお医者さん。
 彼女がいなければ、主人公はどこかで破綻していたかもしれません。良くも悪くも、それほどまでに主人公にとっては重要なポジションに存在したキャラクターであると考えられます。
 ただ優しいだけの存在に留まらず、むしろその優しさに業を背負っているというキャラ構造が深くて良かったなぁと。

■『山岸 姫瑠』について。わいせつ房看守。頭青藍島。
 ドが付くほどの馬鹿と煩悩が災いの元なだけで、根は真面目で純粋であることが伝わってくるキャラクターです。時には行き過ぎることもありますが、寄り添うときには寄り添ってくれる憎めない存在なんですよね。
 グランド√後、彼女が看守長としてどのように勤め上げているのかはとても気になりますね。
 それと、FD発売が決定した暁にはぜひ青藍島に訪れた彼女の反応も見てみたいです。

■『釘谷 譲二』について。情報屋兼調達屋。青藍島出身者。
 まさかまさかの〆を務めるキーパーソン。ここまで泣かせるキャラになるとは思いもしませんでした。
 情報屋や調達屋であり続けたのは、誰かに必要とされたかったから。プリズンから出たくなかったのは、誰からも必要とされなくなるのが怖かったから。つまり、彼もまた、自身の『存在証明』に躍起になっていたワケです。
 内通者であり、水城所長の生徒一号でもあったあたりも加味すると、彼は裏の主人公だったとも言えるのかもしれませんね。
 主人公に憧れてか、エピローグラストで坊主になっていたのめちゃくちゃ好きです。

■『櫛森 日和子』について。通称:クソ森。わいせつ房所属。突き抜ける程のクズ。
 一周回って好きですね。よくもまぁここまでクズキャラを貫けたものだと。
 彼女の周囲のキャラクターが逞しすぎて、全く上手く立ち回れていなかった点で笑えました。

■『花丸 凛』について。青藍島出身者。
 前作にも登場したあの花丸妹です。クズさは健在。そのやりすぎ具合には怒りを覚えるレベルでした。
 しかしまぁ、終盤は柄にもありませんでしたね。弟が出来たことで、何か心変わりがあったのかもしれません。これもまた、彼女の成長なのでしょうか。
 個人的にはてっきり、『主人公が橘淳之介に少し似ていたから』という理由で力を貸したものと思っていたのですがね。常に世界の中心にいたいと思っている彼女は実は、我を通して島を変えて見せた橘淳之介に潜在的な憧れを持っているのかなーとか考えたりもしました。

■『三羽烏』について。波多江組の側近三人組。花田・下沼・梅津。
 全員気の良いキャラクターで好きです。花田は荒々しくも気遣いが出来ますし、下沼はデータのあるシューベルトみたいで面白いですし、梅津もさっぱりとした気持ちのいいキャラクターでしたからね。
 だからこそグランド√で彼らが洗脳された際には、一抹の寂しさを覚えました。

■『太田部夏海』について。特別警備隊筆頭。青藍島出身者。元SS一番隊所属。
 元SS一番隊隊員らしい脳筋。しかし純粋で良いキャラクターでした。
 夕顔への忠義臣たるや、まるで犬のよう。

■『NLNSメンバー』について。前作主人公と愉快な仲間たち。
 グランド√終盤でこんなにもガッツリと登場するとは思いませんでした。立ち絵こそなかったものの、ファンとしては非常に嬉しかったですね。
 10年経っても相変わらずみんな元気そうで何よりです……!

■『モブキャラ』について。
 本作のモブキャラは非常に大切に扱われていた印象を受けました。使い捨てのモブキャラはほとんどいなかったのではないでしょうか?
 炭鉱夫の仲間たちや正の字は、状況に抗って味方になってくれる場面もそれなりにあったので好きですね。
 面白さ的にお気に入りのキャラはトートロ爺と遊郭です。特にトートロ爺のセリフは軒並み笑いました。こういうシンプルなネタが案外クリティカルに笑いのツボを刺激してくるんですよね。

●テーマ・メッセージについて
自己表現による存在証明
 本作の根幹にあるテーマであり、主人公の指針でもあると考えられます。
 何らかの手法で自身を表現することで他者(或いは世界)に認知され、それによって自身の存在が証明されるのだということですね。自身の存在を証明出来なければ、生きているとは言えないとも。

「僕はただ、ここで生きていると、叫びたいだけ────」


閉じた世界からの脱却
 平たく言えば、『相手を尊重しよう』。より具体的に言えば、『他者の立場に立って考えられるようになろう』ということ。
 自分の世界に閉じこもっていては、誰の声も届かない。
 視野を広げ、他者を知り、自分以外の声に耳を傾けよう。
 そして、決して独りよがりにならないようにしよう。

おわりに


 『ヘンタイ・プリズン』感想、いかかだったでしょうか。

 そういえば本作、どういう位置づけになるんでしょうね。完全新作とも言えますし、ぬきたしのスピンオフ作品とも言えるよなぁとか思いました。

 次にプレイする作品は、『グリザイア ファントムトリガー』を予定しております。

 それでは✋