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『AMBITIOUS MISSION』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『AMBITIOUS MISSION』


 『SAGAPLANETS』さんから2022年5月に発売された最新作です。ついに来ましたね、サガプラさん×さかき傘先生。『金色ラブリッチェ』以来です。
 個人的に『金色ラブリッチェ』はとても面白いと思えた作品だったので、本作にも期待を寄せております。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 沙幌市────。
 その街にはひとつの言い伝えがあった。
 『アンビシャス』と呼ばれれうその12の星全てを手にした者は、あらゆる野心を叶えられるという……。
 そしてそれを追い求めるものが一人、今宵も沙幌の街に姿を現す────。

 『予告状
  今宵、この街の綺麗な星空をちょうだいします
  怪盗ミスアルテ』

 怪盗ミスアルテの犯行現場に、たまたま居合わせた主人公『根津御影』。
 ひょんなことからその正体を、クラスのお嬢様『有瀬かぐや』だと見抜いてしまう。

 「周りの人にバレてしまう可能性は少しでも排除しないといけない。だから────盗んでみせるわ。私があなたのハートとため息をね」

 正体がバレたくないかぐやは、自らの野心を叶えるため作った怪盗部に御影を引き込もうとするが、なかなかうまくいかない。

 そんな時、御影の生まれ育った『孤児院』が窮地に陥る。
 そこに現れたミスアルテは、隠されていた『真実』を暴き、孤児院をいとも簡単に守ってみせた。
 優雅に、そして華やかに。

 「泥棒とはちがうっていうのか?」
 「ええ、見る人のハートを盗み、そして、みんなのため息を盗む。それが怪盗よ」
 「わかった。俺も手を貸そう。あんたの『野望』とやらに」

 『怪盗ミスアルテ』と『怪盗ミッドナイト』
 ふたりの怪盗が手を組んだその時、沙幌の夜に覆い隠された『真実』をめぐる舞台の幕が上がる────。

 引用元

所感


 程よく面白かったとは思います。ただ少なくとも、展開的には突出して面白かったとまでは言えませんね。
 物語構成やテーマ/メッセージが良かっただけに、惜しいなぁと。
 ちっちゃいことは気にするな系のコメディ作品なので、息抜きに楽しい作品をプレイしたい方にはオススメかもですね。読みやすい部類でもあるので最適かと。

~以下ネタバレ有~











各ルート感想


 攻略順は以下の通り。
 虹夢√➡弥栄√➡かぐや√➡あてな√

 

共通パート

●シナリオについて
 うー--ん……。可もなく不可も無し。読んでいてほぼ不満はありませんが、突出した満足感も無いという感じです。
 主人公がひょんな出来事から怪盗の一味となり、それに伴って街の裏で蠢く陰謀がどんどんと明らかになっていく過程はたしかに面白いと思いました。展開も、多少のツッコミどころはあれど、それなりに丁寧でしたからね。その点も良かったです。(ちなみにツッコミどころは、主人公を怪盗部へ勧誘する一連の流れです。主人公の信条的なモノが短時間で一転していてなんだかなぁと)
 ただ現段階では、未だ主人公が展開に対して受け身に徹している印象を受けるのもまた事実です。その点が少々物足りない点ですね。実際にシナリオ内でも主人公は「犬」と呼称されておりましたが、まさしくその通りであると感じました。今後の個別ルートにて、主人公が能動的に物語を動かしてくれると嬉しいのですが……。

本郷 虹夢√

●シナリオについて
 うー-ん……テーマ的には面白いと思いましたが、展開的には不満という感じですね……。

 テーマについては<総評>の<テーマ・メッセージ欄>で記述するのでここでは割愛しますが、『数字と価値』について考えさせられる良いテーマであったと思います。

 展開については、大きく盛り上がるパートが無かった上に、主人公がほぼ展開に流されて動いているだけの『主観者』でしか無かった点で不満に感じた次第でした。悩む虹夢を連れ出したパートはとても良かったのですが、それ以外では特に主人公が能動的な行動で”魅せた”展開は無し。本ルートで最も大きな魅せ場だったであろう南句先生の説得パートでも、説得に貢献したのはほぼ虹夢。主人公はといえば、南句先生を唆した根津与吉に反論出来るワケでも無ければ、唯一返せた言葉も主人公自身の言葉ではなく有瀬あてなの受け売り。虹夢の悩みに関してだって、確かに解答の『根拠』としては『虹夢から主人公への愛』が挙げられるものの、あくまでも解答の『決め手』となったのは有瀬あてなの言葉であるため、主人公が虹夢の悩みを解決してあげられたとも言い切れない。総じて、主人公からは『我』がほとんど感じられないんですよ。主人公として強く持っていて欲しい『意志』が見受けられないんです。そんなこんなで、本ルートのシナリオは、完全に主人公が『主観者』に徹する展開になってしまっていたというワケですね。その点がひたすらに残念でした。主人公が味気無い物語は、他の要素が相当秀でていない限り面白いとは感じられませんからね。致し方なし。

石川 弥栄√

●シナリオについて
 まぁまぁ面白かったです。

 序中盤は展開的に「この話、どこに向かってんだ……?」と不安でしたが、終盤でなんとか面白くなってくれて良かったなぁと。特に、テレビ塔解体パートはアツかったですね。ヒロインである弥栄ちゃんが盗人として一皮向けたことに加え、珍しく主人公が能動的に活躍したこともあって、手に汗握ることが出来ました。
 内容に関しても、ヒロイン────弥栄ちゃんが夢を目指して成長する物語としてはそれなりによく出来ていたのではないかなと。目指していた姿が『伝統的な石川五右衛門』ではなく『憧れた母の姿』であったというオチも個人的には好みでした。

 ただまぁ、本ルートでも相変わらず、上述したパート以外における主人公がただ展開に流されるだけの『主観者』だったため、その点が非常に残念ですね。加えて、クマ監視パートではまるで「Excelの自動計算を信用できないからその計算結果が合っているか否かを電卓で確認する人」の如く努力の方向性を間違えていたり、VSクマパートでは真っ先に駆け付けたくせにクマ相手に何も出来なかったりと、良いところなしでしたからね。弥栄ちゃんの失敗続きも、実際は主人公の尻拭いをし続けたことが原因ですし(さすがにこれは主人公にも自覚があったようですが)。逆に、あの展開でよく弥栄ちゃんは主人公のことを好きになったなと。

有瀬 かぐや√

●シナリオについて
 面白かったです。さすがはセンターヒロイン√。

 正直、展開的には特に真新しさも無くよく見るタイプでしたし、それに伴って語られるメッセージもありきたりではありました。しかし、共通パートの時点から様々なキャラクターのセリフで示唆されていたメッセージなだけあって、それを体現する展開もまた力が入っているなぁと感じられました。というか、やっぱり何度見てもこういうのが好きやねんな、私。
 メッセージに関する詳しい話は<総評>の<テーマ・メッセージについて>に記述します。

 それはそうと、本ルートでも相変わらず主人公が主人公らしかった一面はあまり見受けられませんでしたが、1場面のみ主人公をカッコイイと感じることが出来る場面がありました。それが、かぐやへの告白シーンです。以前から本作の主人公にはキザったらしい一面があるとは思っていましたが、本場面ではそれがカッチリとハマって良シーンへと昇華されていたなぁと。厳密に言うとかぐやはもっと以前から主人公のことを好きだったようですが、それはそれとして精神が弱っている際にこんなこと言われたらそりゃ恋に落ちますよね。
(まぁ、結局その後はほぼかぐやが自己解決したような流れでこそありましたが……。もちろん主人公の存在自体が鍵ではありましたけど)


有瀬 あてな√

●シナリオについて
 やはりグランド√と言うだけあって面白かったです。

 メッセージに関してはかぐや√で掘り下げられたモノと同様でしたが、本ルートではより広く視野を広げて深く考えさせるような物語構成となっておりました。これでもかと言わんばかりにライターさんの込めたかったメッセージが伝わってきた点は大きく評価したいな、と。

 展開に関しては、要所要所の纏まりが綺麗だった点は素直に評価したいですね。特に、主人公がかぐやにハートとため息を盗まれたところから始まった物語が、逆に主人公がかぐやのハートとため息を盗むことで終結するという物語構成は、非常に美しい構成であったと感じました。
 これまでのルートとは打って変わって、終盤には主人公が能動的に展開を動かす場面が盛りだくさんだった点も嬉しい限りでした。やっと『主観者』兼『展開の奴隷』兼『犬』から脱却出来たか、と。やはり主人公とはこうでなければ。
 ただ、悪い点を挙げると、アレクレピオスの設定周りが粗く、展開が若干無理矢理気味であった点は非常に気になりました。不可解点の詳細は<不可解点>にて後述しますが、とにかく本作には共通パートにおける主人公説得シーン含め、展開に若干無理のある箇所が散見されたのが欠点だったなと。まぁ、整合性を取るのは難しいっちゃ難しいですよね……。
 あとこれはもう『エロゲ』であることの呪いなのかもしれませんが、あまりにも変なタイミングでエロシーンを挟まないで欲しいと思いましたね。追われている身でそんな余裕も無いのに、普通にのんびりあてなさんとヤり始めた時にはどうなることかと思いましたよ。せっかく展開の流れが良さげだったのに、そこでいったん切れてしまったのは非常に残念でした。こんなことになるならいっそのことエロシーンは省いてくれた方が良かった。こういうことがあるから度々『エロ要らない論争』なんて起こるんだと思います……。
 まぁそれはそれとして、〆方は良かったので、良い読後感ではありました。終わり良ければ総て良しとまでは言いませんが、とりあえずはOKかなぁ、と。最後に登場キャラのその後を一通りチラ見せして終わるの良いですよね。

 

総評


●シナリオについて
 正直、評価が難しい作品です。
 全体を通して面白かったか否かと問われれば、そこそこ面白かったとは言えます。テーマやメッセージも非常に強く伝わってきたため、ライターさんの思想が多分に篭った作品であることも感じられました(テーマ/メッセージの詳細は後述)。〆方や物語構成的な纏まりも良い方だと思っています。
 ただそれはそれとして、気になる点がチラホラと印象に強く残ってしまったことも事実。特に、展開や設定のところどころに無理が散見される点や、イマイチ怪盗パートに緊張感を覚えられない点はマイナスポイントかと。前者に関しては、ライターさんが描きたい展開を継ぎ接ぎした結果なんだろうなぁということを何となく察しました。俯瞰してみれば綺麗な物語構成だけれども、よくよく目を凝らしてみれば展開や設定の”粗”が目立つという点からそう解釈した次第です。描きたいことが先行してしまって、整合性が取りきれなかったのかもしれませんね。後者に関しては、もう少し頑張ってほしかったかなぁと。さすがにあてな√の最終決戦は盛り上がりましたが、それ以外は基本的にワンパターンで、全く緊張感を覚えられない”茶番劇”でしかなかったと言わざるを得ません。いや、たしかに一連の騒動では怪盗部サイドがエサとして泳がされていただけのマジ茶番ではありましたし、怪盗は見る人のハートとため息を盗むエンターテイナーでなければならないという信条がある以上、なるべく愉快な雰囲気で盗みを働かなければならないということも理解は出来るのですが……。それはそれとして、少なくともこれを物語として読んでいる私個人としては、もう少しコメディとシリアスのメリハリをつけてくれた方が、よりエンターテインメントとして楽しめたのかなぁと感じました。この点、ジャンル的に言えば、『ルパン三世』が理想的な例であると考えられます。

 あと気になった点は、大きく分けて2点。一つが『パロディのクオリティ』、もう一つが『主人公の活躍の少なさ』ですかね。
 パロディに関しては、私個人は程々に笑えたので特に不満はありませんが、やはり同年に発売された『ヘンタイ・プリズン』をプレイした後だとどうしても見劣りしてしまいました。これはあくまでも私の個人的な考察ですが、パロディって”ただネタを使用するだけ”では弱いんですよね。上手いパロディというのは偏に、”どれほど自然に自身の作品へ外部のネタを落とし込めるか”という点が肝であると考えています。先述した『ヘンタイ・プリズン』然り、パロディのゴミ捨て場宝庫である『銀魂』然り、ある程度上手く自身の作品にネタを落とし込んでいるからこそより笑うことが出来るという仕組みになっているのだと思います。対して本作で用いられた作品はどれもそのような工夫はなく、ただネタとしてそのまま作中で使用されただけ。言わば、Twitterでそこいらの人間が語録を用いて会話しているのと何ら変わらないワケです。さかき傘先生は『金色ラブリッチェ』も併せて見るに、パロディは好きだけど上手く扱えていない気があるので、そこが改善されるとまた日常パートが一皮剥けたコメディへと昇華されるのかもしれませんね。さて、偉そうに語る私は何様なのか。いや、ホントすみません。

 主人公の活躍の少なさについては、私が本作で最も不満だった要素です。さすがにグランド√であるあてな√の終盤では能動的に行動して見事な活躍を魅せてくれましたが、それ以外の場面ではほとんどただの『主観者』兼『展開の奴隷』だったワケです。基本的にはその場の流れや誰かの支持で行動し、時たま活躍の場面がやってきても結局何も出来ず誰かに助けてもらう。正直、非常に薄味な主人公だと思っていましたし、今もその印象は変わりません。主人公が能動的に展開を動かすことで活躍するということをしない物語は、やはり読んでいてもどこか拍子抜けなんですよね。それが許されるのは群像劇だけというか。本作はその分テーマ/メッセージに秀でていたので±0で楽しめたかなぁという感じですが、あてな√終盤の魅力が他のルートでも発揮されていたらもっと評価は上がっていたものと考えております。

 そういえば、本作って『金色ラブリッチェ』と同じ世界観なんですね。露骨に『金色ラブリッチェ』のキャラクターに関する情報が端々に出てくるなぁと思っていたら、最終盤にてシルヴィと理亜が立ち絵&イベントCG有りで登場して笑っちゃいました。いや出てくるんかーいって。クロスオーバー大好きおぢさんとしてはニッコリ。それにしても、理亜がいるということは……。

●キャラクターについて
■『根津 御影』について。怪盗ミッドナイト。旧:不破 沙取(怪盗ファントム)。
 全体的に見れば薄い主人公でしたが、最後の最後ではよく魅せてくれたなと。
 普段からなかなかセクハラオヤジ臭いのはどうかと思いましたが、必要な場面でキザなセリフを吐いても違和感の無いキャラという点は一つの魅力なのでしょうね。

■『有瀬 あてな』について。怪盗ミネルバ。かぐやの姉。
 脚が動かない身でありながらお転婆でパワフル。されどお上品で気さくなお嬢様。非常に好みのヒロインでした。
 表情がコロコロと変わるのが本当に良いですよね。
 かぐやとあてながタッグで盗みを働く後日談なんかも読んでみたいですね。FDに期待かな。

■『有瀬 かぐや』について。怪盗ミス・アルテ。あてなの妹。
 罪悪感によって、ある意味運命という柵に囚われ続けていた存在。彼女が別の世界戦において自身の手の中にあったモノの価値に気付くシーンは、演出も相まって見入りました。
 裏表のギャップも良いですが、にへらーって表情も良いですよね。

■『石川 弥栄』について。第十五代石川五右衛門忍者。
 憧れの存在である母親を目指して、何度躓いても立ち上がる健気さにキュンとします。
 ノリが良いのも魅力ですよね。こんな後輩兼お隣さんが欲しい人生だった……。

■『本郷 虹夢』について。読モ。怪盗たちのメイク担当。
 ポジション的に仕方が無いのでしょうが、ことあるごとに蚊帳の外で若干可哀想ではありましたね。
 農家の手伝いに勤しむギャルとかいうジャンル、とても良いと思います。

■『根津 与吉』について。黒幕。根津ファイナンスの頭。霊元の義弟。
 正直、本作中で最も感情移入したキャラクターです。たしかに自身の利益のために多くの人々の生活を脅かした点でいえば社会的に悪ですし、根底にあるのが復讐心ともなれば到底彼の行いを正当化することは出来ません。しかし、あれほどまでに金に執着していた彼が本当に心の底から欲しかったモノは、既に亡くなってしまった姉お手製レシピのクッキーだったという点で、泣きそうになりました。アレクレピオスで主人公が過去に戻った際、チラっと不破沙雪が言っていましたが、おそらく根津与吉という男は本来このような外道では無かったんですよね。彼を悪鬼に変えたのは、彼の姉である沙雪を不当に扱った老人たち。であれば、彼を憎み切ることは出来ません。

■『小林 つばめ』について。かぐやの従者。女装の似合う男の子。
 とても可愛らしい。ジト目(?)差分好き。FDあったらルートくれませんかね?

■『カリストー・ミドヴェーチ』について。先生。かぐやのボディーガード。
 ポンコツ具合が面白かったですね。

■『シャルロット・ディ・カーブホーン・イェーズ』について。探偵。ソルティレージュ出身者。
 彼女だけなんか『ドラゴンボール』の世界の住人と化していたのはクスっと笑えました。まぁ、ソルティレージュ出身だしそういうこともあるか……(思考放棄)。  というか、なぜ彼女のルートどころかエロシーンすら無いのか……。てっきり弥栄ちゃん√の3P枠は彼女だと思って期待していたのですがね……。FDでルートが欲しいです。

■『根津 美春』について。根津院における主人公の義姉。
 良い姉という印象。好きなキャラクターです。
 どことなく包容力を感じるんですよね。FDあったらルートくれませんかね……?

■『不破 霊元』について。数学者。Fコイン開発者。沙取の父親。
 本作の中心人物の一人ですね。本作中で最も手の中にあった色んなモノを失ってきたからキャラクターだからこそ、本作のメッセージが彼発生であることに厚みを感じるんですよね。

■『有瀬 幌子』について。インターポール所属。かぐやの叔母。旧姓:不破。霊元の娘。沙取の妹。旧怪盗部メンバー。ブロフ保持者。
 かぐや一味を泳がせているのはどう見ても明らかでしたが、それはそれとしてこれほど中心人物であるとは思ってもみませんでした。
 つかこの見た目で推定四十路……? イける……。

●テーマ・メッセージについて
自分の手の中にあるもの(人生と現在)を見失わないこと
 有瀬かぐや√およびグランド√(有瀬あてな√)で語られたメッセージでありながら、本作の根幹を成すメッセージです。
 自分の人生とは、良くも悪くもかけがえのないモノ。失ったものもあれば、失った先で手に入れたモノもある。同様に、手に入れたものもあれば、手に入れた先で失ったモノもある。それら全てを引っ包めて『運命』と称する、と。
 己の世界における自分にとっては、その世界で歩んだ人生こそが最高なんですよね。だからこそ、失ったモノばかりに目を向けて自分の手の中にある『人生』や『現在』を取りこぼしてしまえば、その先に待つのは空虚。手に入れたモノと引き換えに失ったモノへの寂寥感。失って初めて気付く”大切なモノ”の存在価値。かぐや√では別世界のアレクレピオスを使用することでやり直しが効きましたが、きっと取り返しのつかない場面だって多いのだと思います。だからこそ、『自分の手の中にあるもの』を常に見失わないことが重要なのでしょう。その手の中にある大切なモノを取りこぼしてしまわないように。

 このメッセージ、私の好きな作品だけに絞っても、少なくとも3作品で似たようなことが語られているメッセージなんですよね。ちなみに該当する作品は『Fate/stay night』、『虚構英雄ジンガイア』、『アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ』の3作品です。なので、別段真新しいメッセージではないのですが、「自分が辿ってきた人生は何も間違っていないんだ。かけがえのないものなんだ」と再確認させてくれるメッセージという点で非常に好みのメッセージなのです。おぢさんニッコリ。

数字と価値
 本郷虹夢√のテーマですね。
 ルート中でも何度も使われた「世界は数字で支配されている」というセリフ。それを起点として掘り下げられるのが本テーマとなります。
 たしかに、世界(社会)は『数字』無しには回りませんよね。何をするにも数字は付いて回ります。そういう意味では、世界は数字に支配されていると言っても過言では無いでしょう。また、数字は『価値』を測る上でも多用されます。それは例えば金額であったり、星の数であったり、登録者数であったり。それらは形こそ様々ですが、数字であるという点は同じです。そして、大抵の場合それらの数字は、大きければ大きいほどに「価値がある」とされます。
 では果たして、そんな数字を『絶対的な価値』としてしまって良いのかと一石を投じたのが、虹夢√シナリオだったワケですね。虹夢√シナリオでは、最終的に『愛』を根拠として「”世界”は数字に支配されていても、”自分の頭の中”は数字に支配されていない」という結論に至ります。これは要は、「他者に価値を伝えるために必要なのが数字であって、数字こそが個人にとっても絶対の価値であるとは限らない」という意味であると解釈出来ます。順序が逆なのでしょうね。『数字➡価値』ではなく『価値➡数字』なのだろうなと。
 総じて、本テーマから最終的に得られたメッセージとしては、「自分の内にある『価値基準』をこそ大切にすること」が挙げられます。私自身は言われるまでも無く常日頃から抱いている考え方ではありますが、流されやすい日本人には必要な考え方だよなぁと改めて感じました。

 ただそれはそれとして、これってあくまでも主観的な解でしか無いんですよね。現に、グランド√における根津与吉の「世界は数字に支配されている」関連の言い分は的を射ているように思いました。結局そんな根津与吉へのアンサーは「自分の手の中にあるものを守るため、それを脅かす者と戦う」だったので、やはり社会における「世界は数字に支配されている」という言い分は覆しようの無い真理なのだろうなと。

不可解点

●アレクレピオスの設定について
 正直、纏めるのが面倒くさいので、プレイ中のメモだけ記載させてください。
 気が向いたら清書します。

……管理基盤のアクセスキーがヴロフに記された電子レコードのみを基に設定されていたとしたら?
そうであれば、たとえ元々ブロフに記された電子レコードとアレクレピオスに刻まれたアイヌの子守歌が同一のものであったとしても、ヴロフをすり替えることでアレクレピオスの音階とヴロフによって管理基盤に設定された音階に差異が出る。(電子レコードがFコインのアクセスキーになるのはすり替え後だから) 0時間(静寂)+アイヌの子守歌でなければ成立しなかったアクセスキーが、誰にも出せない音階になる。
でもこれパラレルワールドに移っていないし、そのことを持ち帰ったヴロフが書き換わっていないことで確認しているあたり、歴史改変も行われていないってことだよな?
というか、歴史改変が行われるならそれはパラレルワールドとして現れるハズだし。
んんんんん????
この世界では”この時点から”歴史改変が適用されているってこと?? ワンチャン個体の時間巻き戻しってんなら分かるけど、これはまた違うでしょ……。それともこれも個体(管理基盤)の時間巻き戻しに該当するのか??
仮に過去を変えたことで遠回しに管理基盤を個体として巻き戻せたのだとしても、少なくともこの世界線上には幌子が書き換えたブロフの電子レコードが管理基盤のアクセスキーとして登録されたタイミングは無いから不自然。書き換えた電子レコードが登録される時点で世界線は分岐するのだから、やはり個体として管理基盤を巻き戻せたのだとしても、幌子が書き換えた電子レコードがアクセスキーとして登録された管理基盤になっていることはこの世界線上ではあり得なくないか??
……というか、この設定が仮にまかり通るとして、パラレルワールド化との区別がよく分からん。


おわりに


 『AMBITIOUS MISSION』感想、いかかだったでしょうか。

 とりあえず、シャル√と美春√とつばめ√で構成されたFDを寄越せ。私からサガプラさんへの要求は以上だ。

 次にプレイする作品は────あー、ちょっと中断していた『D.C.P.C.』を再開しようかなぁと思っています。もう春では無いのですがね……。

 それでは✋