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『天使☆騒々 Re-BOOT!』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『天使☆騒々 Re-BOOT!』


 言わずと知れた商業ブランド『ゆずソフト』さんから、2023年4月に発売された作品です。同ブランドのフルプライス作品としては3年ぶりの新作になりますね。オープニング映像が完全アニメーションであったことからも、本作にはかなり気合が込められているように見受けられます。
 『転生』という昨今の流行を取り入れた上でファンタジー色の強い本作ですが、はたしてどのような物語が展開されるのでしょうか?
 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 いつも通りに起きて、いつも通りに通学し、いつも通りに授業を受ける
 今日も変わらぬ、平穏な日常が流れていく——
 そう、思っていたのに……

 「天から使命を下された“天使”。それが僕だ」

 突然、どこからともなく目の前に舞い降りた、自称天使の女の子
 真っ白で大きな翼を広げる美しい姿で、彼女は言う

 「谷風李空(たにかぜ りく)——僕は君に会いに来たんだ
 “魔王”の生まれ変わりである、君にね」

 前世は異世界の魔王
 それを理解するよりも早く、次から次に騒ぎが押し寄せる

 前世返り
 異世界からの来訪者
 そして——

 「なんで? え? なんで? いや、だって……えぇぇ……?」

 いつも通りの日常を失い、一緒に大切なモノも失ってしまった谷風李空
 彼の新たな日々が、今始まる……?

 引用元

所感




~以下ネタバレ有~











各ルート感想


 攻略順は以下のとおり。
 かぐ耶√ ⇒ オリエ√ ⇒ 風実花√ ⇒ 来海√ ⇒ 乃愛√ ⇒ 天音√
 

共通パート

 共通パートの時点ではまだ面白さは何とも言えないですね。
 会話劇としては少々面白さに欠けますが、その代わり展開的にはある程度の抑揚が見出せるという感じでしょうか。本作、なんとなく過去作に比べて本筋からズレる寄り道のような場面が少ないような気がします。それが吉と出るか蛇と出るか……。

星河 かぐ耶√

 正直な話、酷評です。かぐ耶ファンおよび本ルートが好きな方は読み飛ばすことをオススメします。
 面白くもなければ、無視できない粗も散見されます。その上で本ルートは、ゆずソフト作品で最も大切にされているであろう『ヒロインの魅力を引き出すシナリオ』という体裁をも満たしていないように見受けられました。
 脳死で読めばたしかに「かぐ耶ちゃんえっちでかわいい」で終われるシナリオではあるのでしょう。たしかに表面上は取り繕われていました。しかし少なくとも、私の目には余る物語となっていました。……いや、べつに私も気合を入れて脳を働かせたワケでは無いのですがね……。

 ゆずソフト作品で大切にされている体裁として『ヒロインの魅力を引き出すシナリオ』と上述しましたが、本ルートも例には漏れず、対象ヒロインである星河かぐ耶の『思慮深いながらも恋には大胆なヒロイン』というキャラクター性を活かすシナリオに仕上げようとはしていたのだろうなとは思います。少なくとも、そう感じさせる形跡はたしかにありました。ただ、実際のところ私が本ルートのシナリオを読んでかぐ耶に抱いた印象は全く異なります。私がかぐ耶に対して抱いた印象は、『周囲に持ち上げられているだけで実際は思慮も責任感も足りない痴女』です。
 なぜ私がかぐ耶に対してそのような印象を抱いたのか。着眼点は3点あります。1点目は、『シナリオがかぐ耶の思慮深さを証明するには不十分・不適切』という点。2点目は、1点目とも少々通ずる部分があるのですが、『かぐ耶の選択から王族としての責任を感じられない(或いは感じられるように描写されていない)』という点。3点目は、『恋愛感情を寄せていない異性から性的な目を向けられて悦んでいた』という点です。
 1点目に関しては、本ルートのシナリオ全体に言えることになりますが、特に語る上で代表的な場面はやはり『第一王子を追い詰める場面』でしょうね。最も大きな見せ場であるハズの本場面ですが、蓋を開けてみれば雑な導入から自作自演の茶番が開始され、その後は敵である第一王子に一切有無を言わさぬゴリ押し。そこに頭脳戦や慎重などという概念は一切存在せず、どちらかといえば脳筋プレイという印象を受ける場面に仕上がっていました。作中でも示唆されていましたが、そもそも第一王子が敵として小物すぎたということもあり、本ルートにおける集大成であったハズの本場面ですらかぐ耶の思慮深さを証明するには足りないという結果に終わってしまったように見受けられます。そもそもこの茶番劇作戦はかぐ耶立案の作戦ですが、魔王を悪役として使うあたり尚更李空との子供を作りづらくなるということについては考慮しているんですかね……? 魔王に対する価値観を変える難易度向上のほかに、なぜ魔王を倒したかぐ耶に魔王の力を有する子供が宿っているのか疑念を持たれる可能性だって大いにあるワケですが……。また、これって最終的にクラヴィが寝返ってくれなければ証拠不十分で詰んでいましたよね? 代替案があったようには見えませんでしたが……行き当たりばったり感が否めない。ここいらに限らず共通パートから個別ルートにかけてのかぐ耶の行動には、些か場当たり的なモノが散見されたようにも思います。作中においてかぐ耶は自身の兄である第一王子を「場当たり的」だの「手段が強引かつ単純で、脇が甘い」だのと揶揄していますが、私から見ればどっちもどっちというか。この兄にしてこの妹アリといった感じで、団栗の背比べのようにしか見えませんでした。
 2点目に関しても怪しい選択は複数散見されますが、代表的なのは子作りに関するかぐ耶の選択でしょうね。李空とかぐ耶の子供は魔王の力を引き継いで生まれてくるリスクを内包しているため、最悪新たな大戦の火種になってしまう可能性があるとの危険性が作中では示されました。しかしかぐ耶は、その危険性を承知していても尚「私が王位を獲得して魔王に対する世間的な認識を変えるから大丈夫」と宣い、すぐさま子作りに励みます。私はここで、かぐ耶はあまりにも楽観視が過ぎると思いました。洗脳の類を手段として用いるのであればまだしも、真っ当なやり方では他者の価値観などそう容易に変える事は出来ません。ましてや変えようとしているのは異世界人に刻まれた「魔王は恐ろしい」という本能的恐怖に根差した価値観なワケで、尚更魔王が受け入れられる世間を形成するには時間と労力を要するでしょう。加えて、魔王の力を持った子供を利用しようとする勢力だってまた現れるハズです。いずれにせよ、示唆されている通り大戦の火種となる可能性は今後もしばらく残り続けることは目に見えています。そういった背景が確実に存在するにも関わらず、かぐ耶は「なんとかなるやろ」くらいのスタンスで、すぐにでも子供を宿そうとします。実際問題、本当にすぐ子供が出来ていたらどうなっていたのか? 魔王が受け入れられる世間が形成されていない状況で、王族が魔王の力を受け継いだ子供を宿す影響もまた作中で示唆されていたハズです。国を脅かす危険性を理解していても尚、欲求に抗うことなく子作りに励む。そんな彼女の姿から、はたしてどのように思慮深さと責任感を読み取ればよいのか。無理でしょう。ゲートも半私物化するようですし、そもそも王位を継承することにした動機も動機ですし、責任感なんてものは欠片程度にしか無いのでしょうね。少なくとも本ルートシナリオによる描写だと私はそのようにしか思えません。まぁ、主人公の軽率な自己犠牲を指して「王の器」とか称しちゃう娘なので、そりゃ責任感も薄っぺらいか……。
 3点目に関しては、主人公のことを好きになったタイミングとそれ以前のかぐ耶の感情に焦点が当たります。かぐ耶が主人公に恋愛感情を抱いたタイミングは、主人公が身を挺して刺客からかぐ耶を守った時であることが作中でも明言されています。しかしそれと同時にかぐ耶は、それ以前から主人公がかぐ耶の身体に性的興奮を覚えてくれていることに悦んでいたとも言及していました。要は、恋愛感情を抱いてもいない異性から性欲をぶつけられることに悦びを覚えていたということです。加えて、それがきっかけで徐々に惹かれるようになっていったとも解釈出来る発言もしていますからね。私は正直ここいらの発言を見て、「セックス中毒メンヘラ痴女みたいなこと言い出したな……」と困惑しました。それと同時に、悪い男に捕まりそうなタイプだとも思いましたね。『自分は求められている』という実感を得ようとする欲求自体は誰しも持っているものだとは思いますし、私はそのようなヒロインが登場しても一向に構いませんが、はたして制作人がユーザーに与えたかった星河かぐ耶というヒロインの印象はそのようなモノだったのだろうか?という点は疑問です。ましてや本作はゆずソフト作品。処女性や純愛性を重視するユーザーが多く手に取る作品なワケですから、このキャラクター性ははたして如何なモノか……。ゆずソフトファン────さらに言えば星河かぐ耶というキャラクターのファン的には問題無かったんでしょうかね?
 以上、私が星河かぐ耶というヒロインに抱いた印象は『思慮深いながらも恋には大胆なヒロイン』ではなく『周囲に持ち上げられているだけで実際は思慮も責任感も足りない痴女』であったというお話でした。作中における言及や物語構成からして前者のような印象を与えたかったルートであったのは確かだと思いますが、実際ユーザーとして私が受けた印象は後者だったため、『ヒロインの魅力を引き出すシナリオ』としては成立していないし、シンプルにつまらなかったよねという点で酷評となります。さすがにこの違和は無視できません。たとえかぐ耶が上述した件に関して内心どれほど考えを巡らせていたのだとしても、その思考の一端すら描写されていない時点で読める行間もありません。

 これは余談ですが、本ルートはどこか面白味のない異世界転生モノを観ているかのような感覚に陥りました。主人公が別段大したことをしていないのに、周囲のレベルが低すぎて持ち上げられる系統のヤツです。ここではあくまでもヒロインであるかぐ耶に焦点を置いて感想を綴りましたが、展開運び自体の無視できない都合の良さや主人公のお馬鹿な行動にも呆れ果てたルートだったので尚更ですね(メタ的に言えば全ての創作された物語はご都合展開ですが、見過ごせる/見過ごせないラインがあるという話。それに関しては別の機会に語るとしましょう)。皮肉というワケではありませんが、何もそこまで流行に寄せなくても良かったのでは……?

高楯 オリエ√

 面白さとしては可もなく不可もなしです。
 ただ、ヒロインの魅力が程よく活かされた良いルートではあったと思います。不器用ながらも持ち前の真面目さと努力気質で苦手を克服していくオリエの姿には、共通パートで彼女に抱いたお堅く面倒くさい印象をものの見事に払拭させられました。表面的にしか見えていなかったヒロインの性質を深く知ることで、よりヒロインを好きになれるシナリオであったと言えるでしょう。ゆずソフト作品に限らず数多のエロゲ・ギャルゲにおいて大切にされているであろう要素を抑えているという観点から、本ルートは良いルートであったと判断しました。

 ただ、諸手を挙げて評価出来るかと問われればそういうワケでもなく……。やはり展開的には非常にのっぺりとしていますし、本ルートでは魔王の力を持った子供が産まれてしまう可能性についても一切危惧されていませんでした。また、かぐ耶に対する第一王子からの脅威も完全には去っていない状況で、従者であるオリエの別行動が多かった気がするのも少々違和感。いずれにせよ、些か軽率という印象だけは払拭出来ないルートではあったのかなと思います。

 まぁとはいえ、ゆずソフト作品においてはおそらくヒロインの魅力を引き出したルートに仕上がっていることが最も重要であると考えられるため、その観点で言えば本ルートの出来は良いと感じられたということで感想を締め括ります。

百里 風実花√

 面白さとしては可もなく不可もなし。
 個人的にはコンパクトに纏まっていて良かったと思います。交際開始後の冗長なイチャラブが無いだけでこんなにもスッキリとした読後感になるとは……。うーん、我ながらエロゲとしてのメインジャンルに適性が無い……。
 コンパクトだからといってヒロインの魅力が減衰したかと問われればそういうワケでもなく、本ルートでもヒロインである風実花さんの魅力は存分に発揮されたものと思います。教師兼幼馴染のお姉さんという属性と風実花さん自身の思いやり溢れる性格が上手くマッチしたシナリオになっていたという印象を受けました。

 個人的に、本ルートの魅力は『前世設定の扱い方』であったと考えています。本ルートヒロインである風実花さんも蓋を開けてみれば前世で魔王と繋がりのある魔族だったという設定がルート突入後に明かされます。ただ、本ルートでは前世設定を持ち出した上で一度「前世の繋がりに引き摺られているだけ」として互いの恋心を否定し、その末に前世の関係に引き摺られたワケではなかったことを裏付ける情報を手に入れて互いの恋心を決定付けています。要は、前世からの飛翔とも称せるワケです。本作ではいたるところで主人公である李空と前世の魔王は既に別人であるということが言及されていますが、これまでにプレイしたルートでは結局のところどこか李空というキャラクターが魔王という前世存在に引っ張られている様子が見受けられました。対して本ルートでは、むしろ李空や風実花が既に前世とは別の存在であることを主張するようなシナリオになっていたんですね。私は本ルートにおいて、この点を評価しています。

小雲雀 来海√

 面白かったかどうかはさておき、とても良いシナリオであったと思います。
 私がゆずソフト作品に寄せている期待に十二分に応えてくれたルートでした。

 ゆずソフト作品で最も大切にされているであろう要素の一つが『ヒロインの魅力を引き出すこと』であることはかぐ耶√感想でも言及した通りです。故にこそ私はゆずソフト作品に対して、面白さは二の次でとにかくヒロインの魅力を引き出してくれることを期待しています。その点で言えば本ルートは百点満点で、小雲雀来海というヒロインの魅力を引き出すという役割を非常によく熟しているシナリオだったと言えます。天才肌で社交的ながら、頭も良いからこそ物事を深く考えるという来海の性格がよく活かされていましたし、さらに言えば来海が前世から引き継いだ能力も良い感じに役立つよう編まれたシナリオへと昇華されていたため、これぞまさしくゆずソフト作品に求める”個別ルート”であったとして非常に満足出来ました。
 そこに加えて本ルートは、強い思想が一本芯として敷かれたシナリオでもあったという点を私は評価したいです。これがあるからこそ”期待以上”であったと言えるワケですね。敷かれていた思想は「どんな自分になるかは自分で決める」という確固たる意志。本ルートのシナリオは、あらゆる展開やキャラの意志決定────特に李空・来海・ヴェガのソレがこれに準じたものとなっています。前世の現世の自分を別存在とした上で前世に引きずられない意志決定をするという要素は風実花√感想でも言及した通りで来海√以外にも見られる思想ですが、本ルートはそこからテーマ・メッセージ的にもう一段階踏み込んでいたのかなと感じました。そう感じさせる要因の一つが、前世の扱いです。風実花√において前世からの影響というものは現世の自分という存在を曇らせる要素として扱われていましたし、事実来海√でもその気はありました。しかし本ルートでは最終的に、「前世の魂や記憶からどう影響を受けるのかを決めるのもまた自分自身」という結論に落ち着いています。要は、受ける影響の取捨選択をする時点でそこには確固たる『自分』があり、既に前世の自分とは別存在であることの証明になるということ。たしかに何でもかんでも前世の影響で流されてしまうのであれば話は違うのでしょうが、あくまでも別存在として受ける影響を取捨選択するのであれば、それは普段誰もが行っているように他者や創作物から受ける影響を取捨選択しているのとなんら変わらないワケです。前世という設定をただ現世の自分を曇らせる要素として用いるのではなく、むしろそれすらも喰らって前に進むのだと言わんばかりの思想へと昇華されていた点が私の琴線に触れました。

 ヴェガのアフターケアに関しても非常に良かったですね。使命一筋の一族の価値観しか持たないヴェガを憐れんで無理矢理に価値観を変えさせるのではなく、あくまでもその価値観の外にある価値や感情に触れさせることによって、最終的にヴェガが行う意志決定の考慮材料を増やすのみに留める裁量。あくまでも自身の価値観・意志の決定権はヴェガ本人にあることを前提としたアプローチ。とても私好みです。価値観や感性というものは人それぞれであるが故に、いくら外野から見て哀れだからといって勝手に外野側の価値観に矯正しようとする行為は、それはそれで洗脳ですからね。やっていることはヴェガの一族と同じになってしまうワケです。本ルートのシナリオではそこらへんちゃんと考えられていたのでしょう。敷かれていた思想も相まってとても美しい選択を魅せてくれたなぁと感心するばかりでした。

 あとこれは余談なのですが、私は乳輪デカくて逞しい乳首が好きです。

白雪 乃愛√

 全体的にイチャラブの分量が多かったためか退屈ではありましたが、テーマ完遂の観点からすると程よいクオリティに仕上がっていたと考えられます。
 主人公である谷風李空の前世を語る上でも非常に重要度の高いシナリオではありましたね。

 風実花√や来海√に引き続き、本ルートでも本作が掲げているであろうテーマは健在でした。『前世の自分』と『現世の自分(乃愛の場合はもう1ステップ存在しますが)』との違いを明確にし、『なりたい自分』を肯定する物語として成り立っていたと思います。前世では戦乙女、現世では天使として『使命』に縛られてきた白雪乃愛が人間となることで、晴れて『使命』から解き放たれて『なりたい自分』になる自由を得るという物語構造は、本作の中でもトップクラスに高いテーマとの親和性を誇っていたと言えるでしょう。エンディング直前のシーンで乃愛が口にしたセリフがテーマ昇華の観点からしてもまさしく本ルートの総括のようで、印象深く頭に残りました。

「天使であることが嫌だと思っていたわけじゃない。でも、僕にとって天使は……与えられた仕事だ」
「戦乙女についてもそうだ。僕が望み、選んだことじゃない。他のことを何も知らなかっただけだ」
「でもね、この黒い翼は違う。僕が初めて”選択”した証なんだ」
「僕は李空と一緒にいることを選んだ。初めて、自分で選んだんだ」


谷風 天音√

 実の兄妹による恋愛を程よくしっかりと描いてくれていた点は評価したいですね。
 実は義理の兄妹でしたオチで逃げるワケでもなく、かといって周囲から向けられるであろう負の感情を全く考慮しないワケでもなく、そこいらにちゃんと向き合ったシナリオに仕上がっていたと思います。この路線の恋愛物語については、欲を言うと実際に負の感情を向けられた上でその壁を乗り越えていくところまで描いて欲しいのが正直な気持ちなのですが、おそらくゆずソフト作品にそのレベルのシリアス展開は求められていないのだろうなと場を弁えつつ、むしろ逆にゆずソフト作品でここまで描いてくれたことに感謝をしたいなと。個人的には、仲間内でカミングアウトした際の仲間たちの反応に戸惑いが込められていた点に拍手を送りたいです。あそこで手放しに祝福されると都合よく見えてしまいますから。友人として最終的には祝福してくれるにせよ、やはり禁断の恋であるが故にノータイムで受け入れては欲しくなかったんですよね。

 シナリオの良かった部分を先に語ってしまいましたが、本ルートでももちろんヒロインの魅力はしっかりと引き出されていました。小悪魔的だけど実は兄が大好きな妹の特徴がよく表れたシナリオだったのではないかと。
 それと、本ルートでも前世の自分と現世の自分が別存在であることが示唆されていたのも良かったですね。なんなら本ルートではハッキリと別のキャラクターとして描かれていましたし、そこいらの要素は本ルートが最も強かったのかもしれません。

総評


●シナリオについて
 面白さの観点から見れば良くも悪くも無難な仕上がり。しかし、全体を通して芯は通っていますし、ゆずソフト作品として大切にされているであろう『ヒロインの魅力を引き出すシナリオ作り』という要素も達成されていたように見受けられるため、作品のクオリティ的に見れば要点を抑えた安定感のある良作であったと言えるのではないかと考えています。

 前世という設定を用いた上で頑なに『前世の自分と現世の自分は別存在である』という主張を譲らなかった点が。個人的には本作の魅力であると感じました。このような芯があるからこそ、来海√や乃愛√で明確に示された『受ける影響を取捨選択してなりたい自分になる』というテーマ/メッセージにもより厚みが出たのだと思います。
 巷では「本作における前世設定が邪魔」という言説が見受けられますが、むしろ私は本作の前世設定は上述したテーマを語る上で欠かせない要素であったと感じましたね。

 本作といえば、同ブランド作品である『天神乱漫』を彷彿とさせる設定や展開が散見される点も楽しい要素でしたね。共通パートや乃愛√の展開なんかは、その気が特に強かった気がしています。

 ……本作の不満点は、言わずもがなかぐ耶√ですね。アレだけは受け入れられない。あのルートのみ、上述した褒めポイントの対象から除外しています。どうしてこのようなことになってしまったのか……。かぐ耶さん、自身の個別ルートよりも他ヒロインの個別ルートでの方が思慮深かったよ……。

おわりに


 『天使☆騒々 Re-BOOT!』感想、いかかだったでしょうか。

 そういえば本作、エンディングムービーのクオリティがめちゃくちゃ高かったような気がするんですけど……。前からこんなにクオリティ高かったんでしたっけ……?

 次にプレイする作品は、『AMBITIOUS MISSION アフターエピソード2』を予定しております。

 それでは✋