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ノベルゲーム感想と思考出力

『猫撫ディストーション』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『猫撫ディストーション


 商業ブランド『WHITESOFT』さんから2011年2月に世へ送り出された作品です。
 ガッツリ量子論を題材として扱っている作品として名高い本作。私も以前から多大な興味を惹かれておりました。オタクは量子論好きがちですからね。私も例に漏れないのです。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 妹である琴子はとある難病にかかっていた。
 そのため、ほとんど一日中、部屋の中で本を読んだりして静かに過ごしていた。
 驚かせて刺激やストレスを与えない為に、決して琴子の部屋の中には入ってはいけない決まりがあった。
 ある日の夜、流星群が訪れて夜空に無数の流れ星が降り注いだ。
 星や宇宙の写真を見るのが好きだった琴子に、流星の事を知らせようとドアを開けてしまう。

 そこで主人公が見たのは、息をしていない琴子の姿。
 それはドアを開けて驚かせてしまった事が原因なのか。
 それともドアを開く前から息を引き取っていたのだろうか?

 主人公は、琴子が死んだのは自分が原因という思いに囚われ、
 この一見から、物事を決定(あるいは確定)できない性格になってしまった。

 こうして怠情な日々を過ごすようになった主人公だが、あの夜と同じように
 夜空に流星群が降り注いだある日、ふと昔を思い出して琴子の部屋を訪ねると、
 なんとそこには元気な琴子の姿があったのだった。

 しかも翌朝には父は母までもが琴子の死がなかったのごとく
 振舞っており、さらには飼い猫までが人間の少女と変貌してしまう。

 あまりの出来事に戸惑いながらも、状況に流されるまま、
 主人公は家族との新たな関係を模索し始めるのだが……。

 引用元

所感




~以下ネタバレ有~











各ルート感想


 攻略順は以下の通り。
 ギズモ√ ⇒ 柚√ ⇒ 結衣√ ⇒ 式子√ ⇒ 琴子√

七枷 ギズモ√

 程々に面白かったです。

 『ただの脳』と『人の脳』を言語習得の有無により差別化しているだけあって、人間に変化した猫が人間らしく成長するまでの過程は非常に丁寧に描かれていました。特に中盤における人間の子供らしさと猫らしさが調和したような状態の巧みな描写は個人的に評価したい点です。

 ルートヒロインであるギズモが巡り巡って主人公である樹の写し鏡になるという構図も美しかったと言えるでしょう。樹の問題は樹自身が周囲を”観る”ようにならなければ解決しません。しかし、そもそも樹は樹自身の抱える問題や本音すらきっと観ないようにしていました。だからこそまずそれを自覚させた上で認識を変えさせる必要があったワケですね。その場合、最も効果的なのはやはり他者の言葉よりも自分の言葉になるのでしょう。その点、無意識に樹が吐露していた本音をしっかり受け取っていたギズモが樹の写し鏡になってくれたからこそ、樹は本ルートで認識を変えることが出来たのだと思います。

 終盤における展開に関しては、若干量の不満を抱いています。個人的には、最終的にギズモに似た女の子と添い遂げる展開を是としていた点が受け入れられませんでした。というのも、本ルートでは基本的にギズモという存在を唯一無二の存在として扱ってくれていたんですよね。琴子の生まれ変わりを期待されて遭遇し、樹の写し鏡としての役割を担ったギズモというヒロインは、それでも樹に「ギズモはギズモさ。誰の代わりでもない、ただの猫だった」と言わしめるようなキャラクターだったのです。だからこそよりにもよって、着地点が『消えてしまったギズモの代わりにギズモに似た少女と添い遂げるEND』なのが解せません。大方、夕暮れ時の世界において琴子とギズモの口から語られた『失うことでしか手に入らない奇跡』を展開に落とし込みたかったのだと考えられますが、少なくとも私には、どうしても「ギズモは誰の代わりでもないけどギズモの代わりはいる」と解釈出来てしまう終わり方を受け入れることは出来なかったのです。まぁ、ここらへんは趣味嗜好の話ですね。Not for meだったということで。

 他にも終盤展開で突っ込みたい箇所はありますが、どちらかといえば整理が追い付いていない部類の話なので、後々のルートで理解に至れることを祈りつつ、ここでは言及を割愛します。

柚√

 特に面白さは感じられませんでした。
 というか、イマイチ釈然としないルートだったと言えるでしょう。

 『常識』を振りかざすヒロインがド正論で樹をぶん殴ってドストレートに現実へ目を向けさせる展開かと思いきや、着地点はよく分からない方向に……。混乱の原因は、唐突な主観者変更でしょうね。本作において主軸に置かれているのは、七枷樹の認識の行く末であり、七枷樹が『家族』とどのように向き合う選択をするのかという結論であると考えられます。現に、本ルートでも柚への告白シーンあたりまではその流れを汲んで物語が展開されていました。しかし、それ以降はまるで主人公が変更されたかのように柚視点が増加し、なんなら結局エンディングまでずっと”柚の視点”のまま”柚の独白”上にて”柚の思想”が語られて物語が終了します。語られた『家族』や『世界の可能性』に対する思想自体には頷ける点も多く、不満はありません。概ね本作における1つのルートを締め括るに相応しい結論であったと思います。ただ、なぜこの思想を語るのが樹ではなく柚なのか。この思想を受け入れて語るのは本来主人公の七枷樹でなければならないのではないか。少なくとも私は本ルートの締め方に対してそのように思わずにはいられませんでした。この締め方では柚と樹の会話から鑑みても樹が”本来の”家族と向き合う決心をしたのかが読み取れませんし、仮に決心をしていたのだとしても樹の心の中での思想の変化が不明瞭で違和感を覚えます。樹が今まで目を背けてきた本来の家族の努力を柚から聞かされた際の樹の反応や元の世界に戻った際の樹の反応によってはすんなりとこの締め方を呑み込めたのかもしれませんが、前者の場面では樹の決断(琴子をもう一度殺すか今の世界に留まるか)が流され気味で有耶無耶のまま柚を失いたくないという方向に思考がシフトしていましたし、後者の場面では「自分が皆より柚を選んだからこうなった」と受け入れてはいるものの意図して至った結果ではないため本来の家族と向き合う決心や琴子を切り捨てる決心がついていたとは思えないんですよね。要は、本ルートの締め方では最も重要な主人公────七枷樹による結論とその過程が不明瞭で不完全燃焼なのです。その点が個人的には非常に残念でした。

七枷 結衣√

 程々に面白かったです。

 テーマに関しては、ギズモ√や柚√よりも比較的分かりやすかった印象を受けました。
 『永遠』という概念や、モノに対して込められる『意味』に重きを置いたルートであったと解釈しています。『永遠』や『意味』をテーマとして扱っている作品は他にも存在しますが、本ルートにおける『永遠』と『意味』はエントロピーという物理学の概念を巧みに紐づけた理屈になっていて、非常に興味深い内容に仕上がっていたと感じられました。
 本ルートの結末、見方によれば一種の『逃げ』のルートであるとも考えられるんですよね。というのも、柚√の感想でも言及した通り、本作において主軸に置かれているのは、七枷樹の認識の行く末であり、七枷樹が『家族』とどのように向き合う選択をするのかという結論であると私は解釈しています。そう考えた場合、本ルートのように樹が琴子の死(=終わり)を受け入れず、3年も観てこなかった家族と向き合うこともせず、やがて『永遠』へと閉じ籠ってしまうという結末は、なんというか……樹たちからすればおそらくHAPPY ENDなのだけれど、ユーザー視点からすると「樹が逃げた」というネガティブイメージが先行するが故にBAD ENDに思えてなりませんでした。ただ、ここで勘違いしないでいただきたいのは、なにも私はそれを理由に低く評価するつもりはないということです。本ルートの結末は別段『七枷樹の認識の行く末』から脱線していませんし、向き合わないという選択もまた『七枷樹が家族とどのように向き合う選択をするのかという結論』の1つであることには間違いありません。要は、本ルートの結末もまた主軸からは決してブレていないと考えられるのですよ。だから私はむしろ、結末の1つとしてこのようなエンディングまで用意されていることを評価したいと考えています。……まぁ、本作グランド√を務めるであろう琴子√でも同様の選択が為された場合は酷評になると思いますが……。

 設定・展開に関しては、少々理解難易度が高い内容であったように思います。少なくとも私は、本ルートの感想を書いている時点ですら整理しきれていません。
 というのも、本ルートではギズモ√や柚√に比べて特に多くの物理学や量子論と紐づいた設定・展開が繰り広げられました。勿論、理解の一助となる説明も作中では為されています。ただ、本ルートにおける説明は個人的に不充分である印象を受けました。例えば、終盤に語られた七枷結衣(厳密には結衣と重なり合っていた『概念』)の正体関連。彼女は自身を『絶対零度の悪魔』と語っていましたが、彼女が裏で行っていたエントロピーの増減作業について理解するには前提知識として『マクスウェルの悪魔』の思考実験を知っておく必要があります。作中において一応の説明もされていますが、正直かなりふわっとしています。そもそも何の説明もなく説明に使用する用語として『系』とか専門用語出されても分からないし……。まぁ、結衣√に限った話ではないのですが、これ以後の個別ルートで改めて説明されるモノもあると信じてここでは語りません。(『事象の地平面』と『シュバルツシルト半径』あたりのお話)
 上記に加え、本ルートでは3, 4つほどの『世界』に焦点が当てられた点もより複雑さを助長させる要素であったのかなと考えています。焦点が当てられる『世界』の切り替わりも唐突ですし、それぞれの世界がどのような経緯・可能性に基づく『世界』なのかや『世界』間の関連性等も深く掘り下げられることなく満足げに『世界』ごと締め括られたりしていて何が何やら状態でした。夕暮れ時の『世界』や『永遠』になった世界に関してはまだ推察に足る情報がそれなりに揃っているので良いのですが、結衣と樹が『世界』ごと『永遠』になった後に生まれた石を拾ったのはどの『世界』の琴子なのかとか、最後に樹が帰宅途中だった大晦日の『世界』は新しく生まれた『世界』なのかとか細々とした疑問は多いです(単純に私の洞察力・推察力が足りていないだけな気もしますが)。そもそも『事象の地平面』に近い『世界』とそうでない『世界』の違いがどうやって生まれているのかもよく分かっていませんし、ホント現状まだまだ分からないことだらけなのですよね。後に控えている式子√と琴子√で全てを語り明かしてくれることを祈ります。

七枷 式子√

 面白さ云々というよりも、なんというか……やたら壮大にぶっ飛んだなぁと呆気にとられるルートでした。
 個人的にはあまり納得できない結末であったというのが率直な感想です。

 重要視されていたキーワードは結衣√同様に『永遠』であると解釈出来ますが、本ルートでは結衣√とはまた異なるアプローチで『永遠』が描かれていた点が興味深かったです。『永遠』の在り方について同作中でそういくつも描けるものなのだなぁと感心しました。ただ、マクスウェルの悪魔という物理学的概念を結衣というヒロインに落とし込み、エントロピー操作を通して『永遠』へと至る方法を見出した結衣√とは異なり、本ルートでは各キャラクターが一つになり、世界・宇宙とも一体化することによって『森』のような『家族』を形成し、個々の存在の生死すらも『森』という大きな存在の中の円環的な周期に組み込んでしまうことで『永遠』を実現していた点が、なんとも巨大なスケールすぎて呆気にとられてしまったという感じです。まぁ、式子が元々持っていた『掛け合わせ』の能力の延長ではあるのでしょうがね。

 本ルートにおける『結論』に関して、語られた思想自体は受け入れることが出来ました。ただ、それに伴う『結末』に対しては、個人的に違和感を抱かずにはいられませんでした。先述した『納得出来ない結末』のお話ですね。
 本ルートの終盤では、式子の背負った『悲しみ』や『幸福』を受けて結論が語られます。その中に、以下の考え方が登場します。

悲しみはある────ただし、単なる悲しみとして。
そりゃ、生きていたらいろいろあるだろう。
でもそれは、重荷だとか、背負うだとか、、そんなのとは関係のないこと。
悲しいことっていうのは、ただ悲しいこと。
それだけのこと。
それ以上の、もってまわったような深い意味なんかない。

必要なのは────
悲しみを正面から受け止めること。
だけどそれは、そんな暑苦しい表現をしたからといって、現実を見つめるなんてこととは違う。
そんな安っぽいことじゃない。
小さなことじゃない。
悲しみを、悲しみ以外のものと関連づけたりせず、ただ悲しみとして受け止めること。
俺たちは、感じるだけでいい。
ただ悲しむだけでいい。
それ以外の意味づけは必要ない。

 これは主人公である樹の独白の中に登場した考え方ですが、語っていること自体には納得出来るのですよね。悲しみに大層な何かを見出すことなく、それはそのまま受け止めるに留めることが大切という考え方です。ただ、皆さんにも思い浮かべていただきたいのは、はたして樹がこの考え方をどのような状況で語っているのかということ。そう、樹はこの考え方を、琴子が亡くなった現実から目を背け、都合の良い世界を観たままに語っています。私はその点に強い違和感を抱きました。いや、言っていることとやっていることが違うくないか、と。しかも樹はこのさらに前のパートにおいて、「元の世界の家族や疎遠になった友人とも今なら握手できるかもしれない。『愛』を分かち合えたかもしれない」というニュアンスの独白を繰り広げた上で、それでも柚の方には行けない(=辛い現実には帰れない)と結論付けます。いやいやいやいや、おかしくないか、と。このことからも分かる通り、樹は、自分が今まで観ないようにしてきた相手と向き合える可能性や悲しみを受け止める姿勢を示唆しつつも、この期に及んで実際に元の世界と向き合うことは避けているのです。要は、ここいらで語られる樹の考え方は全てどこか他人事の理想論でしかないんですよ。この思想を語る樹本人の『都合の良い世界に留まる』という行動自体が思想に対して矛盾しているのだから、せっかく語られた結論に全く説得力が生まれないワケです。一応の弁解のつもりか、「現実を見つめるなんてこととは違う。そんな安っぽいことじゃない。小さなことじゃない」という文言が登場していますが、個人的にはやはりこれも『逃げ』を正当化するための体の良い言い訳にしか聞こえません。琴子の死に向き合わず琴子を蘇らせた世界から脱却しない限り、どれだけ『悲しみを受け入れること』について良い思想を語っていたとしても口だけの薄っぺらい言葉に成り下がってしまいます。故にこそ、さすがに私はこの結末を受け入れることが出来ませんでした。結論に納得出来るだけに非常に残念です。樹にはせめて、この思想を語るためのスタートラインにくらいは立ってほしかった。

七枷 琴子√

 特に面白さは感じられませんでした。
 グランド√も兼任しているということで本作としての結論・結末はどこへ着地するのか興味深かったルートでしたが、結果から言えば期待外れ。個人的には受け入れがたい結論・結末に着地したと言えるでしょう。

 新生七枷家の面々が警察に連行されるシーンや樹含めた七枷家の面々の正体(実在する人間ではなくコンピュータ上のデータ)が明かされた際には驚き、展開に釘付けになりましたが、それも長続きはせず。
 あまり受け入れられない結末に向かいつつあるなぁと不安になりながら迎えた最終パートでは『琴子が帰らなかった世界』へ回帰したため「もしかしてここからの巻き返しがあるのか!?」とも期待しましたが、結果的には前シーンからの流れのままにエンディングへ突入してしまい、思わず肩を落としてしまいました。

 では、何がどう受け入れ難かったのかというお話。
 本作はやはり上述した通り一貫して『七枷樹の認識の行く末』や『七枷樹が家族とどのように向き合う選択をするのかという結論』に主軸が置かれる物語であったと解釈しています。この解釈に関しては、七枷家の面々だけでなく樹も『観測者』としての役割を与えられたコンピュータ上のデータであることが明かされた際に「覆された」と感じましたが、樹が造り出された意図と与えられた役割からして特に覆されてはいないと思い直した次第です。
 これまでのルートでも様々な結論・結末が示されてきましたが、本ルートもこれまで同様に『観たい世界を観る』という結末に落ち着いたものと解釈しています。一応最終的には『琴子が帰らなかった世界』に回帰した上で前向きに琴子の死を受け入れたようにも読み取れますが、少なくとも現象前の本来の『家族』と向き合う気は毛ほどもありませんでしたし、人間となったギズモを登場させた上で「琴子とは望めば会える」という結論に着地したあたり、やはりまだまだ『自分の観たい世界だけを観る(=ありのままの辛い現実からは目を背ける)』という逃げ腰なスタンスからの脱却は為されないままだったというのが私個人の主人公────七枷樹に対する見解です。私は最終的にこのグランド√も兼ねた琴子√で琴子の死を受け入れて家族とも向き合う選択をしてくれることを期待していたので、些か残念でした。Not for meだったということですね。個人の好みの問題なので、仕方なし。
 ただ、ここいらで語られた思想の解釈次第で結末・結論の解釈もまた別の形に化けるような気がするので、要考察・要調査(他者の見解・解釈が対象)であるとも考えています。もしかしたら受け入れた上で評価が逆転する未来もあるかもしれませんね。

総評


 全体を通して、私には合わない作品であったと結論付けざるを得ないでしょう。
 決して作品自体が悪いのではなく、作品を受け止める私との相性が悪かったのが肝です。私と全く異なる感性・価値観 を有する方であればむしろドハマりする可能性は高いでしょうし、そう思わせるほどのパワーを本作は有していると感じます。

 量子論を展開・テーマ面の両方で巧みに落とし込んだ作品であり、非常に興味深い内容であったことは確かです。ただ、あくまでも個人的な印象としてはやはり”興味深い”止まりであって、量子論という要素が”面白さに直結していたか”と問われるとなかなかに頷き難い作品であったとも思います。面白さに直結しなかった原因の一つとしては、『没入のしづらさ』が挙げられるでしょう。本作は非常に専門的な知識の要求度が高く、また作中における説明も充分ではないため、より正確に展開を理解しようと思うとプレイ中にそれら専門知識を調べる時間が発生します。この際、いちいち手を止めて作品から離れる必要があるため、それなりの頻度で集中が途切れてしまうワケですね。加えて、本作は展開・テーマ共に複雑寄りの作品であるため、相応の思考リソースを消費します。要は、体力が無いと長時間読み続けることが出来ません。少なくとも私はこれらの条件下において作品に没入することは出来ませんでした。勿論、専門知識を前提知識として有している方であればいちいち調査時間も発生しないと考えられますし、思考面での体力を有する方や頭の回転が速い方であれば面白さを感じるに足る没入を実現出来ると考えられるため、そういった方々には向いている作品と言えるのかもしれませんね。ちなみにこれは補足的な余談ですが、あくまでも私の中において本作は『素晴らしき日々』や『MYTH』以上に思考リソースを必要とする作品であったと感じました。

 本作における結論・結末の話は琴子√感想にて記述した通りですが、どのような結論・結末であれば私は満足出来たのかという話もせっかくなので記しておこうと思います。
 前提として、私は苦難に立ち向かう系統の作品が好みです。『逃げ』を描く作品もモノによっては楽しめますが、『逃げ』には相応に納得出来る理屈を求めます。そんな私にとって本作は特に納得も出来ない『逃げ』の作品でした。というか、『量子論を落とし込んだ作品』というコンセプトを重視しすぎたあまり、結論・結末もそちらに引っ張られてしまったのではないかというのが率直な印象です。これが例えば、様々な可能性の世界を観た上で最終的には心地よい『世界』を投げ打って改めて琴子の死というリアルに向き合う展開であったり、或いは「”観”方を変えれば『世界』は一変する」という結論のもと元々の現実で奮闘する結末であったりすれば、私も満足出来たのかなぁと推察します。そういう意味では本作のヒロインの1人である柚と私は近しい思想を持っていることになりますね。柚の押し付けがましい言動や固定観念に縛られるスタンスは嫌いでしたが、それでも作中で語られた思想自体は支持しています。

 プレイ前は「絶対自分が好きなタイプの作品」であるという確信めいたものを抱いていただけに、このような感情で終わってしまったのは残念でした。どうすれば本作を受け入れることが出来たんだろうなぁ……。

おわりに


 『猫撫ディストーション』感想、いかかだったでしょうか。

 琴子ちゃんが可愛かったのでその点では満足です。

 次にプレイする作品は本作のFDである『猫撫ディストーション Exodus』を予定していましたが、少々頭を休ませたいので別の作品を挟む可能性が高いです。

 それでは✋