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ノベルゲーム感想と思考出力

『1人殺すのも2人殺すのも同じことだと思うから』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『1人殺すのも2人殺すのも同じことだと思うから』


 2012年9月から2015年1月にかけて、同人サークル『虹猫』さんが全13話構成で世に送り出した作品です。ジャンルはスプラッター系能力バトルモノとのことで、個人的には好みのジャンルなので非常に期待しております。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

 ※本作はトールケース版も存在しますが、フリー化もされている作品です。興味のある方は以下よりDLしてプレイしてみてくださいね。
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=946281

あらすじ


 主人公・陰暦弥鈴(みすず)は火事で家と母を亡くす
 三学期から転校
 一人暮らし
 新しい町、新しい学校、新しい友達
 そんな不安の中、みすずの新しい生活が始まる

 引用元:トールケース裏面記載のあらすじ

所感




~以下ネタバレ有~











総評


●シナリオについて
 かなり評価に困る作品です。
 個人的な好みも踏まえると、私は良作であったと評したいお気持ち。

 少子化を解決するために作り出された『BABYシステム』。痛みや愛を伴うことなく子供を生み出せてしまう上、身体的・知的な能力を付加することも可能なそのシステムは、時代の流れと共に社会へと浸透していった。本作は、『BABYシステム』という技術・制度によって人生を弄ばれた人間たちの群像劇。優性思想を突き詰めた先に存在する世界の可能性の物語────。
 ────というのが、私の本作に対する解釈です。技術的な要素に関してはフィクションとしても、時代・社会の流れとしては今後現実でも有り得そうな内容だったため、取り扱われている題材に関しては考えさせられるモノでした。

 展開自体も普通に面白かったんですよね。能力バトルとは言ってもそう自由度の高い能力モノではなく、あくまでも『BABYシステム』の設定に則った範囲で能力バトルが繰り広げられる感じで、それなりの頭脳戦が楽しめるような系統でした。おそらく本作が映像作品だった場合にはかなり地味な能力バトルになってしまうことが考えられるのですが、本作の媒体はノベルゲームですからね。むしろ本作のような系統の能力バトルは、ノベルゲームとの親和性の方が高いと考えられるので、その点も上手く"ハマっていた"のかなと。
 また、プレイヤーに驚きを与えるのも上手いと感じました。というのも本作、次々に惜しみなくキャラクターが死んでいくんですよ。最終場面まで生き残るメインキャラクターって、はるを除けば陰暦弥鈴と鷺沼松奈だけなんじゃないですかね……? その特性上、当然「え!?このキャラクターもここで死ぬの!?」みたいな展開も多々あるワケで、その点でも楽しむことが出来ました。一番驚いたのは、やはり10月編における生田小春の死でしょうか……。ただでさえそれまで陰暦弥鈴と同じレベルの主人公格だった存在だったのに、そんなキャラクターが残り3ヵ月も残して退場してしまったワケですからね。小春が亡くなる場面では、悲しみよりも「この後どうやって話進めるの……?」という困惑の方が大きかった程でした。この点、ベストなタイミングでキャラクターをスパッと退場させられるライターさんって凄いですよね。私もぼちぼち物語を創作することがあるのですが、思い入れのあるメインキャラクターであればある程に殺すことって出来なくなりますからね……。ホント凄い。

 さて。それでは、なぜ私がこれだけ絶賛している本作に対して評価を迷っているのか。それは偏に、本作の着地点に起因しています。
 というのも本作、全体を通してみると提起された目的や問題解決がほぼほぼ達成されていないんですよね。あれだけ多くのキャラクターが登場し、1人1人が何かしらの目的を掲げて行動していた点は非常に良かったのですが、その実その中で達成されたモノってほんの一握り。それも、各キャラクターが納得の上で目的達成に失敗するのかと思えばそういうワケでもなく、掘り下げられたにしてはあっけなく夢半ばで死んでいったりしています。本作の大枠の目的であった「陰暦弥鈴の更生」も、はたして本当に達成されたのかも怪しいですし……。というか、陰暦弥鈴が最終的に世界を滅ぼしたあたり、達成されていなさそうな気がしますし……。というような感じで、本作って物語の着地の仕方としては些かモヤモヤが残るんです。
 ただ私は、この要素に関しては否定的に突っぱねたくないという気持ちもあるんですよ。なぜなら本作は『群像劇』だから。これがほぼほぼ視点者の固定された”主人公のための物語”であればまた話は別ですが、本作は数多の視点者の意志と行動によって彩られることが前提の『群像劇』なワケですから、”誰のための物語”とは言えないんですよね。その特性上、全員が全員各々の意志をぶつけ合えばそりゃこういう結果にもなるでしょうよとも考えられるワケです。そう考えると、数多の視点者が各々の目的を掲げて忖度無しにぶつかり合った結果とも言える本作は、『群像劇』としてはむしろかなり良質な作品であったのではないかとも解釈出来ます。それ故、本作は評価が難しいんですよ……。

 まぁただ、最初にも申し上げましたが、私個人の好き嫌いとしては本作のような作品は「好き」の部類に入るので評価したい所存。決して小綺麗な物語ではなく、容赦の無い不条理と儚く霧散する夢の欠片が描かれる作品ってよくないですか?? というワケで、もしも本作が気に入ったよーという方は『なるたる』という漫画を読んでみてください。系統としては近しい作品なのでオススメです。

●キャラクターについて
 ※ 言及したいキャラクターが非常に多いので、後日気が向いたら書きます。

おわりに


 『1人殺すのも2人殺すのも同じことだと思うから』感想、いかかだったでしょうか。

 こういう作品があるからこそ、同人ノベルゲームはやめられないのですよね。

 次にプレイする作品は決まっていませんが、とりあえず手持ちの虹猫作品を終わらせようかなと思っております。

 それでは✋