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ノベルゲーム感想と思考出力

『モエかん』感想

目次



はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなワケで、記念すべき本ブログの感想対象第1号となる作品はこちら!

 モエかん

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 画質が悪ぃ!!
 いやね、どこの通販の商品画像画質もこんなんなんですワ。
 公式ページもAdobe Flash Playerサポート停止の影響で見られないし……。
 パッケージを直撮りしようかとも思ったんですけどね。面倒くさくて……。

 まぁ、そんなことはさておき。

 『終ノ空』や『素晴らしき日々』で有名なケロQの3作目である本作。
 見た目とタイトル的には、メイドさんメインのきわめて普通な萌えエロゲ。
 ケロQ製の作品は、本作以前が『終ノ空』と『二重影・二重箱』、本作以後が『素晴らしき日々』と『終ノ空リメイク』なので、本作はケロQ作品にしては一風変わった作品という印象ですが……果たしてどのような物語なのか……。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ

 舞台は近未来、巨大企業「萌えっ娘カンパニー」が世界の大部分を支配する時代。
 主人公・神崎貴広はかつてカンパニー情報部の戦闘部隊「PIXIES」を率いるエリートであり、世界に5人しかいないNURSERY・CRYME(という超人)の1人「漆黒の神崎」として恐れられていた。
 しかしある事件を機に貴広の「漆黒」の力は失われてしまい、辺境の萌えっ娘島に左遷され、今はそこで駄目メイド再教育施設の所長として表面上のんびりと過ごしていた。
 しかし、貴広をかつての英雄として利用しようとする者、あるいは恐れる者も本社には多い。

 そんなある日、旧式アンドロイドのリニアが本社から送られてくる。様々な思惑とともに……。

 引用元(公式サイトがAdobe Flash Playerサポート終了で見られなくなっていたためこちらより引用)

所感


 個人的には説明・描写不足による不満点は多いです。風呂敷も畳みきれてはいません。しかし、ポテンシャルや魅力を感じる要素も多い作品ではあります。FDで上手く補完してくれればシリーズ自体に対する評価は上がると思います。
 メイドさんが好きな方にはオススメします。なにせメイドだらけなので。そして、終ノ空やすばひびのような作品を期待している人にはあまりオススメしません。
 適度に萌えと厨二系バトルが共存している作品ですので、そこを考慮しつつ興味のある方は是非という感じ。

 

~以下ネタバレ有~











各ルート感想


 攻略順は以下の通り。
 冬葉 ⇒ リニア ⇒ 霧島 ⇒ かずさ ⇒ 鈴希
 ※各ルート感想は、完走後にまとめてではなく、各ルートクリア後にその都度書いています。そのため、他ルートで判明していることを判明していない等と記述している部分も存在することをご了承ください。

共通パート

 ケロQ作品としては珍しく、ノーマルなエロゲ的共通パート。
 基本的には同じような毎日を繰り返しつつ、選択肢によって分岐に必要なフラグイベントを重ねるタイプ。そのため、共通パート時点での物語の進行速度は遅く感じました。
 プロローグの内容が、これでもかと言わんばかりに厨二的設定が語られた上であたかも「これから何かが始まるぞ」と期待させられるモノだっただけに、尚更失速感を覚えましたね……。相対的というかなんというか……。
 まぁでも、ヒロイン全員の魅力はしっかりと発揮されていたあたり、このタイプの共通パートとしての役割は果たしていたのかな~と。細々とした伏線も散りばめていましたしね。
 とりあえずリニアがかわいいです。
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実相寺冬葉√

●シナリオについて
 面白かったですね。
 共通パートからすると、いきなり物語が加速して驚きました。
 ヒロインである冬葉の掘り下げ充実はもちろんのこと、シリアスも上手く織り交ぜ、起伏にメリハリのある展開運びにもなっていたため、満足出来ました。
 主人公に関しても、そこはさすがケロQというか。しっかりと主人公が主人公としての務めを果たしており、その点でもにっこり。
 ところどころ謎は残るものの、まぁ他のルートで回収してくれるでしょうと。
 『星の銀貨』という童話と√ヒロイン────冬葉の人生(シナリオ)がリンクしている点が、なんともケロQ作品らしい魅せ方だなぁと。加えて、冬葉の創作した絵本である『太陽とクリスマス』の要素もしっかりとシナリオに組み込まれており、冬葉が絵本好きという設定も相まって、尚の事綺麗にまとまった物語だったと感じました。
 これまで身を削って他者に祝福を与え続けてきた冬葉が、最後にかけがえのない祝福を得るという展開は、さながら『これまで頑張ってきたキャラがやっと報われる展開』そのもの。大好物なのでね。気に入らないワケがないんですわ。

 凌辱√は……うん……まぁ……ひたすらに「貴広(主人公)なにやってんだよ……」って思ってました……。

 アフターではやっとこさラブラブ行為でしたね。本編での行為シーンは凌辱√のみでしたから。

●ヒロインについて
 非常に扱いが難しいヒロインだったと思うが、よくもまぁここまで上手く扱ったものだなぁと。厚みのあるキャラクターだったと思います。
 というのもこのヒロイン、"表層だけ"見ると、敵・味方どちらが傷つくのも嫌な『博愛主義』で、本来であれば私も嫌いな部類の性格。冬葉の性格がよく分かる実例を挙げますと、ルートに入ったばかりでまだ冬葉の背景がほとんど語られていなかった頃、テロリストが冬葉を人質に取り、主人公を殺すために銃撃するという展開があったのですが、その際銃弾を食らいながらもテロリストを撃退しようと銃を構えた主人公を、あろうことか冬葉が止めに入ったワケですよ。あの場面では思わず私も「はぁ?」と呆れ声が漏れました……。
 しかし蓋を開けてみると冬葉……背景がクソ重い
 ルートに入ってからしばらくすると、冬葉が『共感性痛覚』(命名 : 私)という厄介な体質や、副作用のある能力[治癒能力とプレゼント発現能力]を抱えていたことが判明します(正確にはプレゼント能力自体は共通パートでも使っていたが)。これら能力、副作用があるってわかってりゃ常人はまず使わないんでしょうけど、冬葉に限っては自身の体質がそれを許さないという悪循環……。しかも冬葉はその体質が高じて、『人が傷つくのが耐えられないから』『自分に癒せる力があり、その力を必要としてくれる人がいたから』という理由で、特殊部隊顔負けの頻度で戦場を渡り歩いたという過去まで持っているんですね。
 ここまでのことは、並の倫理観や手放しの偽善では出来ないんですよ。そこには確固たる『意志』と『覚悟』が垣間見えるワケです。だって、"他者の痛みを自分の痛みとして感じる"が、それを軽減することが可能な"治癒能力"には"身を削る副作用がある"んですよ。普通は誰とも関わりたくない引きこもりと化してもおかしくないでしょ。それがあろうことか冬葉は逆に、"他者の痛みがわかる"からこそ副作用度外視で『他者を癒す道』へ進んだワケです。ルート開始時点とルート終了時点で、完全に冬葉への感情は逆転しましたね。良い誤算でした。

 いやホント、まさかルートに入るまで『どこか抜けたところがある、絵本大好きなおっとり系ヒロイン』としてキャラを定着させてきた冬葉が、ここまで重い背景を背負っているだなんて、共通パート時点では思いもしなかった。

●テーマ・メッセージについて
『他人の痛みを感じることと他人を愛することは同じ。他人を愛することは、他人と痛みを共有するということ。たった一人の人間と痛みを共有してしまうことならなおさら』
 記憶とポジティブな感情を失った冬葉。そんな冬葉に拒絶されて落ち込んでいる貴広に対し、霧島がかけた言葉がこちら。
 『他者の痛みを感じる』というヒロインの設定と重ねて、人を愛するということがどういうことなのかを伝えるメッセージと解釈しました。『愛する』のニュアンスや度合いは対象となる人によって差異があるのでしょうが、要は『共感性』について言いたいのだろうなと。愛する人が傷ついていると自分も傷つく。愛する人が喜んでいると自分も嬉しい。ほとんどの人間が大なり小なり経験しているであろうこと。この共感性が最も大きくなる対象がおそらくは『恋人』。もはやその共感性は、共有というレベルにまで達するのだろうなと。つまり、恋人を作るのであれば、その対象の痛みまでしっかりと受け止める覚悟が必要なのだと伝えているのではないかなと考察しました。

リニア√

●シナリオについて
 まぁまぁ面白かったです。……うん、面白かったっちゃあ面白かったんだよなぁ……。ただ正直なところ、イマイチ感情がノるにノりきれなかったといったところ。
 シナリオ内容に関してはガッツリ本筋。シナリオボリュームも他ルートに比べて盛り盛り。さすがはセンターヒロインのルートだなぁと感じました。冬葉√の何倍時間かかったかわかんないです。
 上述した通りシナリオ内容はガッツリ本筋ということで、本ルートでは『カンパニーによる陰謀の全体像』や『飯島や隷の目的』、『リニアの正体』、『N計画の真実』等々、様々な謎の解答が明示されます。えぇ、盛りだくさんです。なんたってセンターヒロインのルートですもの。展開的にも相応に大規模でしたね。ただそれだけに情勢が入り組みまくっていて、脳内での情報整理が大変ではありました。
 隷の正体には驚きました。いやホント。新聞の写真のミスリードはめちゃくちゃ上手いなと思いました。てっきり写真に写っているのはリニアだと思っていたので、あのシーンでは頭が真っ白になりましたもん。リニアの正体とか隷の目的とか、そこらへん推測していたことが全部頭の中でごちゃごちゃになりました。あそこは鳥肌立ちましたわ……。女性ってのも驚きですよ。ケロQさんだし普通に男の娘やろとか思ってました。
 貴広VS隷は、決戦までの緊張感も含めてアツかったです。人外VS人外のバトル好きなんですよ。欲を言えばもっと迫力満点でガッツリ見たかったです。ぜひリメイクが見てみたいですね。
 リニアとの恋愛物語としては、文字通り『時を超えた恋物語』という感じで想いの強さが伝わってきて良かったのかなと。そこはやはりセンターヒロイン且つ本作の中心人物との恋愛物語ですし、力が入っていました。
 ただ根本的な疑問として気になるのが、『そもそもリニアの元となる庵原千歳が神崎貴広に恋心を抱いたきっかけって何?』という点。本編中の過去回想を見た限りでは、イマイチ恋愛に発展することに納得出来ないんですよね。それも一世紀越しの恋で、これほど大規模な展開になるレベルに強い"想い"ですから尚更。まぁ、恋愛感情の発端がよく分からないってのはエロゲではよくある印象なので、気にしすぎない程度に気にしておくことにします。
 なぜ貴広が一世紀前に生きているのかとか、漆黒の条件周りとか、全く説明されずに終わっちゃったんで、他ルートでちゃんと明かされることを祈ります。
 ……とりあえず、隷にはどこかで報われてほしいですね……。

 凌辱√は……うん……貴広クン、ノリノリだったね……。

 アフターではやっとのことで貴広と一つに!本編では12回も行為パートがありながら、その全てが凌辱√という所業でしたからね。最後くらいラブラブな行為があってもいいでしょう。
 あと予期せぬクロスオーバーで爆笑しました。たしかにモエかん技術なら作れるのか……。
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●ヒロインについて
 萌える。この一言に尽きますね。こんなメイドさんに仕えてもらいたーい!
 圧倒的萌えキャラという感じです。貴広好き好き天然(?)ドジっ娘ちゃん。『萌え』がキーワードの一つである本作では、ある意味センターヒロインにふさわしいですよね。
 しかし実はヒロイン力も高い。「シナリオについて」でも記述しましたが、ある意味生まれ変わってでも、一世紀という莫大な時を超えて、ボロボロになってまで貴広との約束を果たしに来たワケですから。想いの強さが凄まじい。しかも物語終盤では「約束なんて口実で、本当は好きな人に会うために」とか言ってますからね。『好き』という感情だけで(或いは『好き』という感情"だからこそ")、ここまでしているワケですよ。男冥利に尽きますねぇ貴広さん。おーい、聞いてますかぁ? 凌辱√でノリノリの貴広さーん!
 でも結局、『庵原千歳の心の寿命』設定ってなんだったんですかね? パーツは完璧だったハズなのにリニアの身体が動かなくなった時、おやじさんが「嬢ちゃんの心は庵原博士の娘と同じ年数(10年)しか生きられないんだ。だから時間が残されていなかった。庵原博士はそれが分かっていたから、娘の心を永遠に残すためにリニアを保管したんだ」的なニュアンスの発言をしていたワケなのですが……。普通に冬葉√では最新ボディに変えたリニアが一年後にもピンピンしているし、本ルートエピローグで結局10年後にまた記憶を失うことなく庵原千歳の心と共にリニアが復活しているしで、『庵原千歳の心の寿命』設定がすごくあやふやになっていて釈然としないんですよね。この設定自体がただのおやじさんの推測で実際は間違っているということも考えられはしますが、この設定が真じゃないとそもそも庵原博士はリニアを眠りにつかせないんじゃないかとも思うんですよねぇ……。どうなんでしょう。分かる方いらっしゃったらコメントででも言及してくださるとありがたいです。

霧島香織√

●シナリオについて
 ハッキリ言って釈然としないですね。結局何がしたかったのかイマイチわからなかった……。
 謎ばかりが残るルートです。霧島と貴広の出会いが掘り下げられるかと思えばそうでもないから、主人公に対する霧島の恋愛感情のきっかけがわからないし、相変わらず貴広の漆黒覚醒のトリガーもわからないし、終盤のあの貴広覚醒展開が霧島の思惑通りだったのかもわからないし、結局意味深に語られただけでナーサリークライムについてもハッキリとは明かされないし。そういや霧島との行為シーンも夢か現か曖昧だし、極東日没にやられた傷が起きたら治っていたことに関してもどんな方法でそうなったのかは謎のままですね。後者に関しては主人公自身が「ナーサリークライムの修復力でもこうはいかない」的なことを明言していたから尚更気になるんですよね。霧島の能力なんですかね。
 そもそも終盤かなりポストアポカリプス的世界観に変貌していましたが、他キャラはどうなったのか。特に隷。このルートでは極東日没とカンパニーの開戦が早かった影響で、貴広と再び相まみえることも叶わず、当初のLABの予定通り極東日没にぶつけられて散ったのか……。
 そういえばなんでラストシーンで貴広がN GIRLを狩っていたのかも不明ですね。本当にわからないことだらけ。
 個人的にはこのルート内ならむしろエンディング後にチラっと触れられた『カンパニーVS極東日没』以後を描いてほしかったまでありますね。恋愛劇としての旨味がない以上、そちらの方が面白くなったように思えます。
 まぁでも、とりあえず三人目のナーサリークライムは判明したということで。あとの二人も本作中で触れられるんでしょうかね。

 アフターではどこぞの時系列で貴広が霧島に性的に鬼畜なことしてましたね……。これも凌辱√か?と。
 アフターでの本編補完を期待していた身としては肩透かし。まぁエロかったからええワ。

●ヒロインについて
 性格的にはそうでもありませんが、「でちゅ」という語尾からして若干クセの強いヒロインではありましたね。
 外見的に好きなタイプではあるし、主人公に好意を抱いてくれているあたり気に入らないハズがないんですが、シナリオ的に全く恋心が活かされていなかったように感じて、なんともイマイチな好感度に留まりました。理不尽な暴力を振るう点もマイナスでしたし。理不尽さのある暴力系ヒロインってあんま好きではないんですよ私。……リニア√での立ち振る舞いの方がヒロインらしかったのでは……?
 そんな霧島香織さん、正体はかの有名(作中)なN GIRLのNo.0ということで、その点には驚きました。しかし結局、その正体がその後にシナリオで活かされなかったのは残念でした……。残りのかずさ√や鈴希√で活かされればいいんですけどね……。

朝霧かずさ√

●シナリオについて
 うーん……良くも悪くも普通ですかね。突出して盛り上がるワケでもなければ、霧島√のように釈然としないワケでもない。いいことではあるかと。
 せっかく本物のALICE IN CHAINSが出てきたんですけどね。それよりもやっとこさ本領を発揮した飯島の方に目が行きました。腐っても元PIXIES、ちゃんと戦えはするんだなと。
 イマイチ盛り上がれなかった要因としては、やはり朝霧かずさの身の上設定が大きいのかなぁと。テーマ的には良かったんですけど、なんとなくモエかんでやる内容にしては毛色が違う気がしたので。化け猫というか猫又というか、ここにきてそんな他に繋がらなさそうな新設定出されてもなぁ……と。
 犬の井上先生はシナリオ上ではわりかし大きな役割を持っていたようにも思えます。不死という長い時間の中での成長・思い出、生と死というものへの意識、記憶復活のトリガーなどなど。ただ、結局この犬、亡くなっても本社からペナルティはありませんでしたし、イマイチ本当に真っ当な本社側の企画だったのか、或いはいつもの如く貴広失脚を狙ったものだったのか、よくわからないんですよね……。細かい部分ではありますがね。

 ところで、鈴希はマジで事の最中どこに姿を隠していたのでしょう……?

 アフターでは媚薬で大変なことに。これ凌辱√か?と思うレベル。これでええんか。

●ヒロインについて
 快活でノリの良いヒロイン、その心中は他者に必要とされたい臆病で寂しがりな女の子。好きなタイプではあります。一緒にいたらきっと楽しいでしょうね。
 毎朝の朝食準備の際、調理場から聞こえる掛け声はクセになりました。ちょやー!
 しかしてその正体は、実は猫が不死と人間の姿を得た存在! 擬人化(?)系のヒロインだとは思いませんでした。猫の擬人化系ヒロインだと、"あの娘"を思い出しますね(わかる人にはわかる)。

●テーマ・メッセージについて
『死を想え』
 死を想い、想像し、恐れることで、今という時を大切にし、自分の命を大切に生きようという意味。
 共通パート内のリニア√フラグかなんかでも少しだけ触れられた考え方ですよね。現在、カンパニーは死を遠ざけて人工的幸福の中におり、生きている実感すら失ってしまった的なお話を飯島か誰かがしていた気がします。その思想を巡って貴広を持ち上げるだの消すだのと本社内はゴタゴタしているようですし、モエかん内ではわりかし重要なメッセージなのかもしれませんね。

鈴希√

●シナリオについて
 うーーーーーーーーーーーーーん……。何とも言えない……。
 基本的な話の筋としてはほとんどかずさ√と同じだけど、かずさ√に比べるとより深く掘り下げられるルート。
 それなりに重要そうなシナリオだったけど、相変わらず唐突且つ説明不足というか、不透明な部分も多く消化不良です。妹(?)がいたという話自体が唐突ですし、幽霊の受肉設定もかずさの設定同様に、モエかんでやるにしては毛色が違ったように思えます。あとはまぁ、かずさ√も併せて考えると若干疑問点も残るしね……。かずさの貴広に対する認識(自身を救ってくれたご主人or鈴希と共に過ごした少年)とか、ALICE IN CHAINSに貴広始末を命令した人物(飯島の仕業or飯島の仕業ではないっぽい)とか。
 さてさて、終盤展開的もわりかしノベルゲームではよく見る展開というか。『ヒロインの存在が薄くなるにつれて誰からも認識されなくなり、そのヒロインに関する記憶も消え、やがて主人公も同様の状態に陥る』ってヤツです。この展開パターンを見るの、私は4作品目なんですよね(内1作品は消えるの主人公なんですけど)。まぁでも2003年発売の作品ですし、もしかしたら先駆けだったのかもしれないです。いやまぁ、探してみればもっと昔の作品でこの展開パターンあるのかもしれませんが。

 ところで、『かずさと鈴希が貴広と過ごした期間』と『貴広が庵原千歳と会っていた期間』の時系列関係ってどうなっているんでしょうね。
 それと、貴広が記憶を失ったきっかけとかいよいよわからない。鈴希が亡くなって意識が途絶えた際、あまりのショックに記憶を失ったとかですかね? 案外あのまま街の人間に連行された後、その流れでカンパニーに入ったというのもあり得なくはないんですかね。うーんわからない。

 アフターでは最終的に性に目覚めてしまってド変態に……。私はこういうの好きです。(鋼の意志)

●ヒロインについて
 ぼんやり系の謎っ子ですね。可愛かったです。胸も控えめで大変よろしい。
 基本的には抜けているヒロインですが、主人公が涙を流せずに苦しんでいるからと死後の世界から舞い戻るほどの想いの強さはなかなかにヒロイン力が高いかと思われます。
 仕草的にもリニア同様に萌えっ娘適性の高いヒロインであったかと。
 大分重要ポジションではあったと思うのですがね。あんまり深く掘り下げられなかったというか、登場回数そのものが少なかったので、もったいないなと。

総評


●シナリオについて
 ポテンシャルの高い作品ではあったと思います。設定やコンセプトは興味をそそられるモノでしたし。
 ただ、シナリオは総合するとイマイチかなと。冬葉√は上手く一つの物語として〆ている印象を受けましたが、それ以外のルート(リニア√・霧島√・かずさ√・鈴希√)は何かしらの"釈然としなさ"が残りました。その中でもリニア√は、まだ展開的にアツい部分があったから良い方という感じですね。
 "釈然としなさ"の要因として最も大きいのが『説明・描写不足』。たしかに物語として必要最低限は語っていたのでしょうが、それだけにキャラクターの心理的部分(恋愛感情等)における根拠が不明瞭でイマイチ納得出来なかったり、ルート間で矛盾を感じさせられたり、ご都合に感じられたり等といった弊害がありました。
 主人公の過去がなにより不明瞭なんですよねぇ。物心つく頃にはカンパニーにいたと言いながら、鈴希やかずさと過去に出会いがあったり、リニアのオリジナルである千歳と過ごした時間もあったりと、わりかしてんこ盛りなんですがね。それなのに、"それ以外の期間"を考察するヒントが全く無いから、例えば「『千歳との時間』と『かずさ・鈴希との時間』はどちらが時系列的に先なのか?」とか、「『かずさ・鈴希との時間』のラスト以降はどうなったのか? カンパニーに連れていかれたのか?」とか、「どういう流れでそもそもカンパニーに入ることになったのか」とか、とにかく様々な疑問が頭を埋め尽くしたままになったワケです。鈴希√とかけっこう重要な内容なんだし、リニア√レベルでもう少しガッツリやってくれてよかったのよ?
 不明瞭点といえば、設定的にも『漆黒の復活トリガー』、『社長の実態』、『ナーサリークライム関連全般』あたりも謎なままなんですよね。ナーサリークライムについては極東日没や霧島兄が意味深なことを言っていましたが、あれだけじゃ正直核心に至る考察なんて出来ないワケですよ。FDで補完されることを期待します。

●キャラクターについて
 ルート担当ヒロインについては各ルート感想の方をどうぞ。

 主人公『神崎貴広』について。ケロQ枕作品の主人公らしく、強くて個性のある主人公であったとは思いますが、他作品の主人公に比べると若干薄味ではありました。シナリオ総評の方でも少し記述しましたが、主人公に関する掘り下げが少なすぎたというのが原因かと。こちらもFDに期待。ホント、何歳なんでしょうね……。性的な面ではかなりのドSでしたね。霧島√アフターは少し引きました……。

 『』について。まさかの女性。千歳の貴広への想いを持っていて、大好きな貴広に追いつこうと漆黒レプリカをその身に宿した結果、貴広を殺さなければならなくなった悲しき人物。最後には漆黒レプリカの反動で消滅するし……。本当は愛するリニア・貴広と三人で一緒に過ごすことを夢見ていたのに……。ってな感じで、リニア√ではなんとも寂しい気持ちになりました。あれだけ他のPIXIESを倒して力を誇示していたのは、きっと貴広に振り向いてほしかった(自分を見て欲しかった)からなんでしょうね……。やり方は歪んでいましたが、個人的にはトップクラスのヒロインであったと考えております。

 『飯島』について。おそらく反転アンチですよねこの人。どこぞのBad endで飯島が貴広を頼って昔の態度に戻る展開がありましたが、そこからはPIXIES時代の飯島が多大な尊敬と信頼を貴広に抱いていたことが伺えました。飯島の恨みの種は『貴広が極東日没戦で仲間(おそらく自身を含む)を置いて消えたこと』なワケですし、大きな失望と共に反転してファンからアンチになっていたと考えるのが妥当な気がするんですよね。ちなみに散り方として最も良かった(スカッとしたとかそういうのじゃなく)のは鈴希√かな。かずさ√をプレイする前はただの噛ませイキリだと思っていたのですが、ちゃんと戦えていて見直しました。

 『おやっさん』について。肝の据わった有能爺さん。リニア√における隷戦で当然のように貴広と島に残るのかっこよすぎる。元はLABのエースということで、カンパニーの中核にいたからこそなのかもしれませんね。それにしても今思い返すと、おやっさんいなかったら詰むポイント多いな……。

ここ好きポイント


●極東日没。ケロQ枕作品では度々ムキムキのおっさんが出てきます。『最強の土方』とかいう称号からしてシュールですし、『大阪の人間を一人一人ぶん殴って回ったとかいうエピソード』も拍車をかけてシュールだけど、絶望的に作中最強・最凶でギャップがすごい……。 f:id:kingStaku:20210417103413p:plain

●アホ面リニア可愛い。リニアは表情豊かで本当に可愛かったですね。困り顔も可愛いのです。 f:id:kingStaku:20210417104235p:plain f:id:kingStaku:20210417105013p:plain

●アホ面といえば鈴希も良かった。リニアとはまた別ベクトルの萌えがありましたね。 f:id:kingStaku:20210417105157p:plain f:id:kingStaku:20210417105231p:plain

●戦闘シーン。二重影からこういう描き方を引き継いでいて良いな、と。かっこいいです。 f:id:kingStaku:20210417104322p:plain f:id:kingStaku:20210417104931p:plain f:id:kingStaku:20210417104842p:plain

おわりに


 モエかん感想、いかがだったでしょうか。
 これにて、今回は〆たいと思います。
 次のプレイ予定は『モエてん』です。FDやってくおー。
 それでは✋