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ノベルゲーム感想と思考出力

『アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ
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 同人サークル『人工くらげ』さんの三作目です。2013年から2015年にかけて、章単位でリリースされました。
 『ノベルゲーム創作』を題材とした作品はこれまでにも複数目にしてきましたが、その中でも一際知名度が高い(当社比)本作品はいったいどのような物語を見せてくれるのでしょうか。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 夏の終わりに、主人公はひょんなことからノベルゲームをつくることになる。
 とりあえずシナリオを書き出してみたら
 紙の上でも現実でも、事態は思いがけない方向へ展開しはじめる。

 引用元

所感


 とても良い作品でした……!
 個人的には世間的な評価以上に楽しめた作品だったなと。
 最初こそ少し退屈ではありましたが、しっかり尻上がりに面白くなっていくタイプの作品です。
 展開的には粗削りではありますが、作者の胸の内にあったであろう強いテーマやメッセージがしっかり込められており、考察の余地もあります。所謂『同人らしい作品』と表現するのが正しいかもしれませんね。

 作品をしっかり掘り下げて読まれる方や、何か創作に打ち込んだことのある方であれば、人一倍楽しめる作品かもしれません。

 本作は全編フリーゲームです。以下の公式ページからダウンロードすることが出来ます。ぜひプレイしてみてください。(プレイ時間大体10時間程度かな?)
jnc-klg.sakura.ne.jp

~以下ネタバレ有~











各章感想


第一章

●シナリオについて
 序章も序章という感じです。面白いか否かを決められる段階ではない。
 惹きつけられる序章だったかと言われればそうではありませんね。最後にアルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ(作中イベント)の概要が告げられた際には、少し面白そうだなぁとは感じましたが。
 まぁあくまでも序章なので。今後面白くなってくれることを期待しています。

 ただそれはそれとして、実は私も創作者の端くれだったりするワケですが、この視点からすると、後先考えずにシナリオを書いている気のある主人公には少しイラっと来ます。なので、今後主人公が創作者としてどう移り行くのかという点にも注目していこうかなと考えております。

第二章

●シナリオについて
 少し面白くなってきました。
 プレイ前は『ただノベルゲームを制作する物語』だと思っていたのですが、SF要素が混ざってきたこともあってかワクワクさせられますね。良い意味で予想を裏切られました。
 また、本章からキャラクターの掘り下げも本格的に始まった感じがして、その点も良いですね。学園モノ世界線では機見さん、東方二次創作世界線では野々原、SF世界線では主人公の山賀自身といった感じ。綺麗で分かりやすい構成です。

 個人的に注目したいと思ったのが、本作品における物語の展開手法ですね。本作ではどうやら、焦点の当たっている3つの世界線を完全に別物として扱うのではなく、主人公を世界線間で入れ替えたり、別の世界線の主人公と対面させたりすることで、"作品全体として"物語を展開するというアプローチの仕方になっているようです。
 ノベルゲームでは通常、選択肢で分岐して以降の世界線は互いに干渉しません。するとしても、それが"俯瞰的に見れば地続きの物語(A世界線√完走後にB世界線に跳ぶ的な)である場合"や、"グランド√で今までの個別√での何かしらが繋がったり回収されたりする場合"が大半です。要は、基本的には別物の物語として扱われます。
 しかし、本作では焦点の当たる3つの世界線が"並行的に進行し"、また、"互いに干渉し合うことで、一括りの物語となっている"と考えられるワケです。簡単に言えば、"3つの個別√が同時に進行しつつ、互いの個別√が互いを成立させるために無くてはならない存在になっている"って感じです。この点、けっこう特殊なのではないかと。
 ……正直説明するのがめちゃくちゃ難しくて、正確に伝えられている自信はありません……。
 まぁともあれ、一先ずは盛り上がってきたことを嬉しく思いつつ、第三章へ進みましょう。

第三章

●シナリオについて
 面白かったです……!!
 "激動"って感じですね。
 ストレスを全く感じさせないスピードで真相に迫っていきますし、鳥肌の立つ場面もありましたしで、個人的には満足の出来る章となりました。

 前章感想でも述べましたが、本作は3つの世界線を同時に進行させつつ、それらを別物ではなく一括りの物語として仕上げるという構成になっております。
 ただ、前章までのプレイヤー視点での進行は、あくまでも「一つ目の世界線➡二つ目の世界線➡三つ目の世界線」という世界線ごとの順番でした。
 しかし、本章ではプレイヤー視点における世界線の切り替えが頻繁に発生し、まさに本作品の手法の本領発揮と言わんばかりに如実な構成になっておりました。
 そういった点も、展開が盛り上がる原因の一端となってくれたのかなとか考えています。
 加えて、演出的にもプレイヤー視点における世界線が変更されたことや、今読んでいる展開がどの世界線で起こっている出来事なのかということが、一目で分かるような工夫が施されているという点も評価したい点ですね。いちいち自分の頭の中で場面把握に努めなくても良いというのは、ストレス無く物語を読み進める上でも必要な要素だと考えております。製作者様の心遣いが垣間見えました。ちなみに以下のような感じ。

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 個人的に最も心に残っている場面は、全世界線の異常(主人公の世界線間での入れ替わりや世界線移動)が解決する場面ですね。全ての世界線においてクライマックスな展開が繰り広げられており、手に汗握りましたし鳥肌も立ちました。
 +1世界(東方二次創作世界線)における、『世界線要素の排他性』。野々原による、別世界線に跳ばされた主人公と会話しているかもしれない『その世界線の自分』への嫉妬と不安の吐露。別の世界線の主人公は想い人に該当しないという感覚と意志。
 ±0世界(SFモノ世界線)における、『世界線要素の唯一性』。別世界線から来た自分に向けて主人公が放った「お前のいる世界は、良い世界か?」という質問に対する、「そんなこと考えたことが無かった。僕には自分の世界が全てだもの。良いとか悪いとか、他の世界と比べても意味ないだろ。僕は、僕のいる世界にしか居ることが出来ないんだから」という返答。
 -1世界(学園モノ世界線)における、『違いを受け入れても尚共通する意志』。たとえ別人であっても助けたいと、轢かれそうな野々原を救うために道路に飛び出した主人公の決断。
 異なる世界線で発生しているハズの別々の出来事。しかしそれら全てが、『己の世界線における自分』と『これまでの人生の中で行ってきた選択』を肯定しているように感じました。
 いや、ホント、もう、ヤバイ。(語彙力消失)

 さて、明かされたアルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカやパラ子の真相からして、ここからは事態解決とノベルゲーム制作、そして主人公とヒロインの行く末全てのゴールに向けて物語が加速することになるのでしょう。少し早い気もしますが、ラストスパートに入った気配を感じます。
 ワクワクをそのままに、第四章へ進みます!

第四章

●シナリオについて
 小休止って感じですかね。面白さを語れるパートではないといいますか。
 役割としては、最終章に向けてプレイヤーの目を±0世界にのみ向けさせるという目的も持った章だったのかなと推察しております。
 というのも、±0世界における本章エピソードが『幕間』的だったのに対し、+1世界と-1世界の本章エピソードに関しては明らかにたたみに来ているなという印象を受けました。所謂『エピローグ』ってヤツですね。
 まぁ、真相が判明した今、±0世界以外に焦点を当てる意味自体が薄れましたし、+1世界と-1世界の役割は第三章で終わったような気もしているので、納得はしています。おそらくはアルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカというイベント自体が開かれることは無いでしょうしね。
 にしても、機見さんのいきなりの結婚、しかも妊娠済みって事実は衝撃でした。てっきり-1世界では主人公とくっつくと思っていただけに尚更。しかし、結婚式の場面はなぜだか見入りました。主人公が「今日が中止になってしまった火の七日間の七日目なのだ」と理由も分からず結論付けた感覚も、なんとなく感覚では分かるような気がしています。

 さて、そして本題。
 ±0世界の本章ラストシーンにて、妖精パラ子のさらなる真相が明かされました。それは、『主人公の未完作品の登場人物であるパラ子は、作品が完成すればその存在は作品に固定され、作品外で活動することが出来なくなる』というもの。だからこそ主人公は「作品を完成させたくない」という結論に至るワケですが……。
 この構図、めっっっっっちゃくちゃ好きなんですよね。
 主人公が作品を完成させれば、今いるパラ子(作品外に存在するパラ子)は消失する。だから主人公は作品を完成させたくない。
 でも消失する当の本人は、作品を完成させて欲しい。そのために今まで何万もの世界線で作品の完成を試みてきた。
 つまり、パラ子の願いが叶えば、主人公とパラ子はお別れすることになる。そしてパラ子の願いを叶えるトリガーは主人公が握っている。つまり、パラ子の願いを叶えて別れを選ぶか否かの決断は主人公に委ねられているという構図。
 切ないですよね。好きの塊です。
 加えて、さらなるダメ出しとでも言わんばかりに流された最終章予告。これまでの次章予告ではたくさんのセリフや場面が公開されておりましたが、一転して最終章予告で公開されたセリフは、「居る?」「居るよ」「生きてる?」「生きてるよ」というほんの一言の問答二つ(トータルセリフ4つ)のみ。しかし、むしろ、だからこそ、心にジーーーーーーーーーーーーーンとくるものがありました。
 推察されるのは、パラ子の願いを聞き届けて作品の完成に尽力する主人公が、それでも名残惜しくもパラ子の存在を逐一確認せずにはいられないという場面。そして、その問いかけに、パラ子が律義にも付き合い続けるという流れ。つまり、最後には────。
 うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 (ここで本章感想は途切れている。最終章に進んだようだ)

最終章

●シナリオについて
 とても面白かった……!
 特に「アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカを開催する」というセリフからの盛り上がりが凄まじく、尋常じゃない鳥肌と汗で風呂上りの身体が大変なことになりました……。(無数の選択肢が出現して『アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ』会場に跳ばされる演出、考えた方は天才か……?)
 主催者(パラ子)が、もう行う意義も無いと切り捨てた『アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ』という作中イベント。それを主人公の意志で開催し、巡り巡って消失したパラ子を作品外に取り戻すという展開は、純粋にアツく滾るモノがありました。主人公が主人公としての務めを果たしていた点も要因の一つでしょう。いつだって主人公が誰かを取り戻すために奮闘する展開はアツいモノです。

 また、作中の『アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ』にて、さりげなく+1世界の主人公と-1世界の主人公が言葉を交わしていたのが個人的には嬉しかったです。+1世界の主人公が作品をマスターアップ出来たのは、間違いなく-1世界の主人公からの世界線を越えた激励があったからで。だからこそ、二人が揃って作中の『アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ』に参加し、言葉を交わしている光景というものには、思わずジーンと来るものがあるのです。
 正確には第四章でのセリフになりますが、1世界の主人公から+1世界の主人公への激励の中に、こんなセリフがあります。
 「野々原がいなきゃ完成できんだろ。お前のことだから。僕のことだから」
 別世界線の自分に向けているからこそ出来る激励であり、別世界線の自分から送られたからこそ胸に染み入る激励なんですよね。「お前のことだから。僕のことだから」という言い回しがとても好きです。

 結局、原理面において不明点や曖昧な部分は多く、その点では不完全燃焼と言えます。しかし、そうでありながらも「重要なところはそこではない」と思わせてくれるほどに力強く走り抜けてくれた作品であったとも思います。

Extra

●シナリオについて
 前日譚というかオマケというか。
 設定補完目的且つ本編で軽く示唆された『野々原が漫研に入っていた場合』のIFを書いてみました~って感じなのが本エピソードなのかなと推察しております。
 語ることも特にないですね。野々原との『運命力』の強さが感じられるお話ではあったと思います。

総評


●シナリオについて
 全体を通して、まず個人的には、本作は世間評価以上の作品であったと感じました。
 たしかに、SF要素やノベルゲーム制作要素等、様々な点で中途半端な作品であったとは思います。結局どういう原理でパラ子が発現したのかという点とか、ノベルゲームはシナリオとイラスト書いていれば出来るモノでは無い点とか、他世界線のモノを持っていてはいけないのに他世界線の自分が作ったノベルゲームは持っていていいのかという点など、ツッコミどころはいくつもありますからね。
 しかしそれらマイナス点を吹き飛ばすほどに、本作は展開とテーマ、そしてメッセージ性で突き抜けていたと言えます。

 そもそも本作は、『ガッツリノベルゲームを作る系作品』とか『ガチSF系作品』のような系統ではなく、あくまでもそれら要素を含んだ『SF要素を体験しながらノベルゲームを作っている主人公の日常』であったのだろうな、と。これはつまり、-1世界の主人公が制作した『学園モノ作品』とも関係していると考察しております。
 -1世界の主人公は、作品を制作するにあたって、「オセロ一辺倒のオセロ物語にするのではなく、"あくまでもオセロ部に所属している女子生徒の物語"を書きたい」的なことを言っていました。オセロという要素を物語の根幹的題材に持ってくるのではなく、あくまでもサブ的な題材として用いるということですね。
 これ、本作自体にも言えるのではないでしょうか? 『ノベルゲーム制作要素』や『SF要素』はあくまでも本作を彩るためのサブ的題材であって、本作の根幹には別の題材が存在している。私にはそう思えましたし、ライターさんが意図的に仕込んだヒントだろうとも考えております。作中にて、大して物語的に意味もないような『日常的言動』が多分に散りばめられていたのも、おそらくは日常感を演出する意図があったのだろうな、と。

 では、はたして、本作の根幹にはどのような題材が聳え立っていたのか。
 私は、本作の根幹的な題材は『未完成作品への懺悔』だったのではないかと考察しております。
 詳しくはこの後の<テーマ・メッセージについて>にて記述しますが、おそらくはパラ子が未完成作品の象徴であり、本作は彼女を救う物語という裏の側面も持っていたのだろうなと考えております。
 『SF要素を体験しながらノベルゲームを作っている主人公の日常』という表の側面と、『パラ子を救う物語』という裏の側面。両面が上手く調和し、本作として綺麗に昇華されている様には、なんとも感銘を受けますね。

 そういえば、主要キャラクター(主人公、野々原、機見)が全員揃っていないとそもそもこの物語が成立しなかったという事実もまた良かったですね。全員がいたからこそ成立する────つまり全員が役割を持っている作品って好きです。
 ……ちなみに、間違いなく主人公────山賀真人のモデルは本作ライターの山科誠さんであると考えられるワケですが、機見さんが必ずどの世界線でも主人公以外と結婚したり、どの世界線でも主人公と野々原が付き合うことになるのは、ノンフィクションが織り交ぜられている所以なんですかね……?

●キャラクターについて
 『山賀 真人』について。主人公。おそらくは作者の投影。
 どの世界線の主人公も、他世界線の要素を目にしてもなお自身の世界線を肯定していた点が個人的評価ポイントです。パラ子の代わりにアルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカを開催しようとする姿勢も良かったですね。

 『野々原 茜』について。実質ヒロイン。
 主人公にとっては運命の女性ですよね。恋愛面でもそうですし、創作面でもそもそも彼女がいなければ主人公はノベルゲームを制作しない。機見さんの結婚式で流れた夫婦の馴れ初めビデオの構成が夫婦丸ごとの時系列順だったことから、主人公は「機見さんと旦那さんが出会う前から二人は生きていたんだ」的な感想を残します。これもまた、『運命』というものを限りなく感じ取れるようにした演出だったのかなぁなんて考察しております。

 『機見 恵』について。理学博士。大先輩。
 てっきり-1世界では主人公とくっつくと思っていましたが、どの世界線でも研究室の助手と結婚しましたね。しかもデキ婚。妊娠差分の立ち絵が用意されていたのは細かいなと思いました。
 ノベルゲーム制作では-1世界以外で大して口を挟んでいないあたり、一見あまり重要度の高いキャラではないのかなとも思えます。しかし実は、他ならぬ彼女が本作品の舞台となる大学に入学する決意をすることが、本作品で焦点の当たった世界線が確立するトリガーになっていたりします。加えて、野々原がサークルに入るきっかけになったのが、機見さんと主人公のアニメ感想会を聞いたからってことなので、その点でも必要不可欠なキャラクターなんですよね。重要度めちゃくちゃ高い……。
 主人公が作者の投影だとすれば、どの世界線でも手の届かない機見さんにもモデルはいるのでしょうか?

 『パラ子』について。妖精。アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカの案内人。主人公の未完作に登場するキャラクター。
 本性を最初に見た際には驚きましたが、個人的には本性のとげとげしくもくっついてくる感じが凄く好きでした。
 最後は再び発現することが出来て良かった。彼女の冒険はこれからも続くワケですが、アフターがあれば読んでみたいですね。
 正直な話をすれば、主人公が最後あたり彼女に思い入れを見出す根拠が少々薄いなとは思いました。ただまぁ、やはり『未完成作品への思い残し』在りきであると考えれば、いちおう納得は出来るのかなってところで自己解決しました。

●テーマ・メッセージについて
未完成作品への懺悔
 本作の根幹にあるテーマだと考察しております。
 作中もおいて主人公が小さい頃に書いた未完成作品。そのキャラクターだったパラ子。そんなパラ子が自身の物語を完成させられる主人公────山賀を無数のパラレルワールドから探し出すために開いたのが『アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ』という作中イベントであり、本作は物語を完成させ且つ彼女を救う物語でした。
 つまり、パラ子は少なくとも作中においては『未完成作品の象徴』とも言える存在だったワケです。しかしそれは何も作中に留まらず、パラ子というキャラクターは、現実においてもライター山科誠さんにとっての『未完成作品の象徴』であり、また懺悔の対象であったのではないかと考えております。
 というのも、本作にはいくつかの『現実(作品外のプレイヤーの世界)』を思わせる要素が登場します。
 まず、主人公の名前が『山賀真人』である点。これは明らかにライターである『山科誠』さんがモデルになっていると考えられます。
 次に、±0世界に登場した別世界線の山賀真人。±0世界の山賀と彼が過去の照らし合わせを行う際、±0世界のモノとは異なり、彼の挙げる要素(戦隊ヒーローやアニメ、Webページ、時事ネタ等)は全てが私たちプレイヤーにとって聞き馴染みのあるモノでした。つまり、別世界線の山賀真人は"限りなく私たちプレイヤーのいる世界線と近しい世界線から±0世界に訪れた"ということになります。
 これらを総合すると、主人公────山賀真人はライター山科誠さんの『投影』であり、±0世界を訪れた別世界線の山賀真人はほぼライターの山科誠さんの『分身』だったと考えられるワケです。
 社会人として登場した別世界線の山賀真人は、もうノベルゲーム制作を辞めたと言っていました。また、±0世界から去る寸前、±0世界の山賀がパラ子の正体に気づくための大ヒントを残したのは別世界線の山賀真人でした。つまり、パラ子を救うための重要なトリガーになっているんです。
 このことから私は、本作は山科誠さんによる『過去の未完成作品に対する懺悔』を題材にした、『思い残しを解消する物語』だったのではないかなと考察したワケです。
 まぁもちろん、現実の山科誠さんはノベルゲーム制作を辞めていないので、若干論理的に穴はありますが……。そこはご愛敬。

他世界要素の排他性と自世界要素の唯一性
 第三章で如実に表現されたメッセージだったと考えております。
 自分の世界線の要素であることが重要であり、別世界線の要素と比較するのは意味がない。
 意識的なり無意識的なり行ってきた自分の選択と、だからこそ存在するこの世界線を、私たちは肯定して良いのだと。
 私はそういうメッセージを、本作から受け取りました。

おわりに


 『アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ』感想、いかかだったでしょうか。

 とても良い作品でした。興奮も冷め止まぬままに完結まで駆け抜けることが出来て本当に良かったです……!

 次にプレイする作品は……というか、『駆け抜け★青春スパーキング』を中断しているので、そちらを再開していこうかと考えております。 『雨の日と雨の日の次の日』を予定しております。

 それでは✋