目次
はじめに
ちゃすちゃす✋
どーも、永澄拓夢です。
てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!
『忘れものと落とし物』
かの商業エロゲ中古相場トップクラスと名高い『書淫』。本作は、そのライターである『深沢豊』先生によるフリーゲームです。
現状、最も深沢作品の中で触れ易い作品とも言えるでしょう。
噂によれば、本作の方向性は『書淫』とも近しいとかなんとか。期待が高まりますね。
というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!
あらすじ
ゲームセンターで出会った『彼女』。
後輩の少女『あさか』。
二人の間で揺れる『僕』。
────少し歪んだ『恋』物語。
引用元────は無いです。私の自作あらすじです。これ以上はネタバレになるので書けません……。
所感
めちゃ面白かったです……!
短編と言うことで、クッション目的で挟んだ作品だったのですがね。嬉しい誤算でした。
本作、何言ってもネタバレになるので、少なくともここ(所感欄)では何も語れないんですよね……。
一先ず、深沢先生の文章力の高さをめちゃくちゃ感じました。ちゃんと『読ませる』文章になっていて、非常に没入しやすい文章でしたよ。いや、ホント凄い。
システムも若干独特で、カレンダーと日記を用いてエピソードをどんどん進めていく感じ。その点でも興味深い作品だったと言えますね。
一風変わった『歪んだ恋愛物語』を読みたい方にはオススメしたい作品です。
該当しない方もとりあえずやりましょ。ね? 基本的には3時間くらいで終わるそうですので。読むの遅い私ですら5時間程度で終わったので。マジでオススメですよ??? 以下にダウンロードリンク添付しておくので!
insertcoin.languex.jp
~以下ネタバレ有~
総評
●シナリオについて
シナリオ構成からして、完成度の高い作品だと思います。
そもそもの文章力もハイレベルですし、没入度は非常に高かった……。
むしろ短編だからこそ良さを発揮出来た作品だったとも言えるのかもしれませんね。
シナリオにおいて良かった点としては、何と言っても『ヒントの出し方が絶妙だった点』が挙げられるでしょう。
本作は、終盤にて全ての真相がつらつらと語られるのですが、それまではほとんど真相にはノータッチで物語が進行します。
ただ、終盤の真相開示に至るまでにはしっかりといくつもの『違和感』をプレイヤーに与えてくれるんですよね。その違和感がプレイヤーの頭に存在することで、いざ真相開示を受けた際に「あ~~~~~~~なるほど!!」となるワケです。
『全く何も分からない状態』よりも、『何かに気づきかけている状態』の方が、真相に対する興奮度は上がるでしょう。本作はそうなるようシナリオが組まれていた。大きな評価点です。
ここからは、<総評>というよりは私個人の<感想>に近くなりますが……。(MYTH感想があまりにもそういうの少なかったので、今後はそういうのもちょろっと書いていこうと思った次第です)
こういう終盤のどんでん返しによる盛り上がりがめちゃくちゃ好きでしてね。本作は『読ませる』文章による没入度の高さも相まって、非常に感情を高ぶらせてくれました。
また、非18禁でありながら、『歪んだ恋物語』としての艶めかしい描写も欠かしていない。これも個人的には非常に評価したい部分です。明日香というキャラクターの根幹に『性的行為』という要素が強く根付いていた以上、ああいう生々しい描写は必須だった。むしろ、これをあえて非18禁で成し遂げたこともまた凄いな、と……。
恋愛感情的な部分も、短編でありながら申し分ありませんでしたしね。中盤までは「恋愛感情発露の根拠が薄い」と思っていたのですが、真相が開示されてからはその不満も解消された次第です。いや、”納得した”という表現の方が近いのかもしれませんね。
結局、明日香が『彼』に囚われ続ける以上は、相思相愛ではないワケですから。これは、『代用』という歪んだ恋愛関係の物語なのですから。
……ところで、本作。『多重人格モノ』『主人公名』『ヒロイン名』『プレイヤーが救済人格』『最後はオリジナルが最初のヒロインを救う』『多重人格の原因がそもそもその最初のヒロイン』という複数要素からして、某アニメ化もした商業エロゲ作品の元ネタなのでは……? とか思ったりもしたのですが……。考えすぎですかね?
●キャラクターについて
『僕(タカシ)』について。主人公。多重人格者。
覚醒後の主人公度数は非常に大きいモノだったかと。
『忘れもの』を取り戻し、『落とし物』を手に入れた彼は、間違いなくヒロインを救うに足る器でした。
結局最後まで家庭問題は解決しませんでしたが、本作の物語を”経験”した彼ならば、きっと家族に向き合えると思います。
『明日香(彼女B)』について。セラピスト。『僕』の多重人格の原因。
理想を押し付けすぎて彼氏だった『彼』を自殺に追いやった存在。マワされていたアレって、マジで無理矢理ではなく望んでやっていたんですね。むしろ逆に『彼』の方が良心の呵責に耐えられなくて潰れるとか相当ですよ。本人はそれに対して疑問を浮かべていましたし。良い感じに歪んでいる。
彼女の歪みは、本作に無くてはならない要素なんだろうなぁ……と。
結局最後はどこに行ったんでしょうね……。
『彼女A(彼方)』について。明日香を元に創られた最初の別人格。『僕』好き好きウーマン。
正直、この人格は救われたのかどうか曖昧ですよね……。本人は名前を貰って満足げに消えていきましたが、役割的には完全に『代用』か『邪魔者』としての扱いでしたし……。ちょっと心残りです。
『ボク(彼此)』について。彼女Cに創られた最後の別人格。『全てを知っている者』。
『僕』を後押ししたり、『僕』を乗っ取ろうとする演技でヒールを演じて明日香の背中を押したりと、間違いなく終盤のMVPですね。さすがは集大成とも言える人格。真相開示も全部彼の語りでしたし、出番の割に超重要キャラでした。
『彼』について。明日香の元カレ。自殺者。
明日香から押し付けられる理想と自らの良心の呵責に押しつぶされて自殺したということで、ある意味の被害者ではあるのでしょうね。クズかと思ったらそんなことはなかった。アーメン。
『両親』について。トラブルの種。お前らは許さん。
●テーマ・メッセージについて
■「恋愛関係は、一方的ではいけない」
先に言っておくと、こんな文言は作中には存在しません。これは、私が『僕』のセリフから読み取ったメッセージ的な部分をこねくり回して作り上げた文言です。多分ニュアンス的には間違っていません。
ここでいう『一方的』とは、単に片思いだとかそういう意味ではありません。『ただ好きという感情を”与えてもらっている”だけ(受動)』だとか、或いは『自分の気持ちと理想を相手に押し付け続けるだけ(能動)』という意味です。
前者は『僕』が持ち続けた意志。後者は明日香の『彼』に対する失敗ですね。
要は、前者であれば、好きだと思わせてもらっているだけではダメで、相手に何かをしてあげなければならない。後者であれば、自分の理想を押し付けるだけではダメで、相手の気持ちを汲み取ってあげなければならない。
これ実際に、本作終盤では『僕』と明日香の間で成し遂げられているんですよね。『僕』は『彼』の代わりとして明日香を支えてあげようとしていますし、明日香は『僕』の気持ちを汲み取ろうと努力している。
だからこそ私は、本作の伝えたかったことの一つはこれだったのだろうなと解釈しました。
おわりに
『忘れものと落とし物』感想、いかかだったでしょうか。
ここまで面白いとは想定外でした。ホント、嬉しい誤算です。最近はこういうパターンが多いから嬉しいですね。
次にプレイする作品は……未定です。かけぬけ終わらせるかもしれないし、また別の作品をプレイするかもしれないし。
そのあたり気になる方は、Twitterを覗いてみてくださいね。
それでは✋