BRAIN➡WORLD

ノベルゲーム感想と思考出力

『各務家~食卓物語~』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『各務家~食卓物語~』


 ノベルゲームコレクションで公開されているフリーノベルゲームです。『デスゲームは始まらない』に引き続き、同人ゲーム・オブ・ザ・イヤーで紹介されたことをきっかけに興味を持った作品の一つとなっております。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 知れるものと知らざるものとがあり、その間に知ることの扉がある。
 【オルダス・ハクスリー

 どこにでもいるような幸せな家族の物語です。登場人物それぞれの視点から読む事ができます。

 ありふれた日々の隙間から抜け落ちていくものを、一緒に見つけて行きませんか?

 引用元

所感


 面白かったです。
 描写されている風景は普遍的な光景なのに、それを俯瞰することによって少し考えさせられる。そんな内容の作品となっております。『家庭』を題材としているため、没入出来る方も多いかもしれません。
 本作は1時間程度で完走することが可能な作品ですので、ぜひ隙間時間等でプレイしてみることをオススメします。日常風景の見方が、本作プレイ後に少し変わるかもしれませんよ。

novelgame.jp



~以下ネタバレ有~











総評


●シナリオについて
 興味深い作品でした。面白かったです。

 描写されているのは、どこにでもありそうな『家庭』────『各務家』のとある一日。そんな日常風景を、各務家に属する各キャラクターの視点からそれぞれ見るというのが、本作の主な内容となります。
 本作の面白い点は、やはり『キャラクター毎に考えているコトや見えているモノが全く異なる点』でしょうか。いや、人間である以上は当然のことではあるのですが、本作では『家族』を題材としてそれを描写することによって、より身近な一種の『あるある』として共感させられるような作りになっているのです。この点、各キャラクターの造形も非常に高い普遍性で”再現”されており、ますます共感させられました。これもまた工夫なんだろうなぁ……。
 しかし、本作の魅力はそこに留まりません。本作では上述によって生じる『家族のすれ違いによる歯車の歪み』を描写した上で、最終的にはとある出来事をきっかけに『歯車の歪み』を矯正しています。ここで重要になってくるのが、唯一家族に属さないキャラクターである笑楽ちゃん(長男の彼女)の存在なワケです。彼女は本作の最終視点を担当するキャラクターなのですが、彼女のみ視野の広さがズバ抜けているんですね。基本的には主観的にしか物事を考えられない各務家の面々とは対照的に、彼女は常に各務家の面々の裏事情や考えを読み取って最適な行動を取ります。その結果が、終盤において歯車の歪みを矯正するに至るワケですね。要は、本作では各務家+彼女の視点がそれぞれ描写されたことによって、『主観しか持ち合わせないことの危険性』と『他者の立場に立って考えること(+相手を知ること)の重要性』が示されたというワケです。個人的には、この2点を身近な題材である『家族』を以てして伝えたことこそが本作の大きな魅力であると考えております。共感性は段違いだったかと。
 まさに、「知れるものと知らざるものとがあり、その間に知ることの扉がある」

●キャラクターについて
■「睦祈」について。各務家次男。末っ子。
 無邪気な子供。皆に愛されるタイプですね。まだ悩みとは縁遠い年頃なため、本作における癒しです。

■「ママ」について。各務家母親。
 典型的な更年期の母親像という印象です。思い込みが激しく、何でも決めつけて子供を叱ります。また、家庭を第一に考えているあまり、視野が狭くなりがちといった感じですね。
 悪意は無いどころか愛故の結果なのでしょうが、年頃の子供にとって彼女のような干渉の仕方はなかなかに鬱陶しくもあるのでしょう。その辺は祈跡の反応からよく伺い知れますね。

■「祈跡」について。各務家長女。
 典型的な年頃の女の子という印象ですね。自分の在り方について考えつつも自我を強く保ちたい年頃なのでしょう。なかなか自分を他者に理解してもらえずに苦しむ時期でもあります。かといって、家族に相談するのは躊躇ってしまう時期でもあるんですよね……。私は男なので女の子について詳しくは分かりませんが、この年頃だと女の子の方が家族とディスコミュニケーション気味であるという印象がありますね。

■「パパ」について。各務家父親。
 典型的な大黒柱的父親という印象。仕事ばかりの毎日。それでいて、一家を養っている立場であるのになかなか家族からは感謝されない。息抜きの仕方も限られる……。……私も家庭を持てば、こうなってしまうのでしょうかね……。
 私は少なくとも本作をプレイして、もっと子供の頃に父親へ感謝の気持ちを伝えれば良かったと思いました。反抗期が無かった私ですらこうなのですから、きっともっと後悔する方もいらっしゃるのではないでしょうか。

■「歩」について。各務家長男。養子。
 養子であるが故の悩み。『自分の存在意義』……。自分のみ血の繋がりが無いというだけでも不安に駆られるでしょうに、彼は長男ですからね。より両親から求められることは多いワケで……。そんな中で生きてきた彼の心境がよく伺い知れます。
 最後にパパから野球に誘ってもらえた時の彼の気持ちを考えると、少し泣けてしまいますね。

■「笑楽」について。歩の彼女。
 非常に視野が広く、他者の裏事情や考えを汲み取ることが出来る気配り上手な女性です。実質、各務家の歪みを矯正する存在でもありますね。超良妻かと。彼女が存在しない場合の各務家ってどうなっていたのでしょうかね……。どこかで誰かの限界が来て瓦解してしまっていたのか、或いは何だかんだギリギリのところで家庭が保たれていたのか……。

おわりに


 『各務家~食卓物語~』感想、いかかだったでしょうか。

 他者の立場に立って物事を考えることの重要性……。

 次にプレイする作品は、『A-Line』か『MECHANICA』を予定しております。

 それでは✋