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ノベルゲーム感想と思考出力

『A-line』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!

『A-line』


 同人ゲーム・オブ・ザ・イヤーでも挙げられた本作。しかし私のTwitterのTL上では、それ以前からチラホラと良い評判が流れていました。
 当時から期待はしておりましたが、なんだかんだプレイするのは遅くなってしまいましたね……。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 終わらせるための答え合わせ。

 2021年、10月24日。
 今日、僕は初恋を殺す。

 引用元

所感


 とても引き込まれる作品でした。
 思春期男子の失恋による心情を非常に上手く描写していて、読み応えがあります。
 キャラクターの感情が強くダイレクトに伝わってくる作品は、かくも良いモノなのだなぁ……と。

 本作はフリーゲームであり、1時間ほどで完走出来るほど手軽な作品でもあります。興味のある方はぜひ手に取ってみてくださいね。

novelgame.jp



~以下ネタバレ有~











総評


●シナリオについて
 独白を主体とした作品として、非常にクオリティの高い作品だと感じました。
 ここまでキャラクターの感情に移入させられたのも久々です。それほどまでに、視点者(主人公)の心情描写が巧みだった。

 10年片思いを続けていた相手(従姉)の結婚。既に確定した初恋の結末。本作のシナリオは、始終主人公が自らの恋路の終焉を見届けるためのモノです。主人公は大学受験を控えた高校生で最も多感な時期────『思春期』。そんな主人公が紡ぐ独白は、何ともみっともなく、子供じみていて、そしてどうしようもなく『感情に正直』なんですよね。もう手の届かない初恋の相手への尾を引く気持ちと、彼氏側への理不尽とも言える暴力的な感情と、そして何をしようとも変えようのない結末に対する喪失感や諦念。それら不安定な心情が全て独白を通してプレイヤー側へ伝わってきます。
 主人公の恨みがましい独白を読んで、「もっとちゃんとアプローチしなかった主人公が悪い」と切り捨ててしまうのは簡単です。現に主人公は、従姉という近しい距離感に胡坐をかいて、アプローチともいえるアプローチをしてきませんでした。それこそ、想い人である従姉に気持ちすら察されることの無いレベルで。だからこそ、ある意味主人公が失恋に至るという結末は自業自得なんです。外野である私たちは、そんな正論で主人公を殴ってしまえる。かくいう私も、読み始めた当初はそう心の中で毒づいていました。しかし本作は上述した通り没入度の高い作品。短い時間でプレイヤーの心を取り込みます。取り込まれてしまえばもうそのような正論で殴ることは出来ない。主人公の、自分を棚に上げたようで、それでいてそんな自分を自覚してしまっているような何とも言えない胸の内に寄り添うことしか出来ない。
 本作はきっと、プレイヤーを感情移入させることが評価を得る絶対条件となる作品なのでしょう。とても難しいことです。ましてや本作のボリュームは1時間程度。30時間かけても感情移入させることが叶わない作品だってゴロゴロと転がっている荒野において、何とも強気な試みです。しかし本作は、そんな条件を成し遂げるに足るほどのクオリティの高さを誇っていたと言えます。ここまで語った上で、今一度言いましょう。独白を主体とした作品として、本当に素晴らしい作品でした。

●テーマ・メッセージについて
Asymptote-line
 日本語に訳すと『漸近線』。平面上において、充分に遠くで曲線との距離が0に近づくものの、決して曲線と交わることの無い線を意味します。
 主人公の心情や従姉との関係性を当て嵌める上で、何とも絶妙にマッチする表現であると感じました。決して交わらない。けれども近づきつつあるのは、エピローグが示唆している。きっと主人公は今後も報われることは無い。それでも────。

おわりに


 『A-line』感想、いかかだったでしょうか。

 このような作品と出逢えるからこそ、同人ゲーム・フリーゲームは辞められないのです。

 次は『そして明日の世界より────』の再開を予定しておりますが、次に上がる感想は別作品かもしれません。

 それでは✋