目次
はじめに
ちゃすちゃす✋
どーも、永澄拓夢です。
てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!
『変態な俺は紳士にならざるを得ない』
同人サークル『3 on 10』さんから2017年にリリースされた作品です。
3on10さんと言えば、読んでいて心地の良い会話劇を主体としたコメディですが、はたして本作でもその持ち味は健在なのでしょうか。タイトル的にはコメディ一辺倒で進行しそうな印象なので、期待しています。
というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!
あらすじ
紳士淑女が大好きな、よくある、定番のお菓子にだって。
お菓子なだけに、おかしなことは、よくあるものだとか。
だけど、おかしなことは、お菓子だけには限らなくって。
俺の妹と、俺の妹の友達とで、俺の日常は変化していく。
代わり映えのないある日、妹のイオリと暮らす俺の元に、
イオリの友達であるイマリという女の子が相談に訪れた。
聞けばイマリは、ストーカーの被害に遭っているらしい。
俺はイマリの護衛を引き受けることになったのだが……。
そう、これは、チョコレートと俺とビスケットとの物語。
チョコレートとビスケットに板挟みの俺はこう思うんだ。
――変態な俺は、紳士にならざるを得ないなあ……って。
引用元
所感
『変態な俺は紳士にならざるを得ない』
— 永澄拓夢(エスタク) (@kingtakumu530) 2023年4月23日
完走
期待以上に面白かった。
読み心地の良い会話劇は安定のクオリティ。それでいて本作ではとある社会問題について考えさせられる要素も盛り込まれていたため、シリアス面でも程よく楽しんで読むことが出来た。
僕はイマリちゃん派です。
~以下ネタバレ有~
総評
●シナリオについて
期待以上に面白かったです。
プレイ開始前はタイトルからしてコメディ一色であろうと踏んでいたのですが、蓋を開けてみればタイムリーな社会問題にも焦点を当てていて、シリアス面も程よく踏襲したバランスの良い作品に仕上がっていました。
しかし、かといってコメディとしての面白さが減衰していたかと問われれば決してそういうワケではなく。軽快で心地の良い会話劇は、本作でも健在であったと言えるでしょう。特に、本作の会話劇では頻繁に『謎掛け』が登場します。謎掛け自体のクオリティについては私にも判断しかねますが、少なくとも会話劇の中での謎掛けは一切邪魔になっておらず、それどころか重要局面においても巧みに扱われていた点はさすがであると感じました。本サークルのライターさんって言葉遊びが好きですよね。『永遠に美しき冬よりも』や『マフラーな彼女』の会話劇においてもそういった遊び心が如実に顕れていました。
本作、設定面に関しても興味深かったです。
少子高齢化や児童虐待等の社会問題を解決するために施行された政策。産まれた子供を国が管理・世話するという内容のソレが浸透した日本社会を描いていたのが本作でした。これって要は、無責任に子供を産んでも良いという土壌を作っている社会ってことなんですよね。おそらく現実ではそう上手くいかない政策だとは思いますが、それでも現実の社会問題も相まって非常に目を引く設定ではあります。また、本作ではそれに付随して、『妹(マイ)ナンバー政策』という設定も盛り込まれています。国の管理する子供は兄妹でワンセットになるというこの政策は、本作の中でもかなり重要な設定となっています。
上述した設定を踏まえて、本作は『兄妹の在り方』を主題として描かれていたように解釈しています。『家族』という枠組みが実質的に崩壊し、血の繋がりよりも社会的に定められた繋がりの方が重視される道徳観念。血の繋がった本来の兄妹による恋愛は赦されても、社会的に定められた血の繋がらない兄妹の恋愛は赦されないという、現実世界とは真逆な倫理観。そのような世界観の中で、主人公と二人の妹(血の繋がった本来の妹と社会的に定められた血の繋がらない妹)との恋愛模様が描かれたのが本作の内容でした。
『妹との恋愛』といえばエロゲの世界に限らずありふれていますよね。本作も例に漏れずそのジャンルに属するでしょう。『血の繋がった本来の妹』と『社会的に定められた血の繋がらない妹』に関しても、言い換えてしまえばただの『実妹』と『義妹』ではあります。こうして見ると、本作もまたよく見る妹モノの一つに過ぎないように見えてしまいます。実際、実妹であろうが義妹であろうが恋愛関係をタブー視される状況からそれを乗り越える展開の作品などごまんと存在しますから。ただ、それでも本作は私の眼には真新しく映りました。そこにはやはり、上述した通り『倫理観・道徳観念の逆転』という要素が起因しているのだろうなと考察しています。表面的に見れば同じな概念であっても、根底にある常識自体が異なる場合はここまで真新しく見えるものなのだなぁと感嘆しました。
正直な話、キャラの立ち居振る舞いやテーマの帰結のさせ方に関してはぼちぼち粗の目立つ作品ではあるのですが、それでも光るモノを感じられる作品だったことに変わりはありません。僥倖僥倖。プレイして良かった。
おわりに
『変態な俺は紳士にならざるを得ない』感想、いかかだったでしょうか。
私も慕ってくれる妹が欲しい人生でした……。ちなみに私は春日井イマリちゃん派です。
次にプレイする作品は、『天使☆騒々 Re-BOOT!』を予定しております。
それでは✋