目次
はじめに
ちゃすちゃす✋
どーも、永澄拓夢です。
てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!
『終末吸血鬼。』
同人サークル『鈴帯スズノ』さんから2022年10月に世に送り出された作品です。
私は本作を同人ゲーム・オブ・ザ・イヤー(通称どげざ)で認知しました。知った当初から「これは自分に刺さる作品だろうなぁ」と思いつつ今の今まで大切に温めてきたのですが、2023年の年末も近づいてきた昨今、ふとぼちぼち着手していこうかと思った次第です。
というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!
あらすじ
永い眠りから目覚めた吸血鬼を待っていたのは、終末の世界だった。
栄耀栄華の失した地平。吸血鬼は血を求め、見知らぬ光景の中を往く。
何処かに人間がいるはずだと、そう信じるがままに。
引用元(フリゲなのでインストールもここから可能)
所感
『終末吸血鬼。』
— 永澄拓夢(エスタク) (@kingtakumu530) 2023年11月12日
完走
とても面白かった。
長い眠りから目覚めた吸血鬼が血を求めて終末世界で人類を探す物語。
シリアスな世界観にコミカルな主人公というギャップが絶妙なハーモニーを生み出していて心地良い面白さに繋がっていた。
それでいて、芯がしっかりした作品としても満足出来る。好き。 https://t.co/T4rl6cdMML
~以下ネタバレ有~
総評
●シナリオについて
とても満足度の高い作品でした。
シリアスな世界観とコミカルな主人公というギャップからここまで違和感なく面白さと心地よさを生み出せている点は、やはりライターさんの手腕の見せ所なのでしょう。最後まで楽しく読むことが出来た上に、完読後は本作の〆に相応しいタイトル画面変化&BGM変化の演出も相まって非常に心地良い余韻に浸ることも出来ました。短編でありながらこんなにも大きな満足感を与えてくれた作品を、私は高く評価せずにいられません。
そして本作、決してただ面白いだけではなく、テーマ的な観点からも満足させてくれる作品でもありました。本作は人類の滅んだ終末世界において『幸福とは何か?』というテーマを追う作品であったと私は解釈していますが、結論としては「幸福は人それぞれ」と明言されているんですよね。一見すると答えをぶん投げているようにも見えますが、本作においてはむしろその玉虫色な答えがマッチしているんですよ。というのも、本作では最終的に人類は滅亡したものと決定付けられた上で、人類を再び生み出すことを拒否する人類再生産システムに「あなたは人を幸せにすることができますか?」というニュアンスの問いを投げ掛けられます。それに対してヴィエリィは、それまでの旅路における出逢いを回想した後、以下のように返答します。
「人間を……幸せにすることは……
……やはり確約は出来ない」
「幸福は他人が決められるものでも、決めつけていいものでもないだろうからな」
「だが……
……幸せに、そう出来るように、する」
「争いが起きれば守る、食糧や水も集めてやろう、寝床や部屋は私だって豪華なのがいいし何とかする」
「奴隷みたいにもしないし、ええと、つまり……」
「……つまりだな……
…………」
「……頑張る!!!!!」
そう、ヴィエリィの口から発されるテーマの結論は、『統治者としての自身から見た人類の幸福』に対する解なんですよ。そしてこの解は、ここに至るまでの過程で出逢った数々の様変わりした人類(ゾンビ化や脳だけの状態)やアンドロイドによるそれぞれの幸福の在り方がしっかり念頭にあるんです。だからこそ、ヴィエリィは「幸福は他人が決められるものでも、決めつけていいものでもないだろうからな」と結論付けているワケですね。そしてその上で、その後のセリフである「……幸せに、そう出来るように、する」から、多種多様な幸福をそのまま矯正することなくサポートするという意志が垣間見えるワケです。故に私は、この玉虫色な結論が、投げやりどころかむしろ本作としての最適解であると解釈しました。
『幸福とはなにか?』をテーマとして掲げる作品はノベルゲームに限らず世の中には溢れていることと思いますが、その多くが何かしら『幸福』というモノにカタチ(或いは指向性)を与えている印象があります。もちろんそのような作品も私は大好きであり、決して否定するワケではありません。ただ、本作のように玉虫色の結論で満足させてくれた作品はあまり出逢ったことがなかったなと思い、その点でも本作を評価したくなった次第です。
ちなみに、上述したヴィエリィの返答自体もけっこうお気に入りです。自分の考え方の成長に言葉が追い付いていない不器用さが滲み出ていてとても好き……。
おわりに
『終末吸血鬼。』感想、いかかだったでしょうか。
ヴィエリィちゃんに付き従いてぇ……。
次にプレイする作品は、『彼女のセイイキ』を予定しております。
それでは✋