目次
はじめに
ちゃすちゃす✋
どーも、永澄拓夢です。
てなわけで、今回の感想対象作品はこちら!
『強盗、娼婦のヒモになる↑↓』
同人ブランド『Loser/s』処女作『強盗、娼婦のヒモになる』(フリーゲーム)におまけシナリオがプラスされた有料版です。
タイトルからして大分個性を感じられる作品。絵柄も好みですし、既にLoser/s作品を全作まとめ買いした程度には期待していたりなんかします。
いったいどんなシナリオを見せてくれるのか……。
というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!
あらすじ
金欲しさに強盗したら、デリヘル嬢のヒモになってしまった。以上。
引用元
所感
突出して面白いかと問われればそうではありませんが、興味深い内容でした。個人的には本編よりむしろ外伝の方が面白かったですね。
同人らしい作品というか。ちゃんとテーマがあって、ライターさんが特定分野に対して博識で、奇抜・斬新な作品って感じです。
心理学とか好きな方ならハマるかも……?
~以下ネタバレ有~
各パート感想
本編分岐はBad endとTrue endのみなので、今回は一括りにして感想を記述します。
本編とおまけシナリオは感想分けますね。
本編
●シナリオについて
秀でて面白いというワケではありませんでしたが、心理学を織り交ぜた興味深い内容ではありました。あのタイトルからこの内容は予想できないと、素直に感嘆しましたね。
タイトルよろしく、デリヘル嬢の家に強盗に入った主人公が、そのデリヘル嬢に気に入られて居候することになるところから物語は始まるワケですが。わりかし初っ端から、『主人公────椎名宗吾が強盗するに至った理由』と『デリヘル嬢────トラ子が身体を売る仕事をしている理由』の二点に不穏感を覚える開幕になりました。
真相はどちらも激重。故にこそ二人は同族であり、惹かれ合うべくして惹かれ合った二人だったというワケなのですよね。大好物な関係性です。
本作本編では最終的に、トラ子とこれからを生きていくため、椎名宗吾が強盗するに至った理由である実家と決着をつける展開になるワケですが……。母親が狂人な上に曲者すぎる。
おまけのQ&Aコーナーにて、最後の母親とのジャンケンは、サブリミナル効果の影響で大半のプレイヤーが負ける選択肢を選んでしまうトリックが施されていたと明かされましたが、驚きましたね。かくいう私も普通に負ける選択肢を選んでしまいました。
『外伝:お母さんの、昔話』
●シナリオについて
面白かった……。
本編ラスボスであった椎名宗吾の母親。人の領域を外れた狂人として描かれた人物。そんな彼女の昔話。彼女が狂人に至るきっかけとなった出会いの物語。補完のシナリオでありながら、本編を喰ってしまうかのようなクオリティで驚きました。
『届かないからこそ憧れる。凡人だからこそ、狂人(異常)に惹かれる』といった感じでしょうか。
ある種、人間の本質の一つを言い表しているとも言えます。本作のクリエイターさんは心理学に精通しているようですし、おそらくはしっかり基づく根拠があるのでしょう。(本編ではシリアルキラーの例が提示されていましたが。)
養老宗吾は人間として欠陥を持つ若葉という女性に惹かれ、追いかけ続ける。そのために、自らも『異常』に近づこうとする。輝こうとする。
母親────椎名空風はその後追いなんですよね。養老宗吾という異常(特殊)に惹かれて、養老宗吾を振り向かせるために自らも『異常』に近づこうとした結果、本編のような狂人になってしまったワケですから。
そして、その母親の『異常』に惹かれた者たちによって、本編期間における一大宗教教団が出来上がった。その様子はさながら『呪い』の連鎖のようで……。どうしようもなく、禁忌的な『人間の本能』を表現した物語だったのだな、と感じました。
しかしまぁ、本エピソードの本質は、『人間の本能』と『異常』を切り離していては語ることが出来ないのかな~というのが私の所感でして。
というのも、彼女は最初から狂人だったワケではないんですよね。たしかに異常に惹かれたことがきっかけではありますが、彼女の根底にあったのは、どこにでもある『恋する乙女の想い』だったワケです。異常に惹かれたことから生まれた『恋心』という『人間の本能』を追い求めた結果、"人間の領域を外れた『狂人』"に成り果てた────つまりは、"『人間の本能』と『異常』は表裏一体"、或いは"『人間の本能』は『異常』を内包している"ということこそが本質なのかなと考察しております。
本編にて、椎名宗吾の運命を決める方法に、養老宗吾が去るか去らないかを決める際に用いたジャンケンを選択したあたりとか、今思い返すと椎名空風の異常の中に人間らしさが垣間見えた瞬間だったのかなぁとか思ったりもします。
でも、人間の本能に従えば、人間の領域を外れるとは……。『人間らしさ』ってモノが、イマイチよくわからなくなりますね……。
『外伝:トラ家、ちょっと未来の話。』
●シナリオについて
質のいいアフターストーリーでした。
特に、手放しで幸福な現在だけを描写するのではなく、先行きのわからない────ましてや人間不信の二人による未来についても、きちんとシリアスに夢想する描写が含まれていた点が評価ポイント。
その他にも、トラ子との微笑ましいイチャイチャを描きつつも、他キャラとの関わり合いや他キャラのその後の描写にも手が回っていた点も評価点です。エロゲあるあるですが、ルートに入ってから途端に他キャラがフェードアウトして扱いも雑になるってあるあるですから、やっぱりこういう『キャラを大切に扱ってくれる』という点が個人的には嬉しかったりするのですよ。
憑き物が取れたかのように『ただの母親』のようになっていた宗吾母────椎名空風には笑いましたが、一つ目の外伝をプレイしていると、笑いと同時に感慨深いモノもこみ上げてきますね。
それはそうと、おそらく次回作の主人公であろう探偵『養老枯草』……。もしかして養老宗吾……? 元から探偵だったのであれば、外伝の母親の過去がまるごと素直に読めなくなるのですが……。
『なぜなにお母さん』
●シナリオについて
現代の記憶を持った20年前の母親────椎名空風が時空を超えて飛び出てジャジャジャジャーン。
外伝時系列(20年前)の母親────椎名空風と息子────椎名宗吾の会話は非常に軽快で、蘊蓄多量でありながらも楽しく読むことが出来ました。てか異常ランクとかいう設定好き。椎名空風でBランクって、それ以上のランクのキャラは他作品に出てくるってことなんですかね。
あ、フォアラ―効果の勉強になりましたね。同人界隈では何らかの学問・知識に秀でたライターさんがしばしば散見されます。
総評
●シナリオについて
全体的に見れば、それなりに面白かったけど可もなく不可もなくといった感じでしょうか。
正直各エピソード単体で見れば、本編よりも外伝の方が面白かったという結果になります。
ただまぁ、外伝によって本編における敵────椎名空風のバックグラウンドが明らかになったことで、椎名空風の深みが増したのも事実なので、上手い具合に相乗効果のあるエピソードを複数ひっさげた『単一作品』だったのかな、と。
テーマ的には、人間の心理的な部分を取り扱っていた点が興味深かったですね。ライターさんが心理学方面の知識を多彩に持っているのでしょう。純粋に勉強になる点も点在しておりました。サブリミナル効果とかフォアラ―効果を交えてくるのは面白いですよねぇ。
次回作もおそらく同じ世界が舞台の物語で、本作に登場したキャラも登場するっぽいので、期待しつつ取り掛かりたいと考えております。
●キャラクターについて
『椎名宗吾』について。主人公。人間不信。巨大宗教教祖の息子。経歴的には特徴的ですが、人間的にはそこまで個性の無い男です。あまり語ることも思い浮かばないですね……。とりあえずいろんな要素からしてトラ子さんとの将来は不安だらけでしょうが、頑張って欲しいです。咲耶ちゃんとの行為シーンを見せろ。
『トラ子こと佐藤八千代』について。基本的には年上よりも年下派────姉より妹派の私ですが、こういうお姉さんは好きですね(まぁ実年齢では私の方がトラ子さんよりも年上ではありますが……)。髪型から性格に至るまで、私の好みです。これで胸が小さければ完璧でしたね……。重い背景を背負っておりますが、これから幸せになってほしいです。
『母親────椎名空風』について。20年前のお転婆な感じの方は好きですね。胸のサイズも好みです。本編プレイ時はただただ倫理のタガが外れた異常者としか見ていなかったのですが、外伝をプレイしてからは印象がガラリと変わりました。一気に深みが増したというか、ある種本作のテーマ(?)の体現というか。養老宗吾とのその後のエピソードとか見てみたいですね。
『椎名咲耶』について。妹その1。明るい方。お兄ちゃん大好き(人為的)な妹。カワイイ。妹キャラならこんなキャラが好みです。18禁でルートください……。この娘だけおそらく母親を嫌悪せずに信じていたのだろうなと。
『椎名知流』について。妹その2。クールな方。『人形としての役割』が明かされた際、忌み子的な感じでネガティブな感情をぶつけられているのではないかとも心配しましたが、あながちそうではなかったぽくて安心しました(畏怖の対象として謝罪はされていたそうですが……)。役割から解放された後は咲耶を尻に敷いているような立場関係が明示され、笑ってしまいましたね。仲良さげでよかった……。
『養老宗吾』について。父親。本作の元凶。ああいう多彩な経歴って、危険は伴いますけど魅力を感じますよね。あぁ……これが異常に惹かれるってヤツなんですかね。とりあえず、若葉という女性とはどうなったのかとか、空風とのアフターとか、色々とコイツ絡みで見たいエピソードもあるんですよねぇ……。
『新藤光』について。ミュージシャン。トラ子や獅童と同じゼミだったとか、序盤で宗吾を試したとか、けっこう頭は良さげですよね。本編では若干便利に使われただけ感のあるキャラではありましたが、掘り下げれば面白いキャラではありそうです。獅童と共に次回作にも出演して欲しいものです。
『獅童宗谷』について。走り続ける者。確固たる『我』を持っている存在ですね。次回作への出演は確定しているとのことなので、そこで真価を発揮してくれることを期待しております。
●テーマ・メッセージについて
■『人間の本能は異常に惹かれる』
本作(或いはLoser/s作品全体)の根底にあるのは間違いなく『異常に魅力を感じる人間の本能』であると感じました。心理学的にもおそらくは根拠があるのかな、と。ただまぁ、主人公サイドに本テーマが色濃く反映されたかと問われればそうでもないんですよねぇ……。
ここ好きポイント
●トラ子さん。鉄壁らしいけど、付き合い始めたら甘々ダメ男製造お姉さんになるの好き。
おわりに
『強盗、娼婦のヒモになる↑↓』感想、いかかだったでしょうか。
次にプレイする作品は、以下のどれかを予定しております。
①Loser/s作品二作目『Sessions!! ―――――真実嫌いの探偵は、』
②活動漫画屋『いえのかぎ』
③羊おじさん倶楽部『魔女魔少魔法魔』
それでは✋