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ノベルゲーム感想と思考出力

『いえのかぎ』感想

目次


はじめに


 ちゃすちゃす✋
 どーも、永澄拓夢です。

 てなわけで、今回の感想対象はこちら!

 『いえのかぎ』
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 『活動漫画屋』という同人ブランドの作品です。イラスト担当者については、コミックLO愛読者でご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。まぁ本作は18禁ではないワケですが。

 ちなみに本作、実は一時期界隈ではチラっと話題になりました。というのも、steamでDL版が配信される予定だったのですが、不当にリリース拒否を受けたという事件があったのです。
 たしかに本作は一見すると女子児童へのうんぬんかんぬんを想起させるかもしれませんが、そもそも本作は非18禁作品ですし、本作に視覚的・聴覚的なお色気描写など一切ありません。そしてなにより、本作のテーマはむしろ子供に対する社会問題に真っ向から立ち向かい、反対するモノです。それらの説明を十分にしておきながら、それでもsteam側からの返答は「この作品が幼児性愛者を対象としていると判断したため」の一点張りだったとか。遺憾というかなんというか……。
 参考元

 とまぁ、少しばかり既に蓋を開けてしまったような気もしますが、気を取り直して。

 というワケで、さぁ蓋を開けますわよ!

あらすじ


 小学校に数千万単位の大金が。
 女子小中学生と大人たちによる
 ウソと秘密と駆け引きで奪い合うサスペンス!
 引用元

所感


 面白かったです。
 メッセージ性の塊のような作品でした。特に社会問題に対する内容ですので、多くの方にプレイして欲しい作品です。
 純粋に『面白い物語』や『社会問題系のテーマ』を求めている方々には刺さる内容ではないかと。
 ちなみにけっこう勉強にもなりました。

~以下ネタバレ有~











総評


●シナリオについて
 面白かったです。
 メッセージ性の強い作品でしたが、かといってそちらにばかり偏るワケでもなく、しっかりと展開も盛り上げてくれました。転々と存在した伏線回収も鮮やかでしたね。

 本作に対しては前情報ほぼ皆無で挑んだのですが、まさかロリコン変態教師(主人公)の女子トイレ盗撮が生徒の一人にバレるところから、8千万円強奪だとかヤクザへの直談判みたいな展開にまで発展するとは思わないじゃん……。良い意味で想像を超えてくれて素晴らしかったです。

 攻防手法・戦法に関しても、斬新な戦法に溢れていて、非常に驚かされました。純粋に勉強になりましたね。「身近にあるあんなものやこんなものでそういうことが出来るんだ」的な。しかも一回や二回じゃない。畳みかけるように魅せられる知識と戦法からは、ライターさんの博識さが垣間見えました。思わず脱帽。
 これら戦法こそがあまりにも具体的だったため、個人的にはむしろ、真似・悪用する人が続出しそうという観点で本作は危険なのではなかろうかとか思ったりしました(➡リリース拒否のお話)。
 第一の爆弾ッ! 檸檬を爆弾に変えたッ! ……うーん、やってみたい。

 基本的には盗撮・盗難ありきというか、騙し合いというか、犯罪 VS 犯罪なんですよね。そうせざるを得ない戦いだったというか、正攻法では攻略できなかったというか。真っ当な証拠をつかんでも、敵が警察とグルだから、警察に任せたらむしろ詰みみたいな圧倒的逆光。本作の展開が映えた要因の一端かと。う~ん好き。ちなみに紀子以外は『薄っぺらい正義感』ではなく『確固たる自身の目的』に突き動かされているのもまた良しです。……まぁ主人公は終盤近くまであくまでも受動的に付き合っていただけでしたが……。

 実際問題、本当に権力者と警察がグルで、一般人の通報が揉み消されるなんてことは得てしてありそうですよね……。

●キャラクターについて
 『黒柳先生』について。主人公────なんですが、正直主人公とは呼びたくないですね。あくまでも『主観者』って感じです。ほとんど梨香におんぶにだっこで、全然活躍してくれませんでした。見せ場といえば、本当にラストの決め手くらいです。まぁいちおう、事件後に成長が見られたので、そういった意味では主人公感はありましたが……。まぁ、今後は良い方向に向かって頑張って欲しいですね。ちなみに彼とは、性癖についてだけは深く語り合えそうです。

 『佐久間梨香』について。実質主人公。親に捨てられ、姉はヤクザに売られたという激重背景を背負う小学生。小奇麗な正義感なんざ捨て置いて、姉を救うためならなんでも使うという姿勢が非常に好み。知識量・思考速度・発想力・行動力・度胸など、小学4年生のものとは到底思えないようなレベルのものを備えているワケなんですが……。むしろこれら全てが"小学4年生のものとは到底思えない"からこそ、相応の覚悟や想いの強さが際立つよなぁとか思ったり。いちおう公式サイトにも『天才少女』と表記されておりますが、私はこの娘の努力を『天才』の一言で片づけたくはありません。

 『獅童』について。小学生ギャル。深堀りはされませんでしたが、この娘もDV被害という背景を背負っているんですよね……。素行は悪いんですが、嗅覚・洞察力は一級品で、頭の回転は速い娘なのでしょう。この娘の問題は解決しませんでしたが、物語外で解決してくれることを祈ります。

 『風見紀子』について。子供らしい正義感を持っている風紀委員長。最も小学生らしいキャラでもあります’(というか梨香と晶が特に小学生離れしているということもあって、尚更相対的にそう感じます)。なんだかんだ一番最後に主人公と梨香が追いつめられた原因はこの娘の独断行動によるものなのですが、何事もなかったかのように振る舞っていて少々困惑しました。小学4年生という時期に『どうしようもない悪』に出会えていたことは、正義感を捨てられないであろう彼女にとっては大きな経験になったかと思われます。

 『橘美沙』について。梨香の姉。ヤクザに売られ、身体を売らされていた存在。知的障害者。本作で最大の被害者でしょうね。最も可哀想なのに、それを自身が最も理解していない。問題無さげに明るく振る舞う。だからこそ、よりいっそう痛々しさや校長への怒りが際立ちます。

 『神宮寺校長』について。本作の敵。巨悪。自己愛の強い権力者で、汚職盛りだくさん。実際問題、本当にこういう人間って現実社会にもいるんでしょうね。ちなみに頭は回るように見えてわりかし抜けているという印象です。いくら自己愛が強いからって過信はよくないよ。

●テーマ・メッセージについて
 ■『子供を取り巻く社会問題の認知』
  本作の内容には、子供を取り巻く様々な社会問題が点在しています。『教師によるトイレ盗撮』、『両親から捨てられた子供』、『親からのDV被害』、『売春斡旋』、etc...。本作中ではこれら社会問題に立ち向かいましたが、物語である以上、全ての問題を解決出来たワケではありません。獅童晶は今後もDV父親に見つからないよう母親と共に隠れ続けますし、佐久間梨香や橘美沙の両親が戻ってくるワケでもない。主人公はもうしないでしょうが、他の場所では盗撮が続けられているでしょうし、件のヤクザは売春商業を休みはすれどやめることはないでしょう。本作の物語では、あくまでも巨悪の一人を打ち砕いたに過ぎない。作中であっても子供を取り巻く社会問題はなくなりはしないんです。現実と同じなんです。
 だからこそおそらく、本作をプレイしたプレイヤーに求められる最も重要なことは、『子供たちを取り巻く社会問題の"認知"』なんです。たとえ警察や政治家の実態が真っ黒でも、世論が動けば社会は嫌でも動くハズです。大事なことは、私たち一人一人が社会問題を"知り"、常に目を光らせ、社会全体でそれらの問題を解決する方針の元に行動することなんだと思います。

 ■『多様性を受け入れよう』
  ラストシーン(主人公の授業)における『変態』の説明から。「少数派を排斥しないことを心がけよう」という解釈をしました。これはおそらく、身体的特徴や性格・考え方に留まらず、家庭問題等"その人の背景"のことも含めて言っているのだろうな、と。
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ここ好きポイント


  ●第一の爆弾ッ!シーン。第二、第三の爆弾のシーンではポーズも決めていたとは晶談。ネカフェでジョ■ョを読んだのでしょうね。
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●主人公による"切り札"。信じられるか……? これ、勝利の決め手なんだぜ……。
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おわりに


 『いえのかぎ』感想、いかかだったでしょうか。

 ホント、むしろ多くの人に手に取って欲しい作品です。どこかでDL版を取り扱ってほしいものですが……。

 さて、次にプレイする作品は、『魔女魔少魔法魔』を予定しております。➡ずっとリリースを待ちわびていた『彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール』がついにリリースされたので、そちらからプレイします。

 それでは✋